ロック・ミュージカル
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ロック・ミュージカル(Rock musical)は、ロックを伴うミュージカルのことである。このジャンルは、ロックを語るうえで、コンセプト・アルバムなどと重なるかも知れないし、コンセプト・アルバムから生まれたロック・ミュージカルもいくつかある。ロック・ミュージカルの代表的な作品には、『ヘアー』、『グリース』、『レント』などがある。『The Who's Tommy』(1992年)[注釈 1]のように、ロック・オペラと呼ばれる作品がミュージカル化されたものもある。
歴史

ロック・ミュージカルにヒントを与えた最初のミュージカルは1957年の『ジーグフェルド・フォリーズ』の最終版だと言われる[1]。この作品には、当時50歳のビリー・デ・ウルフが歌う『The Juvenile Delinquent(非行少年)』というロックンロール・ナンバーがフィーチャーされていた。続いて、ロック・ミュージカルの先駆けになった作品に『バイ・バイ・バーディー』(1960年)がある[注釈 2]。その後、ブロードウェイにロックンロールが戻ってくるまで、7年待たねばならなかったが、ロックをミュージカルに取り込むという、これら初期の試みが、1967年の『ヘアー』にはじまるロック・ミュージカルの道を切り開いたと言えるだろう[2]

「The American Tribal Love-Rock Musical」という副題がつけられ、反戦、フリーラヴ、ヒッピーをテーマに取り上げ、ヌード・シーンも登場する『ヘアー』は、1967年、ニューヨークのパブリック・シアター[注釈 3]で初演され、1968年4月にブロードウェイに進出した[3]。ロック・ミュージカルがミュージカルの重要なジャンルとなったのは、『ヘアー』のヒット以降である。同じ1968年ウィリアム・シェイクスピアの『十二夜』の性別を入れ替えた『ユア・オウン・シング』もスタートした。

アンドルー・ロイド・ウェバー作曲、ティム・ライス作詞の『ジーザス・クライスト・スーパースター』は、元々はミュージカルではなくコンセプト・アルバムとして、1970年に発表された。この作品はしばしばロック・オペラにカテゴライズされることもある。アルバムの売り上げで、1971年に舞台化された[4]。『ジーザス・クライスト・スーパースター』のような論争を起こすほどのものではなかったが、『ゴッドスペル(Godspell)』(1970年)も宗教的テーマを扱ったミュージカルで、ポップ/ロックの影響も受けていた。

1970年代を通して、ロック・ミュージカルは発展を続け人気を獲得していった。この時期に発表されたのは、『グリース』、『ピピン』、『ロッキー・ホラー・ショー』などである。劇的かつエモーショナルなテーマを持ちながら、会話がいっさいないもの、あるいはオペラを思い起こさせるものもあったが、それはロック・オペラと呼ぶべきかも知れない。さらにロック・ミュージカルは別の方向にも広がっていった。たとえば、『ザ・ウィズ』、『レイズン(干しぶどう)』、『ドリームガールズ』、『パーリー/Purlie』などはリズム・アンド・ブルースソウルミュージックの影響が色濃いし、『マンマ・ミーア!』や『ジャージー・ボーイズ』といった既成の曲をフィーチャーしたジュークボックス・ミュージカルも現れた。

しかし、1980年代になって、ロック・ミュージカルは下火になってゆく。そんな中、『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』(1982年)、『チェス』(1986年)が健闘したが、観客の嗜好は、ノスタルジックな出し物同様、『レ・ミゼラブル』、『オペラ座の怪人』といった、いかにもヨーロッパ的なスコアの作品に向かっていく。

1990年代になって、ようやくロック・ミュージカルはルネサンスを成し遂げる。その功績は少なからず、ジョナサン・ラーソン作のトニー賞ピューリッツァー賞受賞作『レント』(1996年)の成功に負っている。続いて『バットボーイ』(1997年)や、性転換ロック・シンガーが主人公のジョン・キャメロン・ミッチェル作『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』(1998年)といった、オフ・ブロードウェイのロック・ミュージカルが登場した[5]

そして、1990年代後期から2000年代にかけて、ロック・ミュージカルは復活を遂げた。エルトン・ジョン作曲の『アイーダ』(1998年2000年)、『Lestat(吸血鬼レスタト)』(2006年)や、スティーヴン・シュワルツの『ウィキッド』(2003年)が、ロック・ナンバーを交えたジュークボックス・ミュージカル同様に当たっている。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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