ヴェルディッキオ
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ヴェルディッキオ
ブドウ (Vitis)
8月後半に成熟中のヴェルディッキオ(イタリア、マルケ州)
色白
ヨーロッパブドウ
別名ボスケーラ、トレッビアーノ・ディ・ソアーヴェ、トレッビアーノ・ヴェルデ、ペヴェレッラなど(別名節を参照)
原産地 イタリア
主な産地マルケ州ヴェネト州ロンバルディア州ラツィオ州
主なワインヴェルディッキオ・デイ・カステッリ・ディ・イェージ DOC、ヴェルディッキオ・ディ・マテリカ DOCなど(ワイン生産地域節を参照)
病害うどんこ病べと病、サワー・ロット病
VIVC番号12963
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ヴェルディッキオ (: Verdicchio、イタリア語: [ver?dikkjo]) またはヴェルディッキオ・ビアンコ (: Verdicchio bianco) は、主にイタリア中部のマルケ州で栽培されている、ワイン用白ブドウ品種である[1]。 ヴェルディッキオという名称は、緑を意味するヴェルデ (: verde) に由来し、このブドウから作られたワインが帯びる黄緑がかった色合いを指す[2]

ヴェルディッキオは、マチェラータ県およびアンコーナ県で生産される統制原産地呼称 (D.O.C.) 認定ワイン、ヴェルディッキオ・ディ・マテリカ DOCおよびヴェルディッキオ・デイ・カステッリ・ディ・イェージ DOCの主体品種である。非発泡性のスティルワインに加えて、スパークリングワインストローワインにも使用される[3]
起源と歴史

非常に古くからある品種であるものの、古い時代の記録が残っておらず、起源や原産地については詳しいことが分からない。現在のところ、ヴェネトが原産地でありマルケに伝播したとする仮説が有力である[4]。というのも、ヴェネチア商人は様々なブドウ品種(たとえばマルヴァジーア)をイタリア各地に伝えたことで有名であり、ペスト禍によって荒廃したマルケには、15世紀末にヴェネトから農民が移住して家畜や農作物を持ち込んでいるからである[5][4]。さらに、ヴェネト州のヴェルディッキオ(トレッビアーノ・ディ・ソアーヴェ)のほうがマルケ州のものよりも遺伝子の変異性が強く、遺伝的浮動に従えば、このことはマルケよりもヴェネトのほうが伝播元に近いことを示している[6]

ヴェネトおよびマルケでは、さまざまな「トレッビアーノ」種の存在を示す記録が少なくとも13世紀以降(特にヴェネトにおいて)豊富にあり、そのなかの一部はヴェルディッキオにあたる品種だと思われる[4][7]。イタリア中部では少なくとも15世紀には栽培されるようになった[8]。「ヴェルディッキオ」の名称が初めて登場したのは、1569年の文書[注 1]においてであり、1579年にはマテリカの公証人ニッコロ・アットゥッチが地場ブドウとして言及している[9]

ヴェネトでは20世紀に至るまで「トレッビアーノ」に類する名称(トレビアーノ (Trebiano) 、トゥルビアーナ (Turbiana) 、トルビアーナ (Torbiana) など)で呼ばれ続けた[5]一方、ヴェルディッキオは17世紀末にはマルケ以外のイタリア中部でも紹介されるようになり、18世紀末以降、ワイン用白ブドウ品種として広く栽培されるようになった[9]。ラツィオ州ではトレッビアーノ・ヴェルデと呼ばれ、19世紀末のフィロキセラ禍で消滅しかけたが、近年復活した[9]。同様に、トレンティーノ=アルト・アディジェ州に古くからある品種、ペヴェレッラ (Peverella)(ボルツァーノ県ではプフェッファー (Pfeffer) の名で知られる)も、サン・ミケーレ・アッラディージェの研究所や在野のブドウ品種学者の努力によって絶滅を免れた[10]
1906年に農学者ジローラモ・モロンはトレッビアーノ・ディ・ソアーヴェがトレッビアーノ・トスカーノとは別品種であると考え、1970年にイタリア政府は独立した品種として認定・登録した[5]。しかしながらヴェルディッキオと同一品種であると認定されるのは1990年代まで遅れ、その後も同一品種と認定されながらトレッビアーノ・ディ・ソアーヴェとヴェルディッキオが別個に登録された奇妙な状態が続いている[5]

上記のように別名で登録された同一品種が各地に存在することから、ヴェルディッキオの正確な栽培面積を知ることは難しい。2010年に実施されたブドウ樹の統計によると、イタリアにおけるヴェルディッキオの栽培総面積は2,838ヘクタール、内2,300ヘクタールはマルケ州内にあるとされる。これに加えてトレッビアーノ・ディ・ソアーヴェの栽培面積は2,226ヘクタールと記録されている[11][注 2]
クローン・他品種との関係・交配種ヴェルディッキオとトレッビアーノ(写真)は、いくつか共通の別名をもっており、時折両者が混同されることもある。

ヴェルディッキオは、イタリアの広範な地域で栽培され、長い歴史のなかで各地のテロワールに適応し、それぞれ性格の異なるワインを生み出す、さまざまのクローンや生物型(バイオタイプ)を派生させていった。これらは多種多様な別名(下記参照)でも知られている。
クローン

DNA型鑑定が普及する以前の1991年、カロとコスタクルタらのチームはヴェルディッキオとトレッビアーノ・ディ・ソアーヴェが同一品種であるという研究を発表し、2001年に実施されたDNA型鑑定によって彼らの説は裏付けられた[4]

その他の「トレッビアーノ」とヴェルディッキオとの関係については、見解が分かれている。イタリア農業政策省のデータベースやD.O.P.規定では、2008年のギドーニらによるDNA型鑑定の研究結果に基づき、トレッビアーノ・ディ・ルガーナ (Trebbiano di Lugana) はトレッビアーノ・ヴァルテネージ (Trebbiano Valtenesi) と同様、ヴェルディッキオと同一品種であると認定されており、多くの書物もこの見解に従っている[4][9][14]。一方、ヴァンティーニらによって2003年に行われたDNA型鑑定では、遺伝子座VVMD36に異常アレルが認められ、トレッビアーノ・ディ・ルガーナはトレッビアーノ・ディ・ソアーヴェ(およびヴェルディッキオ)とは別の生物型であると結論づけた[5]。ルガーナ(ガルダ湖沿岸)の生産者は、後者の見解に基づいてトレッビアーノ・ディ・ルガーナをトゥルビアーナ (Turbiana) と改称し、全くの別品種として扱う動きを見せている[15]

別のDNA型鑑定では、トレンティーノ=アルト・アディジェ州に古くからある品種、ペヴェレッラ(ボルツァーノ県での現地名はプフェッファー)もまたヴェルディッキオと同一品種であることが判明した[4]。ブラジルにも同名のペヴェレッラというブドウ品種が存在するが、2009年のDNA型鑑定でヴェルディッキオであることが明らかになっている[16]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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