この項目では、グレーター・ロンドン全域を管轄する警察組織について説明しています。その内部のシティ・オブ・ロンドンのみを管轄する警察組織については「ロンドン市警察」をご覧ください。
大ロンドンの行政機関ロンドン警視庁
Metropolitan Police Service
ニュー・スコットランドヤード本部
役職
警視総監マーク・ロウリー
ロンドン警視庁(ロンドンけいしちょう、英語: Metropolitan Police Service, MPS)は、イギリスの警察組織の一つ。首都ロンドン一円(中心部のシティを除くグレーター・ロンドン全域)を管轄する首都警察であると同時に[2]、国家全体の警備公安警察や王族・政府要人警護といった特別な任務も担っている[3]。初代本部庁舎の一般入口がウェストミンスター区のグレート・スコットランドヤードという通りに面していたことから、スコットランドヤードの通称で知られる[注釈 1]。1890年に初めて移転して以来、2代目以降の庁舎は「ニュー・スコットランドヤード」と呼ばれる。 2017年6月末現在、32,493人の正規警察官、9,816人の事務職員を含む、計43,571人の常勤職員を擁している。なお、この数字には1,262人の特別巡査(正規警察官と同等の権限を有するが、パートタイム勤務である警察官)は含まれない[4]。これらの人員規模から、ロンドン警視庁はイギリス国内で最大規模の警察組織であり、世界最大の警察組織の一つでもある[5]。 イギリスでは、古来より地域の秩序・平和を維持する責任は地域住民各々が負うべきであるという自治の意識が強く、組織的な警察機構には反発が強かった[6]。しかし18世紀以降の工業化に伴う都市化に伴い、従来のコミュニティに依拠した警察機構では、複雑化する犯罪への対処が難しくなっており、大都市ロンドンではその傾向が特に顕著であった。このことから、ロンドンのボウ・ストリート
概説
来歴「イギリスの警察#来歴」も参照
しかし19世紀に入ると、英仏戦争終了に伴う戦後の停滞や労働紛争の激化を受けて、急進派戦争 (Radical War) に代表されるような騒擾・騒乱事件が多発するようになった。大部分のコンスタブルには暴動鎮圧を行うだけの能力はなく、治安判事は、暴動を放置するか、あるいは(ピータールーの虐殺に見られるような)軍の治安出動による多数の犠牲者を容認するかという深刻な二者択一を迫られることになり、新たな治安対策が急務となった。この情勢を受けて、1822年に内務大臣に就任したロバート・ピールは首都警察の創設を提唱し、一度は挫折したものの、説得工作を進めるとともに法案自体も漸進的に改訂し、1829年7月、ついに首都警察法(英語版)が成立した。これによって設置されたのがロンドン警視庁である[8]。
名称詳細は「スコットランドヤード」を参照
ロンドン警視庁には、the Met、Met Pol、MP、the MPSなど、非公式の呼び名や略称が数多くある。ロンドンのコックニー方言では、俗に "Old Bill と呼ばれた[9]。成文化された法律の記述においては、"service" の代わりに、"metropolitan police force" や "metropolitan police" の表記が用いられる例がある。また、初代の本部庁舎が所在していたホワイトホールのグレート・スコットランドヤードの地名に因む、スコットランドヤードという換喩は、ロンドン市民にとどまらず、世界中に広く知られ親しまれている通称である。特に日本においてはロンドン警視庁と訳されることが専らである[10][11]。これは、MPS側が公式に使用している名称であるが[10]、日本の警視庁に倣って訳された名称であるとする説もある[12]。 イギリスの地方警察では関係地方自治体ごとに設けられた警察管理者 (Police authority
組織詳細は「ロンドン警視庁の組織と機構」を参照
上部組織
ロンドン警視庁は、首都であり国際都市であるロンドンを担当する地方警察であるとともに、国の公安に係る事案や王室の関係者・施設の警備、外国政府関係者・関係施設の警備など特殊な業務を負っている。その特殊性から、首長である警視総監 (Commissioner of Police of the Metropolis) は閣僚に次ぐ栄誉を担うほか[16]、警視総監、副総監および総監補は、内務大臣の奏請によって国王が任命することとなっている[13]。