ロービジョン
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ロービジョン(英語: low vision)とは、視機能が弱く、矯正もできないが全盲ではない視覚障害である。従来は弱視、低視力、見えにくい人と呼ばれた。

原因や症状は様々[1]であり、ほぼ全盲から特定の条件下での視力が低下するなど幅がある。また周囲の明るさや疲労により症状が変化することも多い。

社会の福祉制度により日常生活や就労などの場で不自由を強いられることもあり、

日本においては、最も狭義である視覚障害者認定の二級から六級の人数でも19万人[2](視覚障害認定のうち6割以上の人数)、日本眼科医会の発表によれば144万9000人いる[3]と言われているが、一般的な視覚障害者への理解が「視覚障害=全盲」に留まることにより、社会的に充分に「ロービジョン」が理解されにくく、日常生活や就労などの場で不自由を強いられたため「晴眼と全盲の狭間にいる」と形容されることもある。

医学の分野では医学的弱視 (英: amblyopia) と呼ばれる。弱視の項目に詳しい。
概要

日本では「低視力=弱視」と認識されているケースが多かったが(例:小中学校における「弱視学級」)、近年では眼科領域で用いられている弱視との混乱を避けるため、いわゆる社会的弱視、教育的弱視を日本においても「ロービジョン」と呼ぶようになってきた[4]

夜盲症(鳥目)や視野狭窄、中心暗点、羞明複視眼震色覚異常眼瞼下垂、昼盲も、本質的な意味での視覚障害である。ロービジョン者の多くはこのようないずれかの症状を持つ[5]。一人ひとりが感じている「見えにくさ」はそれぞれ全く違うものである。天候や疲労により、同じ人、同じ一日の中でも症状の強さが違う。

充血もなく、目を見開き、眼球を動かせる場合もあり、健常者となんら変わらない外見のため、周囲から障害を理解されにくい。また視覚障害者として内部からも、「見えなさ」と「見えにくさ」の違いへの無理解等や「見えにくさ」に起因する社会的障壁への無理解により、偏見を持たれる事が非常に多い。

具体的に言えば、晴眼者、全盲者の双方から(全盲と比べて)「見えているくせに」、「見えているのだから」と言われる事が多いのである。

医学の発展により、従来は失明に至る事が多かった病気でも、視機能が残存するケースが増えた。つまり、視覚障害全体におけるロービジョンの比率は過去に比べ、上がっている。

近年、日本においては超高齢社会の進行に伴い、老眼に限らない形で高齢からの視覚障害も増えている。同様にその多くはロービジョンである。加齢黄斑変性白内障緑内障がよく知られる。

弱視からロービジョンへの言い替えの起因の一つでもある「ロービジョンケア[6]の考え方は、「メガネをかけても0.1しか見えない」とあきらめるのではなく「メガネをかけて0.1見ることができる方に、ロービジョンエイド(視覚補助具)を使うこと等で、新聞等がより見やすくなる環境を考えること」、または「たとえ矯正視力が1.0あったとしても、夜盲や昼盲、視神経損傷による視野狭窄、眼筋による視機能の低下(複視や眼瞼下垂)などで、仕事や学業、生活に不自由を感じている人の負担を軽減するケア」ともいえる。

2000年4月には日本ロービジョン学会[7]が設立された。毎年1回学術総会が開催され、活発な議論が展開されている。
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この節には独自研究が含まれているおそれがあります。問題箇所を検証出典を追加して、記事の改善にご協力ください。議論はノートを参照してください。(2018年7月)

簡便な定義としては「眼鏡コンタクトレンズなどの視力矯正具を使っても十分に矯正できず、生活に不便を感じる状態」である。

日本の障害者福祉における視覚障害の認定基準には関係者から異論が多く、ロービジョンかどうかの区別には不適切な状態である。ロービジョンを知る関係者は「ロービジョン者は視覚障害の認定から外れた所にもいる」という共通認識である。

眼科医などの専門家の間でも明確な定義はないが、世界保健機関 (WHO) では、矯正眼鏡を装用しても「視力が0.05以上、0.3未満」の状態をロービジョンと定義している。が、またこれに異論を唱える声もある[8]

従来の法的な定義では0.05未満が盲とされているため、WHOの定義により、より多くの人がロービジョンのほうにカテゴライズされることになる。WHOの定義による盲とロービジョンの全世界における人口推定は、盲が700万人に対してロービジョンが6100万人に及ぶ。

上記のように、専門家でも見解が分かれる状態のため[9]、行政に「認定」されるか否かがクオリティ・オブ・ライフ (QOL)に大きく影響する障害当事者個人にとっての大きな問題になっている。そして、明確な「定義」を必要とするビジネスや行政の世界において、ロービジョン者向け対策が後回しにされがちな大きな一因にもなっている。

また、呼び方がここまで本項目で出てきただけでも「ロービジョン」「見えにくい人」「弱視」「低視力」「半盲」とほぼ同じ人、同じ状況を指すにもかかわらず、場面ごと、時代状況ごとに様々であり、それを「盲人→視覚障害者」と同様な理解をしている人数は極端に少ない。このことも、わかりづらさの一因である[10]

障害を持つ当事者やその家族においても、自らが「ロービジョン」または「弱視」であるという自己認識を持ちづらい(芸能人の中にも、実際は「ロービジョン」といって差し支えない状態にいる人がいるのは事実である。典型として戦後直後に人気爆発し爆笑王『笑いの水爆』などあだ名された三遊亭歌笑や近年公表した尾藤イサオ黄斑変性症[11])など)。

問題なのは、社会において『盲』は誰もが考え恐れる立場なのに対して、ロービジョンという状態はこれだけの数がいながら、知名度・理解度が大変に低い点である。周囲からの認知度や理解度が非常に低い事こそが、まさに障害は社会の側にある、とする「社会的モデル」の観点で、ロービジョンを障害たらしめている、ともいえる。
社会生活

日本に限らず、視覚障害者の中では全盲より(社会的)弱視のほうが多い。日本でも(定義づけにもよるが、一番控えめな数字でも)全視覚障害者中、6割強を占める。見えないわけではないが矯正ができないため、日常生活を送る上で支障が多い[12]。しかし、視覚障害者=全盲という古い誤った知識[13]に端を発する関係者の認識不足(障害者福祉における視覚障害の認定基準の幅が狭いことや、担当眼科医や地方自治体の見解の不統一)により、基準に該当しない、つまり身体障害者手帳が交付されないケースも少なくない。生活には視覚補助具として拡大鏡(いわゆるルーペ)や、単眼鏡、拡大読書器などを使用する(拡大)。
読む

中心暗点を持つ場合、偏心視というテクニックで症状を回避する者もいる。また状況により、音声化を利用する人や拡大と音声化を併用する人もいる。
拡大

印刷物の書体に関しては、早くから研究が進み、ゴシック体ハイコントラスト(グレー階調の無いコピーのような表示様式)、さらには白黒反転の視認性の高さによる有効性が、関係者に広く認識され、ユニバーサル志向の場合、「拡大文字版」「大活字版」という形での提供の方法が取られる場合もある(例:国勢調査)。そのうち文字サイズは「22ポイントが(最大公約数的に)読みやすい」とされ、大活字本や、当事者団体の機関誌の印刷版[14]、拡大教科書の文字の基本サイズにも採用されている。近年では、開口部を広げる、濁点・半濁点を大きくするなど、文字を見分けやすくする工夫をしたユニバーサル・デザインフォント(書体)も開発されている。

拡大写本や大活字本は、補助具を使うことなく読めるため、“見えにくさ”を抱える多くの当事者にとって読みづらさを解決する目下最良の手段である。が、現状としてこの分野では、教科書バリアフリー法の成立に見られるように、拡大教科書の関連のみが突出して発展している。公共図書館の視覚障害者向けサービスや、また特に点字図書館は、ほぼ点訳音訳だけの図書構成であり、拡大写本のサービスを手掛ける図書館は極めて少ない[15]大活字本も一般図書扱いとし、主に高齢者向けに選書・配架しているケースが多い(ロービジョン(弱視)者向けに本格的な利用促進をしているケースが少ない)。

電子書籍は、容易に自分にとって最適の字体や拡大が選べ、状況によっては音声読み上げも選べ、自由に読めるであろう事により期待が高まっている。


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