ヴィクター型原子力潜水艦
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ヴィクター型原子力潜水艦

基本情報
艦種攻撃型原子力潜水艦 (SSN)
(潜水巡洋艦→一等大型原子力潜水艦)
運用者 ソビエト連邦海軍
 ロシア海軍
就役期間1967年11月5日-
建造数48隻
前級627型 (ノヴェンバー型)
次級705型 (アルファ型)
945型 (シエラ型)
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ヴィクター型原子力潜水艦(ヴィクターがたげんしりょくせんすいかん 英語: Victor-class submarine)は、ソビエト/ロシア海軍の攻撃型原子力潜水艦の艦級に対して付与されたNATOコードネーム。ソ連海軍での正式名は671型潜水艦(ロシア語: Подводные лодки проекта 671)、計画名は「ヨールシュ」(: ≪Ёрш≫)であった。また発展型の671RT型(計画名:スョームガ、≪Сёмга≫)はヴィクターII型、671RTM型(シチューカ、≪Щука≫)はヴィクターIII型のNATOコードネームを付された[1]。公式の艦種類別は、当初は潜水巡洋艦、1977年以降は一等大型原子力潜水艦(Большая подводная лодка, BPL)となった[2]
来歴

ソ連海軍では、初の原潜としてノヴェンバー型を建造した。まずプロトタイプとして627型が建造され、1957年8月9日に進水した。続いて量産型としての627A型が建造され、1962年12月までに12隻が建造された。同型は、理論上は10万海里以上という長大な航続距離を誇っていたものの、信頼性の低さのために、実際には依然として通常動力型潜水艦が艦隊の主力を担っており、キューバ危機の際にも派遣できず、問題になった。また当時、アメリカ海軍では、静粛性に優れた小型原潜として「タリビー」の建造を進めていたことから、これに対抗して、ソ連海軍も、1950年代末期より対潜攻撃原潜の計画をスタートした[3]

1958年8月28日、ソ連政府は「第2世代原潜」の開発計画をスタートし、同年12月、各種原潜の設計・建造に関する7ヶ年計画(1959年?65年)をまとめた。そして1959年11月3日、同計画に基づき、「魚雷と近代的な水中音響観測システムを備える原潜」として建造が承認されたのが671型である。1960年12月、第143特別設計局は671型の技術設計図を完成し、1961年3月、政府はこれを承認した。これによって建造されたK-38は1967年11月に就役した[2]

一方、当時のアメリカ海軍は、フォレスタル級や「エンタープライズ」といった水中防御に優れた大型空母の整備を進めるとともに、水上艦や原潜も急速に増強されていた。ソ連海軍では、これに対抗するため、1961年11月より対艦・対潜攻撃原潜の設計に着手した。1964年には671RT型と命名され、1967年6月には基本設計が承認され、1971年から1978年までに7隻が建造された[2]

この時期、シクヴァル超高速魚雷、グラナト(SS-N-21)巡航ミサイルといった新兵器の開発が進められていた。この新兵器の運用を前提に開発されたのが671RTM型で、1973年11月に技術設計案が承認され、1976年から1992年までに27隻が建造された[2]
設計.mw-parser-output .tmulti .thumbinner{display:flex;flex-direction:column}.mw-parser-output .tmulti .trow{display:flex;flex-direction:row;clear:left;flex-wrap:wrap;width:100%;box-sizing:border-box}.mw-parser-output .tmulti .tsingle{margin:1px;float:left}.mw-parser-output .tmulti .theader{clear:both;font-weight:bold;text-align:center;align-self:center;background-color:transparent;width:100%}.mw-parser-output .tmulti .thumbcaption{background-color:transparent}.mw-parser-output .tmulti .text-align-left{text-align:left}.mw-parser-output .tmulti .text-align-right{text-align:right}.mw-parser-output .tmulti .text-align-center{text-align:center}@media all and (max-width:720px){.mw-parser-output .tmulti .thumbinner{width:100%!important;box-sizing:border-box;max-width:none!important;align-items:center}.mw-parser-output .tmulti .trow{justify-content:center}.mw-parser-output .tmulti .tsingle{float:none!important;max-width:100%!important;box-sizing:border-box;align-items:center}.mw-parser-output .tmulti .trow>.thumbcaption{text-align:center}}ヴィクターI型 (671型)ヴィクターII型 (671RT型)ヴィクターIII型 (671RTM型)
船体

627型では、アメリカ海軍の「アルバコア」の写真を多少参考にしたとはいえ、基本的には611型(ズールー型)を母体としており、通常動力型の影響を引きずっていた。これに対し、671型では水中航行を最優先に設計された。開発にあたっては、1958年に第34設計局が開発していた667型潜水艦の設計がベースとされており[注 1][4]、船体形状としては前部は回転楕円形、後部は円錐形とすることで、涙滴型に近いシルエットとなった。また水中抵抗の低減を意図して、セイルは船体と一体化した設計とされたが、これはソ連攻撃原潜の特徴となった[2]

本型では1軸推進方式が採用された。これは冗長性の低下を許容してでも水中放射雑音の低減を重視した措置であったが、船体設計上も、主タービンと歯車減速機を同一区画に収められるようになったことから、船体全長を短縮でき、水中抵抗の重要な因子となる表面積も低減され、排水量の増大にもかかわらず627型と同程度となった。アドミラルティ係数(中国語版)は627型の2倍になり、アメリカ海軍のスキップジャック級と同程度となった[2][注 2]

船体構造材にはチタンの採用も検討されたものの、工作技術に不安が残ったことから棄却され、かわって第48中央研究所(後のプロメテイ中央研究所)が開発したAK-29高張力鋼が採用された。これは海上自衛隊のNS80に相当する強度を備えており、潜航深度は400メートルに達した。またアンテナのフェアリングと舵はチタン、セイルはAMg-61アルミニウム合金製となった[2]

船体表面にはゴム製の水中吸音材を張り、セイルやアンテナ・フェアリングには特種な吸音ペイントを塗るなど、静粛性の向上が図られている。これにより、671型の水中放射雑音レベルは627型より5?10デシベル低下し、スキップジャック級と同程度となった。また671RT型や671RTM型では、更に下記のように水中放射雑音の低減策が施されている。1996年にヘブリディーズ諸島付近を哨戒中だった671RTM型の乗員が急病となったことから、付近で対潜戦演習中だったNATO艦艇に救援を要請した際にも、イギリス海軍では救援要請を受けるまで同艦の存在そのものに気付いておらず、大きな衝撃を受けたとされる[2]米ソ潜水艦の水中放射雑音の推移[6]

水中放射雑音[7]設計5?200 Hz1 kHz
671型
(ヴィクターI型)165 dB145 dB
671RT型
(ヴィクターII型)163 dB143 dB
671RTM型
(ヴィクターIII型)152 dB132 dB
671RTM型中期型
(改ヴィクターIII型)132 dB112 dB

機関

原子炉は、初期案では1基とされていたが、最終的に並列2基となり、特別機械設計局のアフリカントフ主任設計官が開発したVM-4P型加圧水型原子炉が採用された。627型で搭載されたVM-A型と比して出力は7パーセント増加し、核燃料の寿命は8年に延伸された。なお上記の通り、本型では1軸推進方式が採用されており、OK-300型タービン1基が搭載された。671型1番艦K-38の海上公試では水中速力34.5ノットをマークしたが、これは当時の潜水艦世界記録であった。8番艦以降では歯車減速機の構造が見直されたことで、発生雑音は半減した。また671RT型では、タービンやターボ発電機などを2段サスペンションのプラットフォーム上に架して、発生雑音を更に低減した。推進器は671型では5翼式だったが、水中放射雑音低減のため、671RTM型では4翼の二重反転プロペラが採用された。また671RTM型では、その他にも各種の騒音低減策が施されている[2]

電源としては、DG-200ディーゼル発電機2基とOK-2型タービン発電機2基を搭載した。電池としては426-II型が112基2群搭載されており、電池1群あたりの出力8,000アンペア時である。


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