ワコビア・コーポレーション
Wachovia Corporation市場情報NYSE: WB
ワコビア(Wachovia Corporation)は、かつてノースカロライナ州シャーロットに本拠を置いていた、米国の大手金融機関である。多様で幅広い金融業務を展開しており、一般的な預金のほか、資産管理、コーポレートバンキング、投資銀行業務などを行った。
リテール分野ではワコビア銀行(Wachovia Bank)として、コネチカット州からフロリダ州、西はテキサス州まで、東部を中心とした15州で活動。西部においても、合併・統合処理中のウェスタン・フィナンシャルバンクをカリフォルニア州にもっていた。また、ワコビア証券(Wachovia Securities)は全米、およびラテンアメリカ6ヶ国において、リテールの証券売買仲介業務を行う。このほか、世界各国に40の支店を構えていた。
2009年より、ワコビアの商標がウェルズ・ファーゴに3年間で順次転換していくことが発表され[1]、2011年10月15日にノースカロライナ州の最後の支店がウェルズ・ファーゴに転換され、消滅した[2]。この衰退期には、メキシコの麻薬カルテルに関係した資金洗浄が摘発されて、2010年3月にワコビアは1.6億ドルの科料を払うことになった(英語版該当節)。 今日のワコビアは、ファーストユニオン社と旧ワコビアの合併により誕生した。両社はこれを対等合併と発表したが、ファーストユニオンの本拠シャーロットが現在も引き継がれていることから分かる通り、実際のところはファーストユニオンによる旧ワコビアの買収だった。 ファーストユニオン(First Union Corporation) ⇒[1]はシャーロットに本拠を置く巨大金融機関であった。2001年に旧ワコビアを買収し、存続会社の商号にはワコビアを残した。 かつてはファーストユニオン・ナショナルバンク・オブ・ノースカロライナと名乗っていた。1958年に金融機関3社(ユニオン・ナショナルバンク、ファースト・ナショナルバンク、トラストカンパニー・オブ・アッシュビル)の合併により設立された。 同行はワコビア買収以前にも80以上の金融機関を買収している。 フィラデルフィアに本拠を置くコアステート・フィナンシャル(CoreStates Financial Corporation) ⇒[2]は、1998年にファーストユニオンに買収された。この買収は、結果として大失敗に終わった。 ファーストユニオンはコアステート買収後、両社のコンピュータシステム統合を迅速に終了させようとした。しかし、旧コアステート社員は新システムに不慣れであったため、旧店舗間の取引ではトラブルが続発。預金振込や貸出しなどに支障を来たし、大量の顧客(当時の全体の2割近く)を失った。 さらにその後、合併にあたって、実際の帳簿価格の4倍もの費用をかけていたことが判明している。 コアステートを含めた相次ぐ金融機関買収、それに伴う失敗が重なり、ファーストユニオンの成長は鈍化。1999年には数千人の行員解雇を迫られた。 ワコビア・バンク・アンド・トラスト(Wachovia Bank and Trust)は1911年、ワコビア・ナショナルバンク(1879年設立)とワコビア・ローン・アンド・トラスト(1893年設立)の合併により誕生した。両社はノースカロライナ州ウィンストンセーラムに本拠を置いていた。 1986年12月12日、旧ワコビアはファースト・アトランタを買収。アトランタ・ナショナルバンクとして1865年9月14日に設立された同行は、アトランタの最古参の銀行であった。これにより、旧ワコビアは米国でも珍しい、本社機能を2都市(ウィンストンセーラムとアトランタ)に置く体制となる。 1998年、旧ワコビアはジェファーソン・ナショナルバンクとセントラル・フィデリティ・バンク(いずれもバージニア州地盤)を買収。 2000年には旧ワコビアとして最後の買収となる、リパブリック・セキュリティ・バンクを手に入れ、フロリダ州の営業網を獲得した。 2001年4月16日、ファーストユニオンが旧ワコビアとの経営統合を発表した。形式としては共同出資による対等合併だったが、前述の通り、事実上ファーストユニオンによる旧ワコビア買収である。この発表は金融関係者に大きな衝撃を与えた。旧ワコビアが2000年に経営危機に陥り、買収対象として見なされ始めた頃、サントラスト ワコビアの前CEOバッド・ベーカーは、ファーストユニオンとの合併を秘密裏に進めるため、ファーストユニオンCEOケン・トンプソンとの交渉をモーテルで行っていた、と後に語っている。 この合併に対しては、各方面から批判の声も上がった。特にアナリストらは、ファーストユニオンによるコアステート買収時の悪夢が繰り返されることを恐れていた。 また、ウィンストンセーラムの市民や政治家からは、地元の有力企業が買収されることによって、雇用面などで市にマイナス影響を及ぼすことを懸念していた。ウィンストンセーラムは、シャーロットに比較し極めて小規模の都市であり、新銀行の本社機能がシャーロットに集中されるのは明らかだった。 結局、ファーストユニオンは、資産管理部門とカロライナ地区の本部をウィンストンセーラムに置くとしたことで、こうした不安を沈めた。 2001年5月14日、アトランタに本拠を置くサントラスト かねてから、サントラストは長年、断続的に旧ワコビアと合併交渉をしていると噂されていた。この「タバコ・コーラ」実現のために、サントラストは、「より円滑な合併手腕」を強調。ファーストユニオンよりさらに高額の株式買取を提示した。 しかし、旧ワコビア経営陣はサントラストからの提案を拒絶。ファーストユニオンとの合併を是が非でも進める決意を改めて示した。 それでもなお、サントラストは買収工作を続け、夏を過ぎてもファーストユニオンとの「冷戦」状態にあった。互いに買収金額を引上げ、新聞広告を打ち出し、株主に書簡を送り、ついに決着は法廷に持ち込まれた。ファーストユニオンはノースカロライナ州議会に対してロビー活動までも行い、サントラスト側に不利になるよう企業統治法を改正するよう求めた。 最終的に同年8月3日、旧ワコビア株主はファーストユニオン案に賛同。株主らは特に、サントラストの提案「ワコビア経営陣の刷新」を快く思わなかったようである。こうして、旧ワコビアを巡るサントラストとの攻防は終結した。 残った課題はクレジットカード部門であった。2001年4月、旧ワコビアはクレジットカード部門を80億ドルで売却することでバンクワン 2001年9月4日、ファーストユニオンと旧ワコビアは正式に合併し、新生ワコビアが誕生した。コアステートの失態を教訓とし、新銀行はシステム統合を慎重に進めた。両行が店舗を持っていた米国南東部から新システムへの切替を開始し、順次北東部へと移って行った。全店舗で作業が完了したのは2003年8月18日で、実に合併から2年間を要したことになる。 また、旧ワコビアとファーストユニオンの合併後、各地に建つ「ファーストユニオン」の名を掲げる高層ビルはすべて「ワコビア」にその名を変えた。シャーロットにある第1?第4ファーストユニオンビルは、第1?第4ワコビアセンターにそれぞれ改名。マイアミのダウンタウンにある55階建て「ファーストユニオンタワー」は「ワコビアタワー」に改名した。 同様に、ファーストユニオン保有の競技施設にも影響が及んだ。ファーストユニオンセンター、ファーストユニオンスペクトル(フィラデルフィア)や、ファーストユニオンアリーナ(ペンシルベニア州ウィルクスバリ)なども、現在ではワコビアセンター コアステート買収と比べれば、ファーストユニオンと旧ワコビアの合併は大成功に終わった。新銀行の着実な戦略によって、かつてのような大規模な顧客離れは起きなかった。それどころか、新ワコビアは誕生以来、各種の顧客満足度調査において毎年第1位を獲得している。加えて、同行株価も力強い上昇を続けており、旧ワコビア以来の株主にも十分な利益還元を実現している。これは、買収工作に力を注いだあまり、現在では株主からの批判に晒されているサントラストと対照的だ。
前身
ファーストユニオン
コアステート買収の失敗
旧ワコビア
ファーストユニオンと旧ワコビアの合併
サントラストとの攻防
その後
その後のワコビア