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ロマン派音楽(ロマンはおんがく)は、古典派音楽をロマン主義の精神によって発展させていった、ほぼ19世紀のヨーロッパを中心とする音楽を指す。 ロマン派音楽は、文学・美術・哲学のロマン主義運動と関連しているが、音楽以外の芸術分野でロマン主義が1780年代から1840年代まで続いたのに対し、音楽学で慣習的に使われている「ロマン主義の時代」は、それとは異なり、古典派音楽の時代と近代・現代音楽の間に挟み込まれている。従って、ロマン派音楽は、だいたい1800年代初頭から1900年代まで続いたとされている。 ロマン主義運動の思想は、「真実は必ずしも公理にさかのぼりうるとは限らず、感情や感覚・直観を通じてしか到達し得ない世界には、逃れようもない現実がある」というものであった。ロマン主義文学は、感情表現を押し広げ、より深層に隠れたこれらの真実を抉り出すための闘いだった。一方、ロマン派音楽は、オーケストラの規模を拡大したとはいえ、古典派音楽から受け継がれた楽式の構造は維持した。 「ロマンティックな音楽」という日常語は、やわらかく夢見がちな雰囲気を連想させるような音楽という意味で使われる。この用法は、当時確立した「ロマンティック」という言葉の含意に由来する。だが、ロマン派の楽曲がすべてこのような形容に当てはまるとは限らないし、ロマンティックな楽曲が必ずしもロマン主義の時代と結び付いているわけでもない。 ロマン派の時代にはバロック音楽や古典派音楽から受け継がれた和声語法を言い表すために「調性」という概念が確立された。バッハ・ハイドン・モーツァルト・ベートーヴェンらによって示された偉大な機能和声法を、ロマン主義の作曲家は自分たちの半音階的な新機軸に混ぜ合わせようと試みたのである。よりいっそうの動きのしなやかさとより大きなコントラストを実現するため、またより長大な作品の需要を満たすためである。 半音階技法だけでなく、不協和音もいっそう多用されてさまざまに活用された。たとえば、しばしば最初のロマン派の作曲家と見なされているベートーヴェンや後のリヒャルト・ワーグナーは和声法を拡張し、以前は使われなかったような和音を用いたり、従来とは異なる方法で既存の和音を扱ったりした。ワーグナーの《トリスタンとイゾルデ》に散見される「トリスタン和音」は、和声機能の解釈の仕方やその美学的な意味をめぐって多くのことが論じられてきた。 作曲家はますます遠隔調に転調するようになり、古典派の時期に比べると予備なしの転調が頻繁になった。時には転調の軸足となる和音に代わって音符一つで転調することさえあった。このような音符を(たとえば嬰ハ音を変ニ音へと)エンハーモニック的に書き換えることによる遠い調への転調をフランツ・リストらの作曲家は試みた。どの調にも移ることが可能になる減七和音のような仕掛けも積極的に研究された。 ロマン派の作曲家は、音楽を詩に見立てたり叙事詩や物語の構成に似せたりした。それと同時に、演奏会用作品の作曲や演奏のためのより体系化された基礎を彼らは創り出した。ロマン主義の時代には、ソナタ形式など以前の習慣が規則化された。歌曲の作曲においては、旋律や主題にますます焦点が向けられた。循環形式がいよいよ積極的に多用される中で旋律の強調は現れた。
目次
1 概要
2 ロマン派音楽の諸傾向
2.1 音楽語法
2.2 音楽外の影響
2.3 ロマンティック・オペラ
2.4 ナショナリズム
2.5 管弦楽法と楽器編成
3 ロマン派音楽の沿革
3.1 源流
3.2 初期ロマン派、盛期ロマン派音楽(-1850)
3.3 後期ロマン派音楽(1850-)
3.4 20世紀における動向と新ロマン主義
4 日本におけるロマン派音楽
5 訳註
6 脚注
7 関連項目
8 外部リンク
概要
ロマン派音楽の諸傾向
音楽語法