ロタウイルス
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ロタウイルス
電子顕微鏡によるロタウイルス(スケールバー100 nm)
分類

:第3群(2本鎖RNA)
:レオウイルス科 Reoviridae
:ロタウイルス Rotavirus




A群ロタウイルス

B群ロタウイルス

C群ロタウイルス

D群ロタウイルス

E群ロタウイルス

F群ロタウイルス

G群ロタウイルス

H群ロタウイルス

ロタウイルス感染症
概要
診療科感染症消化器科
症状下痢嘔吐発熱脱水症状
原因ロタウイルス
合併症脳炎脳症心筋炎肝炎腎不全腸重積溶血性尿毒症症候群など
治療輸液による全身状態の改善
合併症を起こした場合はその治療も
予後早期に適切な治療を行えば致死率は1%以下
分類および外部参照情報
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ロタウイルス(rotavirus)は、乳幼児における下痢症の主要な病原体である[1]レオウイルス科に属する二本鎖RNAウイルスである。離島国などを除き世界中でほとんどの乳幼児が5 - 6歳までに一度はロタウイルスの感染を経験する[2]。感染のたびに免疫が誘導されるため、回を追うごとに軽症化し、大人は発症しないか、極めて軽微となる。

ロタウイルスは糞口経路によって伝播する。ロタウイルスが感染すると小腸に並ぶ細胞は障害を受け、胃腸炎を引き起こす。1973年にはRuth Bishopらによって発見されて電子顕微鏡像が得られていたが[3]、歴史的にこのウイルスの重要性は公衆衛生上軽視されてきており、その傾向は発展途上国で特に顕著である[4]。ヒトの医療において重要のみならず、動物にも感染するこのウイルスは家畜の病原体でもある[5]

通常、ロタウイルス感染症は管理の容易な小児疾患であるが、一方で、2013年の1年間でロタウイルスは小児の全下痢症による死亡の37%を占めて、21万5千人の乳幼児の死亡を引き起こしていると見積もられ[6]、さらに死亡者以外にも200万人が重症化するとされる[4]。死亡例や重症症例のほとんどは、発展途上国で発生する[7]

アメリカ合衆国では、ロタウイルスワクチンの接種プログラムを開始する前で、270万人の子供が胃腸炎を発症し、6万人が医療介入を受け、37人前後が死亡していた[8]。ロタウイルスワクチンの導入に伴い、アメリカ合衆国では医療介入を受ける患者の割合が激減している[9][10]

ロタウイルスの制圧に向けた公衆衛生キャンペーンは、感染者への経口補水と予防のためのワクチン接種に焦点を当てている[11]。ロタウイルスワクチンを小児期の予防接種プログラムに導入した国家では、ロタウイルスの発生と重症化が減少している[12][13][14]。.mw-parser-output .toclimit-2 .toclevel-1 ul,.mw-parser-output .toclimit-3 .toclevel-2 ul,.mw-parser-output .toclimit-4 .toclevel-3 ul,.mw-parser-output .toclimit-5 .toclevel-4 ul,.mw-parser-output .toclimit-6 .toclevel-5 ul,.mw-parser-output .toclimit-7 .toclevel-6 ul{display:none}
ウイルス学
ロタウイルスの型

ロタウイルスはAからH群までの8つの種に分かれる[15]。ヒトは主にA群、B群、C群に感染し、特にA群への感染が多い[16]。E群やH群はブタに、D群、E群、F群は鳥類に感染する[17][18]。A群ロタウイルスはさらに複数の株に分かれ、これを血清型と呼ぶ[19]。血清型はインフルエンザウイルスと同様に2つの表面タンパク質の組み合わせによって命名される。糖タンパク質VP7がG血清型を、プロテアーゼ感受性タンパク質VP4がP血清型を決定する[20]。G型を定義する遺伝子とP型を定義する遺伝子は別々に子孫ウイルスへ継がれるため、様々な組み合わせが生じる[21]。A群ロタウイルスの型の決定には、非定型的なロタウイルスの遺伝子型を決定するために、全ゲノム遺伝子型別 (whole genome genotyping) が用いられることもある[22][23]。また、ロタウイルスの型の分布は年と地域によって変動する[24]
ウイルスのタイピングができるようになって、C群ロタウイルスの流行はA群ロタウイルスに比べると遅いことがわかってきており、C群発症例115例の解析では、5?9歳が57%、10?14歳が20%を占めていた。
構造

ロタウイルスのゲノムは11分節に分かれる計18,555塩基対の二本鎖RNAである。各分節は1つの遺伝子であり、大きいものから順に1から11の番号が割り当てられている。各遺伝子は1種類のタンパク質をコードしているが、第9遺伝子分節は例外的に2つのタンパク質をコードする[25]。RNAは外殻、内殻からなる2層のカプシドと、その内層に存在するコアの合わせて3層からなるタンパク質に包まれ[26]、コアを包むカプシドタンパク質の形状は正二十面体である。ウイルス粒子の粒子径は最大で76.4 nmであり[27][28]エンベロープを持たない。
タンパク質

6つのウイルスタンパク質 (VP) がウイルスの粒子を構成する。この構造タンパク質群はそれぞれVP1、VP2、VP3、VP4、VP6およびVP7と呼ばれる。糖タンパク質VP7がG血清型を決定する。構造タンパク質であるVPに加え、ロタウイルスは感染細胞の細胞内ではさらに非構造タンパク質 (NSP) を合成する。この非構造タンパク質はそれぞれNSP1、NSP2、NSP3、NSP4、NSP6およびNSP7と呼ばれる[29]ロタウイルスの構造タンパク質の局在を表した模式図

ロタウイルスゲノムにコードされる12の遺伝子のうち、6つはRNA結合性タンパク質である[30]。ロタウイルスの複製におけるこれらのタンパク質の役割は完全には理解されていないが、RNAの合成とウイルス粒子へのパッケージング、ゲノム複製の場へのmRNA輸送、mRNAの翻訳と遺伝子発現調節に関与すると考えられている[31]
構造タンパク質

VP1はウイルス粒子のコア内に存在するRNAポリメラーゼである[32]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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