ロトカ=ヴォルテラの方程式
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この項目では、捕食-被食関係のロトカ・ヴォルテラの方程式について説明しています。競争関係については「ロトカ・ヴォルテラの競争方程式」を、KEYTALKの楽曲、シングルについては「ロトカ・ヴォルテラ」をご覧ください。
ロトカ・ヴォルテラ方程式の解の一例。縦軸は個体数、横軸は時間。捕食者(Predatori、青)と被食者(Prede、赤)の個体数変動の位相は一般にずれており、捕食者が増加すると、急速に被食者が減少し、さらに捕食者が減少する、という時間変化を示す。

ロトカ・ヴォルテラの方程式(ロトカ・ヴォルテラのほうていしき、英語: Lotka-Volterra equations)とは、生物の捕食-被食関係による個体数の変動を表現する数理モデルの一種。2種の個体群が存在し、片方が捕食者、もう片方が被食者のとき、それぞれの個体数増殖速度を二元連立非線形常微分方程式系で表現する。ロトカ・ヴォルテラの捕食式やロトカ・ヴォルテラ捕食系、ロトカ-ヴォルテラの捕食者-被食者モデルなどとも呼ばれる[1][2][3]

具体的には以下の方程式で表される[4]。 d x d t = a x − b x y , d y d t = c x y − d y . {\displaystyle {\begin{aligned}{\frac {dx}{dt}}&=ax-bxy,\\{\frac {dy}{dt}}&=cxy-dy.\end{aligned}}}

ここで x は被食者の個体数、 y は捕食者の個体数、t は時間をあらわし、4つの係数 a, b, c, d は正の実数のパラメータである。

被食者と捕食者の個体数変動パターンの一つの例として、被食者が自然増殖して増えていくとそれを餌とする捕食者も増殖し、捕食者が増殖したことによって被食頻度が増えて被食者が減少し、被食者が減少したことによってそれを餌とする捕食者も減少し、捕食者が減少したことによって被食者の自然増殖数が被食頻度を上回って被食者が増え、そして最初に戻り…、このような形で被食者と捕食者が交互に増減し続けることが考えられる[1][5]。ロトカ・ヴォルテラの方程式は、このような個体数の周期的な増減の様子を示すことができる簡素で基礎的なモデルとなっている[6]

名称は、この方程式をそれぞれ独立発案したアメリカの数学者アルフレッド・ロトカとイタリアの数学者ヴィト・ヴォルテラに由来する[7]。ロトカは1910年に化学物質濃度の変動を説明するために[8][9]、ヴォルテラは1926年にアドリア海の魚数の変動を説明するために発案した[10]
式の導出と前提条件
被食者の増殖速度トラから逃げるイノシシ

モデルの連立方程式内の d x d t = a x − b x y {\displaystyle {\frac {dx}{dt}}=ax-bxy}

は被食者の個体数増殖速度 dx/dt を表している。上記の式は、以下のような生態学的な前提条件から導出される。

まず、捕食者が存在しない場合を仮定すると、被食者の個体数 x は順調に自然増していくと考えられる。この自然増は、マルサスモデルのようにその個体数に比例して増殖速度が増え、制限なく指数関数的に増殖すると仮定する[11]。すなわち、被食者にとっての餌は不足することなく十分あるような環境にあると仮定する[12]。これを表しているのが、右辺第一項 ax である[13]

しかし、捕食者が存在する場合、被食者の個体数は捕食によって減少し、捕食者の存在は被食者増殖速度を抑制する効果を持つ。よって、捕食者数 y に比例して被食者増殖速度 dx/dt が減少すると仮定できる[14]。またさらに、捕食者がランダムに被食者を探索しているとすれば、被食者個体数が多いほど出会う割合が高まると考えられる[4]。よって、被食者増殖速度は被食者個体数にも比例して減少すると仮定できる[15]。これを表しているのが、右辺第二項 −bxy である[13]。このような、それぞれの個体数の単純な積で個体数増殖速度への影響を表すことを、質量作用の法則や質量作用の仮定と呼ぶ[16]。ロトカ・ヴォルテラの方程式は、この原則を基礎としている[17]
捕食者の増殖速度ウサギを捕食するボブキャット

捕食者の個体数増殖速度 dy/dt は d y d t = c x y − d y {\displaystyle {\frac {dy}{dt}}=cxy-dy}

と表される。上記の式は、以下のような生態学的な前提条件から導出される。

まず、被食者が存在しない場合を考える。被食者にとっての餌はこの方程式系に現れる変数とは別に常に十分あると仮定したが、捕食者にとっての餌は被食者のみとする[18]。よって、被食者が存在しないことは食糧が尽きたことと同じであり、捕食者の死亡率は出産率を上回り、捕食者の個体数 y は減少の一途を辿ることになる。この減少の仕方も、被食者の自然増のように個体数が多ければ多いほど減少速度が大きくなる、すなわち個体数 y に減少速度 dy/dt が比例すると仮定する[11]。これを表しているのが、右辺第二項 −dy である[13]

そして、捕食者が増える速度は、捕食に成功した回数に比例すると考えられる[19]。捕食による被食者減少速度が −bxy と仮定されたように、捕食による捕食者増殖速度も同じ理屈から被食者数 x と捕食者数 y に比例するといえる。これを表しているのが、右辺第一項 cxy である[15]
個体数の振る舞い

このロトカ・ヴォルテラ方程式を解析的に解いて x と y の t に関する明示的な解を得ることはできない[20]。しかし、以下のような解の挙動を分析し、それぞれの個体数がどのように振る舞うかを知ることができる。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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