アルゼンチンの都市名である「ロサリオ」とは異なります。
この項目では、カトリック教会における祈りの用具について説明しています。その他の「ロザリオ」または「ロサリオ」については「ロサリオ (曖昧さ回避)」をご覧ください。
ロザリオロザリオ
ロザリオ(ポルトガル語: rosario、ラテン語: rosarium)は、カトリック教会において聖母マリアへの祈り(アヴェ・マリア)を繰り返し唱える際に用いる数珠状の祈りの用具、およびその祈りのことである。
ロザリオの祈りは、カトリック教会における伝統的な祈りで、「アヴェ・マリア」を繰り返し唱えながら福音書に記されているイエス・キリストの主な出来事を黙想していく祈りである[1]が、ミサなどの典礼行為ではなく、私的な信心業として伝わるものである。
基本となる祈り方(数え方)が定められていて、珠の数・形状もそれに沿って作られている。
由来・歴史「ロザリオの聖母」像
イタリア、南チロル
「ロザリオ」という名称は、ラテン語の rosarium に由来するもので、これは「バラの冠」という意味であり、一般的な説では、珠を繰りながら唱える祈りがバラの花輪を編むような形になるからと言われている[1]。(異説もあり。後述の起源についての説も参照 )
キリスト教の伝統の中で、聖母マリアへの祈りは初代教会から始まっていたと考えられている[2]。ドミニコ会の創設者である聖ドミニコ(1170 - 1221年)がアルビの聖堂で祈っている時に、聖母マリアからロザリオを授けられたと言われている。15世紀にブルターニュのドミニコ会士アラヌス・デ・ルーペが、現在の形に「ロザリオの祈り」をまとめ普及させた[3]。16世紀には聖ドミニコがロザリオの祈りの創始者と認められた[4]。最初の頃は、マリアの主な5つの喜びの黙想だけだったが、やがてイエス・キリストの誕生から始って受難、復活、昇天という神秘の生涯を包括する黙想の形をとり、それによってマリアに対する愛と信心とともに救い主キリストに対する信仰を深めるための、素朴で誰でも近づきやすい方法の一つとして[1]、普及していった。
日本には16世紀にイエズス会宣教師によって初めてロザリオが伝えられ、キリシタン・隠れキリシタンの時代から「コンタツ」(ポルトガル語: contas = 「数える」の意味) とも呼ばれてきた。 ロザリオは、聖母マリアへの祈り(アヴェ・マリア)を繰り返し唱える際にその回数を確認するために用いる道具である。ロザリオは手で手繰って祈るもので、文化・地域により受け取り方には多少の差はあるものの、装飾品として首にかけるものではない。形状としては、小さなものは10個の珠と十字架だけというシンプルなもの、大きなものでは十字架だけでなくキリストの像や「不思議のメダイ」(後述)が付いているものもある。 カトリック教会以外のキリスト教教派においては、プロテスタントのごく一部の教派を除いてロザリオはまず用いられない。正教会にはコンボスキニオン(チョトキ)と呼ばれる数珠状の祈りの用具があるが、ロザリオとは形状や用い方・祈りが異なる。ただし手で手繰って祈ることや、首にかけるなどはしないことでは、ロザリオと共通点がある。なお、コンボスキニオンはロザリオの起源ともされる[5]。 カトリック教会では、古くから多くの人が定型文の祈祷を毎日捧げることを習慣にしていて、中でもロザリオについては、ピオ11世をはじめヨハネ23世、パウロ6世、ヨハネ・パウロ2世など歴代の教皇がたびたびロザリオに言及して、それぞれに讃えてきた[6]。こうした伝統によって、カトリック信者はロザリオを肌身離さず持ち歩き、仕事の合間などに時間があればロザリオを唱える習慣が生まれ、ロザリオそのものも大切な道具(聖具)として持つようになった。ロザリオの祈りは、ミサなどの典礼行為の中で唱えられるものではないが、ミサの前後に任意で唱えたり、個人や家族・友人などとともに私的な祈り(信心業)として唱えられている。また、地方によってはカトリックの葬儀や通夜の前後にロザリオの祈りが唱えられることもあるため、カトリック信者は葬儀・通夜に参列する際にロザリオを持つ習慣もある。ロザリオの祈り 最も基本的となるロザリオの祈りの唱え方は、最初の1個の珠で「主の祈り」を唱え、続く10個の珠で「アヴェ・マリアの祈り」を10回、結びに「栄唱」を唱えるもので、これを「一連」と呼ぶ[7]。手首に掛けるタイプの小型のロザリオは、この一連分の珠を綴ったものである。 一般的なロザリオは、この一連を5回分(五連)綴ったもので、これを「一環」と呼ぶ。この五連が連なったロザリオには、先端に十字架、次に1個の珠、そして3個の連続した珠、さらにもう1個の珠が加わっている。これを用いて一環祈る場合は、最初に十字架の印(いわゆる「十字を切る」)をしてから、十字架の箇所で「信仰宣言(使徒信条)」を唱え、次の珠で「主の祈り」、次の3個の珠で「アヴェ・マリアの祈り」を3回、そして「栄唱」を唱えてから、一連ずつの祈りと黙想に移る。この際、各連ごとに福音書からとられたイエス・キリストの生涯などの信仰箇条を黙想する習慣があり、黙想の対象となる神からの啓示を「神秘」と呼んで、一週間の各曜日に振り分けられた神秘を黙想するよう、勧められている[7]。 〈苦しみの神秘〉 1、ゲッセマネの苦しみ 2、キリストのむち打ち
使い方・形状
カトリック
神秘の黙想(英語版
〈栄えの神秘〉 1、復活 2、昇天 3、聖霊降臨 4、マリアの被昇天 5、マリアが天と地の元后とされる
〈光の神秘〉 1、キリストの洗礼 2、カナの婚礼 3、宣教のはじめ 4、主の変容 5、聖体の制定(最後の晩餐)
曜日の振り分けは、月曜日・土曜日に「喜びの神秘」、火曜日・金曜日に「苦しみの神秘」、水曜日・日曜日に「栄えの神秘」、そして木曜日に「光の神秘」とされている。これらの神秘は、伝統的には「喜び」「苦しみ」「栄え」の3種類で、「ロザリオの十五玄義」とも呼ばれていたが、2002年に教皇ヨハネ・パウロ2世によって新たに「光の神秘」が提唱されて付け加えられ、曜日も一部変更された[10][8][11]。