ロジカルシンキング
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ロジカルシンキング(logical thinking)とは、一貫していて筋が通っている考え方、あるいは説明の仕方のことである。
目次

1 概要

2 学術的な観点を踏まえた論理思考

3 コンサルティング会社由来の論理思考

4 三角ロジックとトゥールミン・モデル 

5 発達心理学の記述に現れる論理思考

6 日本語と日本人の特殊性との関連

7 英文・日本文の作文指導との関連

概要

英語でlogical thinking と表記され、その日本語訳として「論理思考」あるいは「論理的思考」と置き換えられることが多いが、いずれも妥当であるかは議論の余地がある。

英語辞書に、logical thinkingという語彙を持つものは少なく、あっても十分な説明になっていないことが多い。例えば、「筋の通った(理路整然とした)論理的な思考」(thinking that is coherent and logical)であるとの説明が、Vocabulary.com および Dictionary.com に見られるが、この説明はほぼ同語反復と言える。また、ロジカルシンキングの英語訳として、critical thinking(批判的思考)が選択されることも多い。

日本でロジカルシンキングや論理思考の概念が広まった契機は、『ロジカル・シンキング』(照屋華子・岡田恵子, 東洋経済新報社, 2001年)以来、主にコンサルタント系の著者たちにより、ロジカル・シンキングのための様々なツールや手法が企業向けに提唱され、ビジネス書のブームとなったことにある。

以上のことから、logical thinkingは英語圏で広く通用する一般的な語彙ではなく、特定の経営コンサルティング会社あるいは業界用語とみなすことができる。

論理思考の用語から連想される論理学は、哲学数学などの分野で古くから研究されてきた分野であるが、一般にも使われるようになった用語MECEをはじめ、上記の論理思考の解説書等で導入される概念は、こうした学問としての論理学とは関係がない。

野矢茂樹教授の著書『新版 論理トレーニング』中で、論理的思考という用語自体について、論理は思考力を意味しないため誤解を招く使い方であるという指摘がなされている。

このように、ロジカルシンキング、あるいは、論理思考という用語は、それが使われる年代や文脈によって異なる意味で受け取られる。使われる文脈は多岐に渡るが主なものを以下に示す。
学術的な観点を踏まえた論理思考

論理思考から連想される、「論理学」は哲学、数学、計算機科学等の一部となる学問分野である。

哲学としての論理学は、三段論法に代表されるアリストテレスが体系化した研究にまで遡ることができる。現代の論理学は演算記号を用いた数学的な体系であるが、それ以前の自然言語による研究は伝統的論理学と呼ばれる。現代の論理学は、19世紀になってフレーゲにより数学的な枠組みを与えられて以降、数理論理学として発展し、以降の数学や物理学の基礎を形作っている。(詳細は論理学を参照)

これら学問的な文脈からは、「論理的」という表現や「論理的思考」が何かは規定されておらず、これらは学術用語であるとは認められない。学問的な意味での論理は、日常的に使われる論理のイメージとは異なったものであることは、広く指摘されている。このことを踏まえ、論理学の成果を日常生活に役立つように平易に解説する努力がなされてきた。本節の末尾にそのために執筆された書籍のいくつかを示す。

日常的に使われる「論理的な思考」という表現は、主張に対して妥当な根拠付けがされていることを指す。例えば、『論理的に考える方法』(小野田博一, 日本実業出版社, 1998年)では、日常生活上での「論理的な思考」はリーズニング(reasoning)を意味すると指摘し、さらにreasoningについては理由付けとか推論の構造くらいの意味であるとしている。

学術的に権威のある立場からロジカルシンキング、あるいは、論理思考という用語について明確な解説をしている例は少ないが、『新版 論理トレーニング(哲学教科書シリーズ)』(野矢茂樹, 産業出版, 2006年)には次のように記述されている。なお、論理学で扱う論理は、以下の引用における「狭い意味」の範囲である。

「論理的思考力」とか「ロジカル・シンキング」といった言葉がよく聞かれるように、論理とは思考に関わる力だと思われがちである。だが、そこには誤解がある。(中略) 論理力は思考力そのものではない。思考は、けっきょくのところ最後は「閃き」(飛躍)に行き着く。(中略) 思考の本質はむしろ飛躍と自由にあり、そしてそれは論理の役目ではない。(中略) 論理力とは思考力のような新しいものを生み出す力ではなく、考えをきちんと伝える力であり、伝えられたものをきちんと受け取る力にほかならない。

狭い意味では演繹という関係だけを「論理」と呼ぶが、(中略)広い意味で「論理的」であるとは、さまざまな分野主張のまとまりが、たんに矛盾していないというだけでなく、一貫しており、有機的に組み立てられていることを意味している。

論理的思考および表現に関しては、論理学的な意味を踏まえたものとして以下の著書がある。

『論理的に考えること』(山下正男, 岩波書店, 1985年)

『論理学』(野矢茂樹, 東京大学出版会, 1994年)

『論理的に話す方法』(小野田博一, 日本実業出版社, 1996年)

『論理的に書く方法』(小野田博一, 日本実業出版社, 1997年)

『論理的な思考法を身につける本』(伊藤芳朗, 中経出版, 1997年)

『考えることの科学―推論の認知心理学への招待』(市川伸一,中央公論社,1997年)

『論理的に考える方法』(小野田博一, 日本実業出版社, 1998年)

『論理学入門―推論のセンスとテクニックのために』(三浦俊彦,日本放送出版協会,2000年)

『入門!論理学』(野矢茂樹,中央公論新社,2006年)

『新版 論理トレーニング(哲学教科書シリーズ)』(野矢茂樹, 産業出版, 2006年)

コンサルティング会社由来の論理思考

日本では、2000年前後に米国のコンサルティング会社である、マッキンゼー・アンド・カンパニーの出身者によって、同社によって開発されてきたとされるコンサルティングノウハウが紹介された。特にベストセラーとなった書籍『ロジカルシンキング』(照屋華子・岡田恵子, 東洋経済新報社, 2001年)によってMECEなどのテクニックが広く知られるようになり、ロジカルシンキングに関するビジネス書のブームが起きた。本節の末尾に関連する書籍のいくつかを示す。

一連の書籍で共通に紹介される手法およびキーワードには次のものがある。


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