ローレライ_(映画)
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ローレライ
Lorelei: The Witch of the Pacific Ocean
監督
樋口真嗣(本編・特撮)
佛田洋(特撮)
脚本鈴木智
原作福井晴敏終戦のローレライ
製作亀山千広
出演者役所広司
妻夫木聡
柳葉敏郎
香椎由宇
石黒賢
小野武彦
佐藤隆太
ピエール瀧
鶴見辰吾
伊武雅刀
國村隼
橋爪功
上川隆也
堤真一
音楽佐藤直紀
主題歌ヘイリー
「モーツァルトの子守唄」
撮影佐光朗
編集奥田浩史
制作会社東宝映画
シネバザール
製作会社フジテレビジョン
東宝
関西テレビ放送
キングレコード
配給東宝
公開 2005年3月5日
上映時間128分
製作国 日本
言語日本語
英語
製作費12億円
興行収入24億円[1]
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『ローレライ』(Lorelei: The Witch of the Pacific Ocean)は、2005年3月5日公開の日本映画。製作はフジテレビジョン東宝ほか。原作は福井晴敏の小説『終戦のローレライ』。
解説

アニメーションや特撮演出などで評価を得た、樋口真嗣監督による実写長編作品。

舞台は第二次世界大戦末期の日本を背景として、原爆投下を阻止すべく奮闘する潜水艦の乗組員たちを描いた、いわゆる潜水艦映画ではあるが、戦利潜水艦「伊五〇七」や「ローレライ・システム」などの架空兵器の登場、また第三の原爆、日本海軍の内乱など史実とは異なる展開が語られることから、架空戦記またはSFファンタジーとしての要素が強い映画と言える。

特殊能力を持つ少女と、特攻隊員である青年をはじめとする「伊五〇七」の乗組員たちとの交流を縦軸に、日本の将来(言い換えれば現在の日本)の在り方を巡って対立する二人の軍人の姿を、現代に生きる日本人作家の視点と、かつて「伊五〇七」を追跡したアメリカ海軍駆逐艦の元乗組員である老人の視点から描いている。

総製作費12億円。興行収入約24億円、観客動員数190万人、2005年度9位。
ストーリーScale model of I-507.

時は1945年8月。第二次世界大戦敗戦が間近に迫った日本広島市に世界最初の原子爆弾投下された。海軍軍令部の浅倉大佐は第2の原爆投下を阻止するため、閑職に追いやられていた絹見少佐を同盟国ドイツからの譲渡潜水艦伊五〇七」(フランス海軍潜水艦シュルクーフドイツ海軍潜水艦UF-4→伊五〇七)の艦長に任命し、独断でアメリカへの反撃作戦を決行した。

「伊五〇七」にはナチス・ドイツの開発した特殊音響兵装「ローレライ・システム」が搭載されていた。定員に満たない寄せ集めの乗員たちは日本最後の希望として出撃する。だが絹見や先任将校の木崎大尉は、作戦の重要性にもかかわらず潜水艦乗務経験がない乗員が乗り込んでいる明らかに準備が悪い点や、怪しげな技師・高須がローレライの使用権を掌握している点、さらには自分たちにすら知らされていなかった特攻隊員の乗艦や本来潜水艦から発せられるはずのない電信の発信音といった艦内で起こる不可解な事象に疑念を抱く。出港からまもなく伊五〇七はアメリカ海軍の駆逐艦3隻と邂逅。絹見はローレライ起動を即断し、その驚異的な索敵能力で勝利するがあと1歩で撃滅という場面でシステムは突如緊急停止してしまう。戦闘終結後に問い詰められた高須はローレライが民間人の少女・パウラを媒介とする人間兵器であることを白状し、操舵を担当した折笠上等兵をはじめとする乗員に衝撃を与えた。

ナチス・ドイツの科学の結晶とも謳われた高度な音響システムの中枢にあったのは人間の少女であることを知り、艦内は不穏な空気が漂い、パウラの存在は瞬く間に全クルーの知るところとなり、折笠は世話係を命じられる。当初は口さえ聞かないパウラだったが、自分を「魔女」(システムの通称)ではなく人間として見続ける折笠に心を開いていく。また彼女の歌は乗員に癒しと安らぎを与え、次第に艦の仲間として受け入れられるようになった。

しかしそんな時間は長くは続かず、長崎県に第2の原爆が投下されてしまう。その直後に高須をリーダーとするクーデターが勃発。高須の正体は軍属技師ではなく、浅倉より密命を受けた海軍大尉であった。その密命とはローレライをアメリカに供与した上で3発目の原爆を東京に落とさせ、「国家の切腹」と呼ぶ国単位での自決・日本国家の壊滅を目指すものであった。寄せ集めとして艦に乗り込んだ乗員の一部はクーデター要員として浅倉大佐から送り込まれており、その中には絹見が信頼する部下の1人でもある伊五〇七の掌砲長・田口も含まれていた。クーデターは成功するかに見えたが、いつまでもパウラを道具として扱う高須に失望した田口が造反し失敗。さらにパウラの能力によって、原爆を搭載した爆撃機の発進時刻を暴かれた高須はそのまま絶命する。

この時本土と伊五〇七との通信で計画の頓挫を知った浅倉は、東京への原爆投下がクーデターの結果にかかわらず不可避であることを明かす。直後に軍の首脳を集め、彼らにも作戦の全容を公表した後に「これが新生日本の幕開けだ」と叫び拳銃自殺を遂げる。絹見が指揮権を取り戻した伊五〇七はこれから第3の原爆投下を阻止するために独断行動を執ることを告げ、「生きることを諦めるな」と号令を発し、未来の祖国のため下艦を決めた者、祖国の未来を守るため艦に残り作戦決行を決めた者。それぞれが祖国の希望だった。

原爆を積んだ爆撃機B-29が控えるテニアン島の強襲作戦を決行する。圧倒的な戦力を誇るアメリカ太平洋艦隊が伊五〇七の前に立ち憚る。この作戦を決行するにはローラレイが、そしてパウラの力が必要不可欠だと皮肉にも自分が拒んでいた人間兵器の使用をせざるを得ない状況となった絹見に対し、パウラは人の死に干渉する力が強すぎるせいでこのままローレライを酷使することと先制攻撃をしてしまえばパウラは死んでしまうと軍医・時岡大尉は静止するが、乗員たちはパウラの負担を最小限に抑えるための作戦として、破壊力のない魚雷を敵艦の動力源に命中させ、撃沈ではなく航行・戦闘不能に追い込む方法を取った。だが、アメリカ艦隊の圧倒的火力による攻撃で伊五〇七までも航行不能に陥ってしまう。木崎の命を犠牲にした艦内修理により伊五〇七は無事に元の戦闘海域に戻り、原爆投下作戦を決行するB-29が飛び立つ海域に緊急浮上し、艦砲でB-29を撃墜する。原爆は海へと沈み、東京壊滅は回避された。作戦終了と同時にアメリカ艦隊の攻撃が伊五〇七に牙が剥かれる中、伊五〇七は再び海の中へと姿を消していった。

そして、作戦終了時に「生きろ」という最後の命令を下され戦闘海域から離脱した折笠とパウラの乗る潜水艇は、また同じくあの海に響く美しい歌声だけを残して消えていった。

それから時は経ち現代。当時アメリカ海軍側として伊五〇七を相手に戦った年老いたマイナット中尉は若き日本人ジャーナリストに自分の知ることの顛末の全てを話し去っていった。ジャーナリストの左腕には、かつて絹見がパウラに自身の妻の形見と称して渡していた腕時計があった。
キャスト
潜水艦伊507艦長 絹見真一
少佐役所広司
「若手を育てるための人材の浪費」「若者の血を見たくない」という考えから特攻作戦に反対したため、一部からは「腰抜け」と蔑称で呼ばれており、潜水艦乗りにもかかわらずその一件で陸上勤務として閑職に追いやられていた。浅倉によって伊507の艦長に任命され、原爆輸送艦艇の撃沈を命じられ出撃する。亡き妻の形見である腕時計を大事に身に着けているが、本人いわくその理由は軍人でありながら妻を娶り、国を守る以上妻を幸せに出来なかったことへの戒めである。浅倉の反乱に遭遇するも、浅倉の目論む日本の破滅には賛同せず、あくまで日本を救うことを貫く。そして浅倉の自決後に正規の命令のない中で、自らの独断でテニアン島を砲撃し、東京への原爆投下を阻止しようと決める。そして乗員に自らの意思を伝え、下艦を選んだ反乱将兵を除く皆の賛同を得る。その一方パウラについては「ローレライ」が必要だと思い、共に行かせると決め彼女もそれに賛成した。反乱将兵を降ろした後、テニアン島へ向けて針路をとる。パウラの負担を軽くするため艦内の全ての魚雷から信管を取り外し、テニアン沖にて「ローレライ」で攻撃を避けながら敵駆逐艦の舵を狙って魚雷攻撃を行い、艦同士の衝突を引き起こす。これによって魚雷を撃ち尽くすが前方に現れた敵潜水艦隊に対して最後の魚雷であるN式潜航艇の魚雷発射を決定。魚雷が外付けされている関係で信管を外せない魚雷を撃つことに折笠は不安を訴えるも、パウラの意思もあって折笠に魚雷を撃たせ、敵潜水艦を撃沈。伊507が沈んだと敵艦隊に誤認させることに成功する。その後、折笠に自分たち大人が起こした戦争に子供を巻き込んだことを詫びてN式を切り離し、油断する敵艦隊の隙を突いてテニアン沖に艦を浮上させ艦橋に上がり田口に原爆を積んだB-29を砲撃するよう命令。B-29の撃墜を見届けてから帰還の途につくと皆に命じ、敵艦隊から砲撃が起こる中伊五〇七は潜行していった。
N式潜航艇正操舵手 折笠征人上等工作兵:妻夫木聡
長崎県生まれの人間魚雷「回天」特攻隊員。家族を失った悲しみもあって特攻作戦への決意は固いが、高須の指示によりN式潜航艇の操舵手として伊五〇七に乗り込む。そして、清永の好奇心をきっかけにパウラと出会い、彼女と心を通わせるようになる。N式潜航艇から外に出られなかったパウラを無断で出した件で、便所掃除の雑用を命じられるが結果として高須や田口の反乱時に彼らに見つかることなく姿を隠すことに成功する。そして木崎の合図で艦を潜行させ、アメリカへの投降を阻止した。


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