前頭葉白質切截術
治療法
手術前に単純X線画像を評価する医師、ウォルター・フリーマン(左)とジェームズ・ワッツ
前頭葉白質切截術(ぜんとうようはくしつせっせつじゅつ)、およびロボトミー(英: lobotomy)、またはロイコトミー(英: leucotomy)とは、精神外科の一術式で、脳の前頭前野の神経線維の切断を伴う脳神経外科的な精神障害の治療法である[2]。 大脳の前頭葉の前部にある前頭前野へ交連する神経線維のほとんどがこの処置で切断される。重篤で頻繁な有害事象を伴う事が一般に知られていたにもかかわらず、20年以上にわたり西側諸国において精神障害や場合によっては、精神疾患以外を対象とした治療の主流として行われていた。 手術後、一部の患者はある程度改善することもあったが、合併症と機能低下(時にそれは重篤なものとなる)がしばしばみられた。この治療が登場した当初から、特にこの治療がもたらす利益と不利益については議論が絶えなかった。21世紀では、患者の権利を守る観点から、人道的な治療法としてはほとんどの場合認められなくなっている[3]。 この処置を最初に考案したポルトガルの神経学者エガス・モニスは「ある種の精神病症状に対するロイコトミーの治療的価値の発見」に対して1949年のノーベル生理学・医学賞[注 1]を共同受賞したが、この受賞にも議論があった[5]。しかし、アメリカのウォルター・フリーマンとジェームズ・ワッツ
概要
1940年代前期から1950年代にかけて、この処置の使用頻度は劇的に増加し、イギリスではアメリカよりも多く行われ、最盛期には年間1000件を越えた[6]。
実施例の多くは女性であった。1951年のアメリカの病院の調査では60%近いロボトミー患者が女性であり、1948-52年のカナダオンタリオ州で行われた症例では、限られたデータではあるが74%が女性であった[7]。1950年代に入ると、ソビエト社会主義共和国連邦やヨーロッパなどでは[8]、ロボトミーは行われなくなった[9]。
この単語はギリシア語が語源であり、葉を意味するギリシア語: λοβ?? lobos と切る、薄切りにするという意味のτομ? tom? に由来する。
治療効果「私はこの手術は彼女の精神状態にはわずかしか作用しないことを十分理解していたが、手術後、彼女がより平穏になり、看護しやすくなるのではないかという期待を込めて、この手術を実施した。」“”? 「ある有名私立病院に入院しているヘレイン・シュトラウス(仮名)に対し行われたロボトミー手術の同意書に付け加えられたコメントより引用[10]。
歴史的には、ロボトミー実施直後の患者には、昏迷、不穏、そして失禁が見られた。一部の患者は食欲亢進や体重増加をきたすこともあった。けいれん発作もまたロボトミー術後にはよく見られる合併症であった。術後の数週間―数か月にかけて行われるリハビリテーションが重視された[11]。
ロボトミーは精神障害の症状を緩和するために行われ、それは患者の人格と知性を犠牲にすることで達成されていた。イギリスの精神科医であるモーリス・パートリッジは、ロボトミー300症例の経過を追跡し、ロボトミーは「患者の精神生活の複雑さを減少させることで」効果をもたらしていることを報告した。ロボトミー後は自発性、外界への反応性、自己認識、自律性が損なわれた。活動は惰性にとって代わられ、感情的に鈍麻し、術前のような知性を持つことはなかった[12]。