ロータリーエンジン
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この項目では、ヴァンケルエンジンについて説明しています。その他の設計については「ピストンレス・ロータリーエンジン」を、クランクシャフトの周りをシリンダーが回転する航空機レシプロエンジンの一種については「ロータリーエンジン (星型エンジン)」をご覧ください。
ロータリーエンジンのローター
マツダミュージアム、2005年2月撮影)マツダスピード製レース用3ローターエンジン

ロータリーエンジン(英語: rotary engine)は、一般的なレシプロエンジンの様な往復動機構による容積変化ではなく、回転動機構による容積変化を利用して、熱エネルギーを回転動力に変換して出力する原動機である。

ドイツの技術者フェリクス・ヴァンケルの発明による、三角形の回転子(ローター)を用いるオットーサイクルエンジンが実用化されている。ヴァンケル型ロータリーエンジンとレシプロエンジンとでは構造は大きく異なるが、熱機関としては同等に機能する。本項ではこのヴァンケルエンジン(Wankel engine)について述べる。
概要

ロータリーエンジンの研究は原理的には古くから行われてきたが、その中で唯一実用化された所謂ヴァンケルエンジンは、1957年西ドイツ(当時)のNSU社とWankel社が共同研究により開発に成功した[1]

レシプロエンジンとは基本的に大きく異なる構造を持っており、エンジン本体にピストンのような往復運動部はなく、回転運動するローター[注釈 1]により回転動力を得ている。またロータリーエンジンの吸気および排気のポートは、ハウジングの内側面に設けられた孔がローター自体により開閉されるため、一般的な4ストロークレシプロエンジンのような、往復動する吸排気バルブやこれを開閉するカムシャフトなどの動弁系は必要ない。

4ストロークレシプロエンジンと同様にオットーサイクルやディーゼルサイクルでの熱力学的動作が可能だが、実用化されたのはオットーサイクルのガソリン燃料火花点火機関であり、ガソリンに代えて水素燃料を使える物も試作されている。なお、ガスタービンエンジンも本項のロータリーエンジンと同様に回転運動により出力を得ているが、これは速度型の内燃機関であり、容積型内燃機関であるロータリーエンジンとは別に分類される[1]

ロータリーエンジンとして上記の「ヴァンケルエンジン」のみを指す場合も多く、また「回転ピストン型エンジン」、時には「ピストンレスエンジン」と呼ばれることもある。自動車用としては、日本ではヴァンケルエンジンを指して「ロータリーエンジン」(「RE」と略記される)と呼ぶことが一般的であるが、日本以外では「Rotary engine」とも、あるいはより限定的に「Wankel engine」とも呼ばれる。航空機用として「ロータリーエンジン」と呼ぶときは、星型エンジン本体(シリンダー側)がプロペラとともに回転し、クランクシャフトは固定されている構造の回転式レシプロエンジンを意味する場合と、本項のヴァンケルエンジンを意味する場合とがある。詳細は「ロータリーエンジン (星型エンジン)」を参照
レシプロエンジンとの排気量換算

ロータリーエンジンの出力軸回転数とは、ローターではなくエキセントリックシャフト[注釈 2]の回転数であり、これが4ストロークレシプロエンジンのクランクシャフト回転数に相当する。ロータリーエンジンは、1ローターあたりエンジン回転1回転に1回単室容積分の空気を吸入するため、1気筒あたりエンジン2回転に1回単気筒容積分の空気を吸入する4ストロークレシプロエンジンの2倍の吸気回数を持つ(詳しくは下記「動作」を参照)。すなわち、ロータリーエンジンの実質吸気量は「単室容積xローター数x2」となる。このため、内燃機関工学分野においては2ストロークレシプロエンジン同様に、当初から現在まで一貫して換算係数2が用いられている。

日本の自動車税課税時の排気量区分では、「単室容積×ローター数×係数1.5」として換算される[2][注釈 3]。これはロータリーエンジンの出力が「単室容積xローター数x1.5」程度の換算吸気量のレシプロエンジンと同等だったためである。

モータースポーツ分野においては、ロータリーエンジンデビュー期には工学的にロータリーエンジンの排気量に係数「2」を掛け、その値をレシプロエンジンの排気量区分に当てはめていた。しかし、レシプロエンジンの約2倍の空気(と燃料)を吸入しながら出力は1.5倍程度しか得られないため「燃料消費率が3割悪い」という性質を持ち、特にモータースポーツにおいては出力差だけでなく燃料タンク容量や燃料消費に伴う車重変化まで考慮するとレシプロエンジンとの平等な排気量換算は極めて困難である。そのため競技の種類(例えばスプリントレースか耐久レースか、など)によって異なる換算係数[注釈 4]が用いられたり、またF1などのようにロータリーエンジンの使用を認めない競技もある。
構造マツダ13B型ロータリーエンジン
サイドハウジングは取り外され、まゆ形のローターハウジング、三角形のローター、その中に通されたエキセントリックシャフトなどが見える
構成

ロータリーエンジン本体の構成部品の概略を下記に示す[3]。燃料供給系・吸排気系・潤滑系・冷却系・電気系などは、一部構造は異なりながらもレシプロエンジンと同様に別途設けられるが、上述のとおりローター自体が弁機能を呈するので動弁系は不要である。なお相当部品名は、レシプロエンジンに対するものである。
ローター
ピストンコネクティングロッドに相当するもので、ローターハウジングのトロコイド曲線に内接する3葉の内包絡線で構成された、三角形(ルーローの三角形)をしたもの。中心にはローターベアリングを介してエキセントリックシャフトがはめられる丸い穴部があり、その縁にはサイドハウジングのギヤ部とかみ合う内歯の歯型(インターナルギヤ)が設けられている。自動車ファンの間では「おにぎり」と称される事もある。
シール
ピストンリングに相当し、ローターに取り付けられている。ピストンリングは通常2-3本で円筒面に対し気密を保つが、ロータリーエンジンのシール類は数も多く、平面に対して長い範囲で気密を保ちながら摺動しなければならない。
アペックスシール
ローターの各頂点に取り付けられ、隣接する作動室との気密を保つ。ペリフェラルポートの場合は、吸排気バルブにも相当する。
サイドシール
ローターの側面とサイドハウジングとの間の気密を保つ。
コーナーシール
アペックスシールとサイドシールとのつなぎ目で気密を保つ。
オイルシール
ピストンリングの内のオイルリングに相当し、作動室への潤滑油の余分な流入を防ぐ。
エキセントリックシャフト
クランクシャフトに相当するもので、それと同様にエンジンからの出力軸となる。ローターの取り付く位置のみ芯がずれて太くなっている偏心軸である。右下の動作図ではローター中央の白い部分がこの偏心部で、サイドハウジングに通される回転軸は図中のBの位置となる。
ハウジング
シリンダーシリンダーヘッドに相当し、点火プラグの取り付け部や吸排気ポートが設けられている。
ローターハウジング
内側面が2ノードのペリトロコイド曲線というまゆ型であり、この内部でローターやエキセントリックシャフトの偏心部が回転する。ローターおよびサイドハウジングとともに燃焼室を構成する。吸排気ポート側と向かい合うくびれ部分(右下図では右側中央)に点火プラグが取り付けられるが、縦長の燃焼室となるために多くはツインプラグとされ、市販以外では3プラグの採用例もある。
サイドハウジング
ローターハウジングの側面(右下図の手前および奥の面)をふさぐものである。エキセントリックシャフトの回転軸が通る部分があり、ローターに接する面のその部分の周囲には、外歯のステーショナリギヤ(右下図の茶色のもの)が突起状に固定され、これがローターの内歯とかみ合う。ローターのギヤとステーショナリギヤとの歯数比は3:2である。ロータリーエンジンの動作
吸気→圧縮→膨張→排気のオットーサイクルが3組同時進行している
(吸排気共にペリフェラルポートの例)
動作

エキセントリックシャフトの偏心部がローターの穴に通されていて、エキセントリックシャフトの回転によりその軸心のまわりをローターが公転するが、この両者間では自由に回転できるようになっている。ローターが自転1回転の間に3回公転、すなわちエキセントリックシャフトが3回転するように、サイドハウジングのステーショナリーギヤとローターのインターナルギヤとのかみ合いによって制御されている。なお、エキセントリックシャフトの偏心量やローターの中心からアペックスまでの距離は、上記の動作時にローターの各頂点がローターハウジングのトロコイド面をなぞるように設定されている。

ローターとローターハウジングの間の作動室容積は、ローターの1回の自転の間に拡大と縮小を2回ずつ生じるが、この間に4ストロークエンジンがクランクシャフト2回転で行うのと同様の工程(オットーサイクル)を1サイクル実行する。このサイクルがローターの3辺の上で位相をずらしてそれぞれ進行しているので、ローターの自転1回、すなわち公転3回の間に3回の燃焼・膨張行程がある。ローターの自転運動ではなく公転運動がエキセントリックシャフトを回転させて出力となる。

4ストロークレシプロエンジンと比較すると[4]

1回の燃焼・膨張行程に要する出力軸の回転数は、ロータリーエンジンでは1ローターあたり1回転であり、対して4ストロークレシプロエンジンでは1気筒あたり2回転である。

1つのオットーサイクルに要する出力軸の回転数は、ロータリーエンジンでは3回転(1080°)であり、対して4ストロークレシプロエンジンでは2回転(720°)である。

ロータリーエンジンの「吸気」「圧縮」「膨張」「排気」の各行程は270°(1080÷4=270)あり、対して4ストロークレシプロエンジンでは180°(720÷4=180)である。

吸排気ポート

ハウジングに設けられる吸排気ポートは、その位置・形状により以下のように分類される。
基本となるポート

サイドポート
サイドハウジングに設置されたポート。ローターが回転しガスを吸排気する方向とポート口の方向が90度曲がっているため、抵抗が増えて効率に難があり、また排気ポートに採用した場合は、曲がり角となる排気ポート周辺に熱だまりが起こり
すすも発生しやすい。その一方でポート位置・形状の自由度は高く、オーバーラップ(ひとつの作動室に吸気・排気の両ポートが同時に開いている時間)を小さく抑えることが可能なため、低回転での安定回転やトルクを確保しやすい。ただし外周寄りの位置でローター回転方向にポートを拡大(レシプロエンジンでのバルブカム作用角の拡大に相当)した場合には、ローターの頂点がポート上を通過するようになって隣接する作動室同士がつながってしまうこともある。吸気ポートとしては、マツダの大多数の市販車用エンジンに採用されている。「RENESIS」13B-MSPエンジンでは排気もサイドポートとして、ゼロオーバーラップを実現している。
ペリフェラルポート
ローターハウジングのトロコイド面に設置されたポート(右上図の通りの位置)。高回転での吸排気効率に優れた形式であるが、ローターの頂点がポートを通過するときに隣接する作動室とつながり、また吸排気ポートのオーバーラップを小さくできず、吸排気間の吹き抜けを起こしやすい。結果として排出ガス値や燃費の悪化を招く。上記13B-MSPを除くほとんどのエンジンで排気ポートに採用され、吸気ポートでは主に競技用エンジンに採用されるほか、NSUのエンジンなどにも採用例があった。
応用的なポート

クロスポート/コンビネーションポート
低回転用のプライマリー(サイドポート)と高回転用のセカンダリー(ペリフェラルポートの場合もある)の2つの吸気ポートを組み合わせたもの。高回転時に吸気系内の制御でセカンダリーポートを機能させることで、ポートタイミングの最適化とともにポート面積が拡大される。
ブリッジポート
吸気サイドポートの一種であり、競技用エンジンやチューニングなどで出力向上のためにサイドポートをハウジング外側へ拡大(レシプロエンジンでのバルブ径やバルブリフトの増加に相当)した場合に、アペックスシールやサイドシールの破損や脱落を防ぐ目的でシールの通過位置のみにサイドハウジング内壁を残したものである。残された内壁部分がポートにかかる橋のように見えるので、ブリッジポートと呼ばれる。
オギジュアリーポート
Auxiliary port、すなわち補助ポート。13B-MSP(6PI仕様)が採用した3番目の吸気サイドポートや、上記ブリッジポートで分割されたポートの一方などの呼称で、主に高回転域での吸気量増大に寄与し、さらなる出力向上を目的として追加されたポートである。ブリッジポートの一方をローターハウジングのトロコイド面にまで広げ、なかばペリフェラルポートとした競技用エンジンも存在し、このようなポートをオギジュアリーポートとしている場合もある。
長所・短所.mw-parser-output .ambox{border:1px solid #a2a9b1;border-left:10px solid #36c;background-color:#fbfbfb;box-sizing:border-box}.mw-parser-output .ambox+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+link+.ambox{margin-top:-1px}html body.mediawiki .mw-parser-output .ambox.mbox-small-left{margin:4px 1em 4px 0;overflow:hidden;width:238px;border-collapse:collapse;font-size:88%;line-height:1.25em}.mw-parser-output .ambox-speedy{border-left:10px solid #b32424;background-color:#fee7e6}.mw-parser-output .ambox-delete{border-left:10px solid #b32424}.mw-parser-output .ambox-content{border-left:10px solid #f28500}.mw-parser-output .ambox-style{border-left:10px solid #fc3}.mw-parser-output .ambox-move{border-left:10px solid #9932cc}.mw-parser-output .ambox-protection{border-left:10px solid #a2a9b1}.mw-parser-output .ambox .mbox-text{border:none;padding:0.25em 0.5em;width:100%;font-size:90%}.mw-parser-output .ambox .mbox-image{border:none;padding:2px 0 2px 0.5em;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-imageright{border:none;padding:2px 0.5em 2px 0;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-empty-cell{border:none;padding:0;width:1px}.mw-parser-output .ambox .mbox-image-div{width:52px}html.client-js body.skin-minerva .mw-parser-output .mbox-text-span{margin-left:23px!important}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .ambox{margin:0 10%}}

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出典検索?: "ロータリーエンジン" ? ニュース ・ 書籍 ・ スカラー ・ CiNii ・ J-STAGE ・ NDL ・ dlib.jp ・ ジャパンサーチ ・ TWL(2021年10月)

4ストロークレシプロエンジンとの比較で、以下のような長所・短所がある。
長所

同程度の出力で比較すると、冷却装備を考慮しても軽量且つコンパクトである。エンジン搭載位置の自由度が高くなり、
ミッドシップレイアウトに頼らずとも均等な前後重量配分で低慣性モーメントのスポーツカーを、軽量・コンパクトに仕上げることが可能である。また、搭載自由度の高さは電気自動車レンジエクステンダーなどにも向く。

出力軸1回転あたりの燃焼回数が2倍となるため、同じ総排気量でも出力が高い。

ローターの公転運動をともなってはいるが偏心量は小さく、低振動・低騒音(機械騒音)である。

エンジンの回転が滑らかである。各行程が270°(4ストロークレシプロエンジンの1.5倍)と長いので、複数ローター間の膨張行程の重なりが4ストロークレシプロエンジンより多く、ロータリーエンジンのトルク変動(筒内圧によるトルクの波)は4ストロークレシプロエンジンより小さくなる。


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