ロズンジ(英: Lozenge、仏: Losange、古仏: Losenge)は、紋章学において高さよりも幅が若干狭い縦長の菱形、又は45度傾けた正方形のチャージである。オーディナリーの中ではサブオーディナリーに分類される[1]。トランプのダイヤのスート(マーク)に似ているため、端的にダイヤモンド形とも形容される。
また、シールドの代わりに主に女性の紋章を示すための土台としても用いられる。
解説
チャージとしてのロズンジ
フュージルフュージル
Argent five fusils in fess
ロズンジよりも幅の狭いものをフュージル (fusil) と呼ぶ。縦横の比率がどのくらいになったらフュージルと呼ばれるかといった厳密な区別は必ずしもなく、今日でもそのような区別は見られないが、現代の紋章学ではそれらを図形的な類似性から同一視することなく、紋章記述でロズンジとフュージルは異なるものと識別されることになっている。 マスクル (mascle) は、ロズンジの外形だけを縁取りのように残し、中の部分を取り除いたものである。このようにチャージに外形と同じ形で穴をあけることをヴォイド (voided) という。マスクルを lozenge voided と記述してもまったく同じ形になり、どちらでも誤りとは言えないが、近代の紋章学ではこれをマスクルと記述することになっている[2]。 ラスター (rustre) は、円形の穴でロズンジに穴を開けたものである。マスクルよりも見かけることは稀である。紋章学での一般的な表現では、チャージに円形の穴を開けることをピアスト (pierced) と記述するため、lozenge pierced と記述してもラスターと同様の形状を描くことができる。マスクルに空けられている穴を丸くしたものと捉えることもできるため、 Mascle round-pierced と記述することもある[3]。ラスターの形は、そのような形をした板を繋ぎ合わせたものを服の上に縫い付けた古代の鎧が起源だとする説がある[3]。 ロズンジを隙間なく敷き詰めた菱形のパターンでおおわれるフィールドは、ロズンジー (lozengy) と呼ばれる。同様に、フュージルのフィールドはフュージリー (fusily) 、マスクルのフィールドはマスクリー (masculy) と呼ばれる。 ロズンジは、数世紀の間、特に紋章を持つ女性と深く関係してきた。ロズンジはエスカッシャン又はシールドの代わりに彼女らの紋章を示し、後世にその紋章を引き継ぐための伝達手段として用いられてきた。ただし、紋章記述にシールドではなくロズンジを使用することを明確に記述することはなく、図として示す際にどのような形の中に紋章を示すかという問題である。 カナダを含まないイギリスとスコットランドの現代の紋章学において、未婚女性及び未亡人の紋章は今でもシールドよりもむしろロズンジの上に示されるのが普通で、クレスト又はヘルメットも描かれない。時折そのような女性のためにロズンジの代わりにオーバルまたはカルトゥーシュも使われる。なお、カナダの紋章院は男女平等・同権を旨として特に本人の希望がない限り女性の紋章もシールドの上に描く。 既婚女性は、一部の例外を除き、常に彼女らの紋章をシールドに示す。その例外とは、結婚している間も彼女らの爵位紋章を示すためにロズンジを使う権利を持つ貴族の夫人の場合である。 妻と夫の紋章を並べるインペイルメント、又は、スコットランド以外のイギリスの紋章学で紋章の相続人が女性である場合に、彼女の夫の紋章を示した大きなシールド(未亡人である場合はロズンジ)の上に妻の紋章を示す小さな「見せかけのエスカッシャン」(エスカッシャン・オブ・プリテンス)の形で既婚女性のシールド(及び未亡人のロズンジ)は、彼女自身の紋章を彼女の夫の紋章と結合することがある。
マスクル
ラスター
マスクル
Argent, a mascle Gules
ラスター
Argent, a rustre Gules
フィールド
ロズンジー
Lozengy Argent and Gules
エスカッシャンとしてのロズンジプリンセス・ロイヤル・アン王女の紋章
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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