この項目では、生物学におけるロゼットについて説明しています。その他のロゼットについては「ロゼット (曖昧さ回避)」をご覧ください。
生物学におけるロゼット(英: rosette[1][2])は、生物体の器官や組織、細胞などが示すバラの花冠状の配列をいう[2][3]。また、ロゼット rosette は、バラ Rosa
にフランス語の指小辞 -ette を付した語で円花飾や円花窓を表す建築学用語やローズ型の宝石を表す地学用語としても用いられる[4]。生物学においても植物と動物で別の実体を表す。ロゼットは植物体の主軸で胚軸を除く節
間の伸長が抑制される成長様式を指す[2]。全ての葉がバラの花弁のようにシュート頂周辺の1ヶ所から放射状に重なり合って並ぶように見える[2][6]。ロゼットはラテン語では rosula, rosella と表現され、形容詞としては「ロゼット状の rosulaceus, rosularis, rosulatus」や「ロゼットを有する rosulifer」などの語が用いられる[7][8][9][注釈 1]。ロゼットを構成する葉は地上茎の基部の節につく根生葉(こんせいよう、radical leaf)[注釈 2]で、特にロゼットを構成し地表に密着して越冬するものをロゼット葉(ロゼットよう、rosette leaf)と呼ばれる[2][6]。ロゼット葉の形態は、ロゼット解消後の花茎につく普通葉(茎生葉)に比べ、多少簡略化するか、形態的にあまり変わらないことも多く、花茎の葉の方が単純化し、ロゼット葉は逆に複雑なこともある[2]。
越冬など、生活史の一時期にロゼットを示す植物をロゼット植物(ロゼットしょくぶつ、rosette plants)という[2][10]。ロゼット植物は花芽形成後に急速に成長し、花をつけるが、それを抽薹(抽苔、ちゅうだい、bolting, seeding)あるいは薹立ち(とうだち)という[11][2]。その主軸を薹(とう、flower stalk)という[2]。ロゼット植物はラウンケル (1907) における生活型のうち、半地中植物に属する[2]。また、沼田眞による草本植物の生育型の分類では、ロゼット植物はロゼット型 (r)、一時ロゼット型 (pr)、偽ロゼット型 (ps) に分けられる[12]。ロゼット型はロゼット葉のみからなり、直立茎は花茎のみで葉を付けないもの、一時ロゼット型はある器官ロゼットで過ごし、後に根生葉をなくし葉を付けた茎をのばすもの、偽ロゼット型はある期間をロゼットで過ごし、根生葉を残したまま葉を付けた茎をのばすものを指す[12]。越年生の長日植物は、抽薹を開始するまでロゼットとなることが多い[3]。
ロゼットは以下のような植物に見られる。
アブラナ科 - ナズナ[6]
キク科 - ムカシヨモギ属 Erigeron[6](ヒメジョオン Erigeron annuu[13]、ヒメムカシヨモギ Erigeron canadensis[13])、ノゲシ属 Sonchus[6]、タンポポ属 Taraxacum[14]、セイタカアワダチソウ Solidago altissima[15]、シラヤマギク Aster scaber[15]、キツネアザミ Hemisteptia lyrata[16]
アカバナ科 - マツヨイグサ属[6](メマツヨイグサ Oenothera biennis[13][17]、ユウゲショウ Oenothera rosea[17])
シソ科 - メハジキ
オオバコ科 - オオバコ属 Plantago[6]
マツムシソウ科 - マツムシソウ属 Scabiosa[6]
オミナエシ科 - オトコエシ Patrinia villosa[18]
タデ科 - エゾノギシギシ Rumex obtusifolius[16]
ムラサキ科 - キュウリグサ Trigonotis peduncularis[16]
イネ科 - ヒカゲスゲ Carex lanceolata[10]、トキワススキ Miscanthus floridulus[10]