ワイン醸造
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ワインの原料となる葡萄

ワイン醸造(ワインじょうぞう)では、ワインの製造工程全体について解説する。ワインは醸造だけでなく、それに先立つブドウなどの原料選びから、2度にわたる発酵ワインボトル)詰めるまでを経て完成する。ワインの醸造所をワイナリーと呼ぶ。

ワイン製造の歴史は数千年前にまで遡る。ワイン醸造やワインについての科学は、ワイン学と呼ばれており、また、ワインを造る人は、ワインメーカー(英語版)やヴィントナー(vintner)と呼ばれる。ブドウを栽培する技術・学問を英語でヴィティカルチャー(viticulture)と言い、ブドウの品種は幅広い。

ワインの醸造法は大きく分けて2つあり、通常の製造法(無炭酸)と、スパークリングワイン製造法(英語版)(炭酸が入る種類)がある。赤ワイン白ワイン、そしてロゼワインは他の主要なワインの分類である。ほとんどのワインはブドウから製造されているが、他の植物を材料から造られることもある(フルーツワイン)。他の類似した低アルコール飲料には、蜂蜜を発酵させて造る蜂蜜酒や、の乳を発酵させた馬乳酒等がある。
製造過程圧搾作業によって抽出される成分が示されているブドウの解剖図

最初に、収穫したブドウを、ワイナリーに持ち込み、品質などによって選別したのち、発酵させる。この段階から赤ワインの製造法と白ワインの製造法に分かれる。赤ワインの場合、赤ぶどうか、黒ぶどうのムストから造られ、また発酵はワインに紅い色を付けるブドウの皮の成分と共に行われる。白ワインも同様に、搾ったブドウからジュースを抽出することによって、発酵工程を通して造られるが、その際ブドウの皮は除去される。稀にブドウの皮との接触をできるだけ抑えるという技法で、赤ぶどうを材料として白ワインが製造される場合もある。ロゼワインは、ピンク色を付けるのに十分な長さの分黒っぽいブドウの皮に接触させる、もしくは赤ワインと白ワインを混ぜたりするような特殊な技法を用いることによって、独特のピンク色を出すことができる。白ワインやロゼワインは皮に含まれるタンニンをあまり抽出せずに造られる。

ワインにおいての一次発酵を開始するためには、酵母が加えられるか、酵母が空気中やブドウ内において存在することが鍵となる。白ワインの場合、酵母はジュースに直接加えられる。酵母を加え、発酵を行っていると、やがて二酸化炭素がブドウ果汁のうちの多くの糖分を、アルコールと二酸化炭素に変えるようになる。その後いずれ二酸化炭素は大気中に失われる。

一次発酵が終わった後、フリーラン果汁(ブドウを潰した後、「自然に」滴る果汁)がポンプを使ってタンクに送られ、液中の皮を圧搾して圧搾して残りの果汁とワインを抽出する。その後、製造者の裁量で、プレス果汁(フリーラン果汁とは反対に、残った固形分から人工的に絞り出した果汁)がフリーラン果汁へ混合された後、ワインは暖かい環境に置かれるが、その際ワイン内の糖分は、アルコールと二酸化炭素に変化する。

赤ワインの製造における次の工程がマロラクティック発酵である。これは、液中の「シャキシャキした青りんご」から抽出されたようなリンゴ酸を、乳酸菌の働きにより「なめらかで、やわらかい」乳酸に変換させ、ワインの味をまろやかにする工程である。また赤ワインは時折、数週間または数か月間オークに移して熟成させる場合もある。オーク樽での発酵や熟成はワインに適度な酸素と香りを与えるが、費用が1000ドル程度かかり3?5年で耐用年数が切れるため、コスト抑制や樹木の保護、味わいの多様化といった目的でコンクリート土器陶器にワインを入れる醸造所もある[1]

また、それ以前にワインは、寝かして澄ましたりするなどして調節することも重要である。

ブドウを収穫して調達してから、ボトリングされて飲まれるまでの間には、ボージョレ・ヌーヴォー(英語版)のように数か月しかかからない場合もあれば、高濃度の、タンニンまたは糖分が高いワインのように、20年以上かかる場合もある。しかし、たった1年後よりも5年後に味わいがよくなるものは赤ワインで10%、白ワインで5%ほどしか存在しないという研究結果も存在する[2]。ワイン醸造者が目指しているワインの質などによっては、これらの今述べたような工程を省いたり、組み合わせたりすることもある。また、同等の品質を持ったワインの多くは、ある生産方法に類似こそしているも、明らかに違ったやり方で生産されており、品質は出発材料の属性によって決められるので必ずしも醸造中に取られる措置ではない。その場合、以下のような手順が取られる。

スパークリングワインシャンパンといったものの場合、付加的な「二次的」発酵というものがボトルの中で自然と行なわれ、ワインの中に閉じ込められていた二酸化炭素が融け、独特の泡が発生する。また、甘みの強いスイートワイン(英語版)や半辛口のオフドライワインは、内部の全ての糖分がエタノールに変換される前に発酵を阻止し、残存糖が液中に残るのを許すことによって造られる。これは、ワインを冷却したり、硫黄などの添加剤を加えたりして酵母の活動を抑制させるか、滅菌濾過して液中の酵母やバクテリアを除去するなどして行われる。

甘口ワインは、初期の果実の糖度の凝縮を、ブドウの収穫時期を遅らせたり(後期収穫ワイン(英語版))、またはブドウを凍結させたり(アイスワイン)、さらには果実を灰色かび病の原因となるBotrytis cinereaという菌を使って脱水させてつるや棚、などに寝かせてレーズンのような状態にするよう促したりすることによって(貴腐ワイン)、より濃縮させた上で造られる。他の糖度が大きいワインだと、強めの糖分・エタノールが、酵母活性を遅らせるので、発酵は自然に停止する。

同様に、ポートワインの様な、アルコール度数の強いワインでは、決まった時期に発酵を止め、目標とされる糖分レベルに達した際にアルコール含有量を調整するために、高プルーフの、ブドウを原料とする蒸留酒ブランデー)が別に加えられる場合もある。他の場合では、ワインメーカーは、ブドウ酒とは別に、甘いブドウジュースを用意しておき、発酵が終了したワインに追加する場合もあるのだが、これはドイツ語でズースレゼルヴと呼ばれる技術である。

なおこの作業は、処理や有益な使用を必要とする汚水絞りかす、おりなどが必然的に発生する。

偽物のワインは、ブドウを使用せずに、主に水やエタノール、アミノ酸、砂糖、有機の化合物などで製造される[3]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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