ローハン
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ローハン
作中の描写を元にしたローハンの旗[T 1]
ローハンの国土(赤色、第三紀3019年)
J・R・R・トールキンの伝説体系の舞台
別名騎士国(リダーマーク)、カレナルゾン、マーク
種類ロヒアリムが移り住んだ母国
支配者ローハン国王
主な場所エドラス、馬鍬谷(社岡)、ヘルム峡谷
初登場二つの塔
位置中つ国北西部
建国年第三紀2510年
建国者青年王エオル
首都アルドブルグ → エドラス

ローハン(Rohan)は、J・R・R・トールキンが創作した中つ国を舞台とする伝説体系に登場する、架空の人間の王国。

「馬乗り人」ロヒアリム(ロヒルリム)たちによって知られるローハンは、騎兵によって同盟国ゴンドールを支援する。その国土の大半は草原である。ロヒアリムは自らの国土をマーク(Mark)、あるいは騎士国(リダーマーク、Riddermark)と呼ぶとされるが、この名はトールキンが住んでいたイングランド西部に存在した歴史上の王国マーシアを想起させる。

トールキンはローハンを描写するにあたり、馬の利用を除くあらゆる点において、アングロ・サクソン人の伝統、詩歌、言語(特にマーシア方言)を要素として参考にした。トールキンはローハンの言語と名前に古英語を用い、ローハン語の翻訳であると称した。いっぽうでセオデン王の王宮メドゥセルドは、ベーオウルフ叙事詩の王宮ヘオロットを原型としている。

指輪物語』の作中におけるローハンは、角笛城の合戦における魔法使いサルマンとの戦い、そしてクライマックスとなるペレンノール野の合戦というように、戦闘面で中心的な役割を果たす。セオデン王はロヒアリムを率いてモルドールの軍勢を打ち破り、彼の愛馬が斃れたときに死ぬが、その姪エオウィン姫が指輪の幽鬼の指揮官たるアングマールの魔王を滅ぼすことになる。
作中において
語源マルグリット・ド・ロアン(1330-1406)と夫のクリソン城守を描いたステンドグラス。トールキンが表明するところでは、作中のローハン(Rohan)と、このブルターニュの貴族ロアン(Rohan)家との間に関連はない。

送られなかった手紙にあるトールキン自身の説明によれば、創作内と現実との双方における「ローハン」の語源は以下の通りである。 .mw-parser-output .templatequote{overflow:hidden;margin:1em 0;padding:0 40px}.mw-parser-output .templatequote .templatequotecite{line-height:1.5em;text-align:left;padding-left:1.6em;margin-top:0}「Rohan」は、「Rochand」が後代に有気音化したものだと述べられている(III 391, 394)。これはエルフ語で「乗馬用の駿馬 swift horse for riding」を意味する「*rokk?」(クウェンヤ:rocco、シンダリン:roch)に、土地の名前にしばしば使われる接尾辞(べレリアンド Beleriand、オッシリアンド Ossiriandなどが好例)を加えたものである。……
「Rohan」といえばブルターニュのよく知られた名前で、古く誇りある強力な一族ロアン家(House of Rohan)より出たものである。私はそれを知っていたし、その形を好んでもいたが、エルフ語関連の単語を(ずっと前に)考案してもおり、馬乗りたちに占有されてからのマーク(以前は「大きな緑の地域」を意味する「カレナルゾン」と呼ばれた)に対する後代のシンダリンの名前として、「Rohan」が言語的状況において適切なものになり得るように見えたのである。ブルターニュの歴史は、エオルの家の子にいかなる光も投げかけはしないであろうが。……—J・R・R・トールキン、Letter 297[T 2]
地理

ローハンは、トールキンの中つ国にある内陸の王国である。その田園は牧草地帯と丈高い草原からなる、風に吹きさらされる地である。牧草地は「沢山の隠れた水たまりや、一面に菅が波打っている危険な湿地帯[T 3]」を含む。カレン・ウィン・フォンスタッドが計算するところによれば、ローハンは52,763平方マイル(136,656平方キロメートル)の国土を有し、これはイングランドよりわずかに大きい[1]第三紀におけるローハン、ゴンドールモルドールの簡易な地図。
国境

ローハンの北方の境界は、エント[注釈 1]木の鬚の国であるファンゴルンの森およびロヒアリムが「長き川」と呼ぶ大河アンドゥインであり、北東方ではエミン・ムイルの壁(崖)であった。指輪戦争の後、国土は白光川を北に越え、ロスローリエンの国境まで拡大した[T 4][T 3]。東方ではエント川の三角州と、ロヒアリムにはスンレンディングとして知られるゴンドール領アノリアン(アノーリエン)との境界メリング川が国境である。南方の境は白の山脈(エレド・ニムライス)が横たわる。西方の境はアドーン(アドルン)川とアイゼン川であり、ローハンと褐色人の国との国境を成す。北西方はちょうど霧ふり山脈の最南端にあたり、指輪戦争時には堕ちた魔法使いサルマンが拠った古代のオルサンクの塔を囲むアイゼンガルドの城壁が位置する。霧ふり山脈と白の山脈が近づく西方国境地域は、ローハン谷としても知られている[T 4]
王都

ローハンの王都は、白の山脈の谷間の丘を占める城塞都市エドラスである[T 5]。「エドラス」の名は古英語で「囲い地(enclosures)」を意味する[3]。エドラスの町は青年王エオルの息子であるローハンの第2代国王ブレゴが建設した。エドラスのある丘は馬鍬谷(社谷)の谷間の入り口に造られた。町の手前には雪白川が流れ、東方のエント川へと連なる。町は木製の高い壁によって守られていた。ノルウェーのBorgにあるミードホール。

ローハン王の住まう黄金館メドゥセルドは、丘の頂上、町の中心に位置する[T 5]。「メドゥセルド(Meduseld)」は古英語で「ミードホール(mead hall)」を意味し[3]、同じ意味の不明なローハン語の単語の翻訳である。メドゥセルドは、ベーオウルフ叙事詩に登場するミードホール、すなわち遠くからは金色に見える茅葺きの大きな城館ヘオロットをベースとしている。その壁はロヒアリムの歴史と伝説を描いたタペストリーで華やかに飾られ、とその親族の家として、王と相談役たちの会議場として、あるいは式典や祝祭の際の集会場として用いられている。ガンダルフアラゴルンギムリレゴラスの4人は、このメドゥセルドでセオデン王と対面する。レゴラスはメドゥセルドを、ベーオウルフ叙事詩の一節「lixte se leoma ofer landa fela.[4]」を直接翻訳した「The light of it shines far over the land(その光は一帯に輝き渡っていますよ[T 6])」という言葉で表現している。館の描写には、1889年のウィリアム・モリスの著作「The House of the Wolfings」に由来する、煙出しを持つという時代錯誤的な表現がある。[5][6]
他の居住地

エドラスから雪白川を馬鍬谷(やしろ谷)の奥へと遡ると、川上、下馬鍬(やしろ下)といった村落がある。白の山脈にある馬鍬砦(やしろ岡。英語ではDunharrow。古英語で「丘の上の異教の神殿」を意味するDunhaergに由来する)の頂上、フィリエンフェルドは避難所となっている[T 7]。また、アルドブルグは東谷(イーストフォルド)の首府で、青年王エオルが始めに居住地を置いた土地である。西部地域を守る主要な城塞である角笛城は、白の山脈の谷間であるヘルム峡谷に位置する。[T 8]
地域

マークとも呼ばれるローハンの王国は、東マークと西マークの2つの地域に分かれる。両地域は、それぞれ軍団長の指揮下にあった。ローハンの王都エドラスは、王国の中央南方、小さくも人口の多い地域である谷地(フォルデ)に位置する[T 3]。初期の構想では、ローハンの主要地域は「王の土地」と呼ばれており、谷地はエドラスの南東にある小地域であった[T 9]。谷地の北では、雪白川とエント川に沿って東マークと西マークの境界が引かれている。


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