ワールド・ソーラー・チャレンジ
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ワールド・ソーラー・チャレンジ3000 kmのコース

ワールド・ソーラー・チャレンジ(英語: World Solar Challenge)とはソーラーカーのレースであり、総延長3021 kmのオーストラリアの砂漠地帯を北のダーウィンからアデレードまで走破するものである[1]

レースの参加者は世界中から集う。最も多いのは大学と企業だが、高校の参加もある。第一回が1987年に開催[1]されて以来、最も歴史のある世界規模のソーラーカーレースとして知られている。以前は企業のワークスチームが優勝していた時期もあるが、近年は企業の支援を受けた大学のチームが優勝する例が多い。

日本のチームは1993年と1996年にホンダが2連覇し、2009年と2011年には東海大学チャレンジセンターのTokai Challengerが優勝して同じく2連覇を達成した[2]

2020年現在、ブリヂストンがスポンサーとなっていて「ブリヂストン・ワールド・ソーラー・チャレンジ(BWSC)」の名前で開催されている。この契約は2030年まで継続される。
対象

太陽光を動力源とする車両によって競技が行われる。2017年大会は、20の国と地域から40チームがエントリーした。
チャレンジのポイント

太陽光による発電電力とモータの消費電力を効率的にバランスさせることは、レースで成功するための鍵である。最適な走行速度は、天気天気予報)とバッテリ残量に常に依存している。伴走車(ソーラーカーでなく通常の乗用車)に乗っているチームメンバーは、無線連絡あるいはテレメトリシステム(遠隔測定法)によって、ソーラーカーからのデータを収集し、複数のコンピューターのプログラムに入力し、走行戦略を最高のものとするために用いている。しかし、「公式オブザーバー」(=チームに派遣され伴走車に同乗する監視員)のために、伴走車の中をコンピューターでいっぱいにせずに、スペースを空けておかなければならない。

日の出から8:00まで、そして17:00からの日暮れまで時間に、できる限りバッテリを充電しておくことも重要である。できるだけ多くの太陽エネルギーを捕えるために、太陽電池パネルは通常、太陽光線に対して垂直になるように向けられる。この目的のために、ソーラーカーのボディは太陽の方へ、しばしば傾けられている。
重要なルール

レースのほとんどは
スチュアート・ハイウェイなどの公道上で行われるので、ソーラーカーは通常の交通ルールを守らなくてはならない。しかしながら、公式レギュレーションには、ドライバーが道路のキャンバーを利用して、最大量の太陽エネルギーを捉えるという特別な記述があった。午後、太陽が西側にあるとき、スチュアート・ハイウェイを南下しているので、道路の右側を走行する方が有利である。もちろん、反対方向を走行する車両が居なければであるが。

最低2人、最大の4人のドライバーを、登録しなければならない。ドライバー(服を含む)の重さが80 kg未満の場合、体重差を無くすためにバラストが加えられる[3]

運転できる時間は、8:00から17:00までとなっている[3]。適当な宿泊場所(ハイウェイの脇に)を選ぶために、最高10分の間、運転時間を延長することが可能である。そのときに発生した余分な運転時間は、翌日の出発時間を遅らせることで調整される。これ以上の運転時間の延長は1分あたり翌日に2分の出発時間の遅延が義務づけられる。

ルートに沿ったいくつかの地点で、すべてのソーラーカーが30分間止まらなければならない「コントロールストップ」が設定されている。ここでは、停車時間の間に、限られたメンテナンス作業(修理ではなくチェック程度)を行うことが許されている。

バッテリ(二次電池)の容量は、最大でおよそ5キロワット時に相当する重量になるよう、電池の種類ごとに定められている(たとえば2017年大会はリチウムイオン二次電池20 kg、リチウムイオンポリマー二次電池20 kg、リン酸鉄リチウムイオン電池40 kg、リチウム硫黄電池15 kg)。レーススタート時の、バッテリはフル充電された状態でよい。故障以外の状況では、バッテリはレースの間に交換してはならない。しかし、もしバッテリを交換した場合、交換した量に応じたペナルティ時間が加算される。

最大外形寸法5 m×2.2 mの大きさ、ボディ最大幅の半分以上のトレッド幅をもつ4輪のホイールレイアウト、ロールバー装着などを定めたレギュレーションがある。

2007年のルール改正

南オーストラリア州の速度制限により、スチュアートハイウェイの最高速度は110 km/hに制限されていたが、2005年にいくつかのチームがこの速度に達したため、安全上の観点からいくつかの改正が行われた。太陽電池パネルの面積が6 m2に制限された。もともとが8 m2程度であったため、25 %の減少。ノーザンテリトリー州でのステュアート・ハイウェイでの速度制限は130 km/hになった。シートベルトの効果を確保する観点からシートアングルが垂直面から27度以下の傾きに抑えられ、寝るようにしていら乗車姿勢は着座姿勢となった。パナソニックは2007年ワールド・ソーラー・チャレンジのスポンサーになった[4]。2007年10月21 - 28日に開催された。
2009年のルール改正

いくつかの新ルールがチャレンジクラスのために付け加えられた。排水のために1.5 mm以上の溝があり、高速道路使用不可(DO NOT HIGHWAY USE)の表記がないタイヤを使用すること。
2011年のルール改正

2009年大会において東海大学ソーラーカーチームのTokai Challengerが、2005年のNuon Solar TeamのNuna 3と同様に南オーストラリア州において110 km/hの速度で巡航したことから、太陽電池出力を落とすことが検討された。その結果、化合物太陽電池の搭載面積は6 m2から3 m2に削減された。一方、シリコン太陽電池は6m2のまま据え置かれたため事実上、化合物太陽電池の使用は困難なものとなった。また、レースの順位争いがわかりやすくなるように、SPOT衛星GPSメッセンジャー端末が導入された。
2013年のルール改正

2013年は4輪が義務化され、1人乗りのチャレンジャークラスと、2人乗りのクルーザークラスが新設され、2007年に新設されたチャレンジクラスのソーラーカーも、旧レギュレーションに適合したアドベンチャークラスに吸収された。また、前方180度の範囲において4 m離れた点で上下0.7 m以上の視界を確保するとともに、コックピット空間の大幅な拡大も要求された。さらに車両の前方に1.5 m×0.3 mの広告スペースの確保が義務づけられるなど、大幅にレギュレーションが変更された。またダーウィン市内では、これまでのスチュアートハイウェイに代えて、交通量や信号が少ないタイガー・ブレナン・ドライブにコースが変更された。
2015年のルール改正

クルーザークラスの配点が所要時間70 % 乗車人数5 % 外部電力量15 % 実用性10 %とよりスピードに重点を置くよう変更された。またチャレンジャークラスでは2013年大会で議論となった停車時の外部コンセントレーターによる充電に対する制限として停車充電時においても車体寸法を全長4.5 m、幅1.8 m、高さ2.2 m以内に制限する事が明記された。また前方視界の規定が緩和されたためコックピットをより後ろ側に配置することができるようになった。
2017年のルール改正

太陽電池の搭載面積がチャレンジャークラスでシリコンセル4 m2、化合物マルチジャンクション2.64 m2、クルーザークラスででシリコンセル5 m2、化合物マルチジャンクション3.3 mに縮小され、車体サイズが5 m x 2.2 m x1.6 mに緩和された。これにともない、チャレンジャークラスの有力チームの中でも細長い単胴型の車体が復活した一方、マルチジャンクションセルの換算係数が変更された結果有力チームの間でも選択肢として復活し、カタマランでも面積の小さいマルチジャンクションセルを使用して車体をかなりコンパクト化して空力性能の向上を狙うチームが現れた。一方のレギュレーションに課題のあったクルーザークラスは今大会からレースではなく規則トライアルとなり、アデレードに6日目の11時から14時の間に到着するように変更された。充電が何度でも可能になり到着時刻がポイントにならない事により勝敗は各チームはなるべく多くの人数をなるべく少ない外部充電量で運ぶ効率点と審査員による実用点により決定される事となった。また今大会からはアドベンチャークラスは競技外となりデモンストレーション走行という位置づけになった。2013年で議論となったような集光器や反射板については今大会でさらに制限が追加され実質的に禁止となり、温度を下げるための太陽電池への散水も出発時に車体に搭載した水のみ使えるよう変更されこちらも実質禁止となった。コントロールストップ時のリコンフィグレーション(発電量を上げるためルーフを太陽に向けて立てる)もドライバー1人のみが行えるよう変更され、コントロールストップの計時中は車体に手を触れてはいけないよう変更された。
歴史.mw-parser-output .tmulti .thumbinner{display:flex;flex-direction:column}.mw-parser-output .tmulti .trow{display:flex;flex-direction:row;clear:left;flex-wrap:wrap;width:100%;box-sizing:border-box}.mw-parser-output .tmulti .tsingle{margin:1px;float:left}.mw-parser-output .tmulti .theader{clear:both;font-weight:bold;text-align:center;align-self:center;background-color:transparent;width:100%}.mw-parser-output .tmulti .thumbcaption{background-color:transparent}.mw-parser-output .tmulti .text-align-left{text-align:left}.mw-parser-output .tmulti .text-align-right{text-align:right}.mw-parser-output .tmulti .text-align-center{text-align:center}@media all and (max-width:720px){.mw-parser-output .tmulti .thumbinner{width:100%!important;box-sizing:border-box;max-width:none!important;align-items:center}.mw-parser-output .tmulti .trow{justify-content:center}.mw-parser-output .tmulti .tsingle{float:none!important;max-width:100%!important;box-sizing:border-box;align-items:center}.mw-parser-output .tmulti .trow>.thumbcaption{text-align:center}}2005年度優勝のオランダのデルフト工科大学のNuna 32009年度の優勝車である東海大学Tokai Challenger2011年ワールド・ソーラー・チャレンジで二連覇を達成した東海大学ソーラーカーチームのTokai Challenger

映像外部リンク
World Solar Challenge 1990 - YouTube
World Solar Challenge 1993 part 1 - YouTube

デンマーク出身の冒険家であり、オーストラリア・エナジープロモーション社長のハンス・ソルストラップによって提案された。彼は最初に全長4.9 mのボートでオーストラリア大陸を一周した。次の段階として省燃料自動車やトラックによる競技に打ち込んだ。既に1980年代、彼は限りある化石燃料の代替として持続可能なエネルギーの探求が必要であるという認識を持っていた。


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