ワルキューレ
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この項目では、北欧神話の登場人物について説明しています。

ドイツ語表記に基づく他のトピックについては「ワルキューレ (曖昧さ回避)」をご覧ください。

英語表記に基づく他のトピックについては「バルキリー」をご覧ください。

『ワルキューレの騎行』(ジョン・チャールズ・ドールマン、1909年)

ワルキューレ(ドイツ語: Walkure)またはヴァルキュリャ(古ノルド語: valkyrja、「戦死者を選ぶもの」の意)は、北欧神話において、戦場で生きる者と死ぬ者を定める女性、およびその軍団のことである[注 1]。戦場で死んだ者の半分をオージンの治める死者の館ヴァルホルに連れて行く役割を担う。ヴァルホルでは、死んだ戦士たちは終末戦争ラグナロクに備える兵士エインヘリャルとなるが、ヴァルキュリャは彼らに蜜酒を与える給仕ともなる。また、ヴァルキュリャは英雄をはじめとする人間たちの恋人としても登場し、そのような場合は王族の娘として描かれることもある。ワタリガラスを伴って描かれたり、また白鳥と結び付けられることもある。

ヴァルキュリャは、13世紀に書かれた『スノッリのエッダ(散文のエッダ)』『古エッダ(詩のエッダ)』『ヘイムスクリングラ』『ニャールのサガ』などに記述が見られる。スカルド詩14世紀呪文ルーン碑文などにも登場する。また考古学的には、ヴァルキュリャを描いたと考えられている魔除けなどが出土している。

北欧神話に登場するノルンディースといった存在は、いずれもヴァルキュリャと同様に運命を司る超自然的存在であり、その関係性についても解釈がなされている。.mw-parser-output .toclimit-2 .toclevel-1 ul,.mw-parser-output .toclimit-3 .toclevel-2 ul,.mw-parser-output .toclimit-4 .toclevel-3 ul,.mw-parser-output .toclimit-5 .toclevel-4 ul,.mw-parser-output .toclimit-6 .toclevel-5 ul,.mw-parser-output .toclimit-7 .toclevel-6 ul{display:none}
語源と別称

古ノルド語のvalkyrjaは、valr(戦場の死体)とkjosa(選ぶ)の2語から構成され、合わせて「戦死者を選ぶもの」を意味する。古英語の同根語にwalcyrgeがあり[1]、文献学者のウラジーミル・オーレルは、これらからゲルマン祖語の語形*wala-kuzj?nを再建した[2]。ただし、古英語の単語が単に古ノルド語からの借用である可能性もある。

古ノルド語の文献でヴァルキュリャを指す他の語として、『オッドルーンの嘆き』にある「願いの乙女(oskmey)」や、『名の諳誦』にある「オージンの乙女(Odins meyjar)」「ヴィズリルの乙女」「死の乙女(valmeyjar)」などがある。「願いの乙女」はおそらく、オージンが持つ多くの異称の一つ「願いを叶えるもの(Oski)」と関連しており、オージンがヴァルホルに死者たちを受け入れるということに言及したものと考えられる[3]
典拠
古エッダ

古エッダ』では、『巫女の予言』『グリームニルの言葉』『ヴォルンドの歌』『フンディング殺しのヘルギの歌 その一』『ヒョルヴァルズの子ヘルギの歌』『フンディング殺しのヘルギの歌 その二』『シグルドリーヴァの言葉』にヴァルキュリャが登場する。
巫女の予言 グリームニルの言葉 ヴァルハラでエールを運ぶヒルド、スルーズ、フロック(ローランス・フレーリク、1895年)

巫女の予言』第30スタンザでは、ヴォルヴァ(北欧における流浪の巫女)が、「英雄たちのもと」に乗り込まんとするヴァルキュリャが遠くから来るのを「見た」とオージンに伝える。続けてヴォルヴァは、6人のヴァルキュリャの名前を述べる。スクルド(「負債」ないし「未来」)、スコグル(「揺らすもの」)、グン(「戦」)、ヒルド(「争い」)、ゴンドゥル(「杖を振るうもの」)、ゲイルスコグル(「槍のスコグル」)である。その後に、今述べたのは「ヘリアンの娘たち、地上に馬をはしらせんとする」ヴァルキュリャたちであると述べる[4]

グリームニルの言葉』では、拷問されたグリームニル(オージンの異相)が、小さなアグナルに向かって、フリスト(「震えるもの」)とミスト(「雲」)というヴァルキュリャが角杯を持ってくるだろうと語り、続いて、エインヘリャルエールを注ぐ役目の11のヴァルキュリャの名前を述べる。スケッギョルド(「斧の時代」)、スコグル、ヒルド、スルーズ(「力」)、フロック(「騒音」ないし「戦闘」)、ヘルフィヨトゥル(「軍勢の縛め」)、ゴッル(「騒音」)、ゲイラホズ(「槍の戦い」)、ランドグリーズ(「楯を壊すもの」)、ラーズグリーズ(「計画を壊すもの」)、レギンレイヴ(「神々の娘」)である[5]
ヴォルンドの歌 羽衣を脱いだ3人のヴァルキュリャ(イェニー・ニュストレム、1893年頃)

ヴォルンドの歌』の導入部の散文は、スラグフィズ、エギルヴォルンドの兄弟がウールヴダリル(狼の谷)と呼ばれる地に建てた家に住まう話を語るものである。ある朝早く、兄弟はウールヴスヤール(狼の湖)の畔で糸を繰る3人の女に出会う。彼らはヴァルキュリャで、「かたわらには白鳥の羽衣がおいてあ」った[6]。うち2人はフロドヴェール王の娘で、名はフラズグズ・スヴァンフヴィート(白鳥の白)とヘルヴォル・アルヴィト(おそらく「全知」の意[7])といった。もう一人は、ヴァランドのキャール王の娘で、名をオルルーン(おそらく「ビール(エール)のルーン」の意[8])といった。エギルがオルルーンを、スラグフィズがフラズグズを、ヴォルンドがヘルヴォルを連れ帰り、7つの冬の間一緒に暮らしたが、女たちはある日戦場へと飛び去って戻ってくることはなかった。エギルは雪靴を履いてオルルーンを探しに行き、スラグフィズもフラズグズを探しに出たが、ヴォルンドはウールヴダリルに留まった[9]
フンディング殺しのヘルギの歌 その一 フンディング殺しのヘルギとシグルーン(ロベルト・エンゲルス、1919年)

『フンディング殺しのヘルギの歌 その一』は、フンディング殺しの英雄ヘルギが、死体の散らばるロガフィヨルの戦場のただ中に座っている場面から始まる。から光が輝き、その光から雷電が走った。空を駆けて兜をつけたヴァルキュリャたちが現れる。腰まである鎖帷子は血にまみれており、その槍はまばゆく輝いていた。

そのとき、ロガフィエルから光がさし、その光の中から閃光がひらめいた。…….mw-parser-output ruby.large{font-size:250%}.mw-parser-output ruby.large>rt,.mw-parser-output ruby.large>rtc{font-size:.3em}.mw-parser-output ruby>rt,.mw-parser-output ruby>rtc{font-feature-settings:"ruby"1}.mw-parser-output ruby.yomigana>rt{font-feature-settings:"ruby"0}大空(ヒミンヴァンガル)を兜も凛々しく……鎧は血しぶきで汚れ、槍先から光がきらめいた。[10]

続くスタンザで、矢が降り注ぐ中、ヘルギはヴァルキュリャたち(彼は「南の女神たち」と呼んだ)に、日が落ちたら兵を引き上げたらどうかと尋ねる。戦が終わると、馬に乗ったシグルーン(「勝利のルーン」の意[11])というヴァルキュリャが、自分は父ホグニに言われて、フニヴルング族のグランマル王の息子ホズブロッドと婚約させられたが、彼にその価値はないと思っていると述べる。


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