レーティッシュ鉄道Ge4/4_III形電気機関車
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Ge4/4III 651号機、氷河急行塗装、ディセンティス/ミュンスター駅、2008年Ge4/4III 647号機、機器更新後、サメダン駅、2020年

レーティッシュ鉄道Ge4/4III形電気機関車(レーティッシュてつどうGe4/4IIIがたでんきかんしゃ)は、スイス最大級の私鉄であるレーティッシュ鉄道[注釈 1]の本線系統で使用される山岳鉄道用電気機関車である。
概要

本形式は1999年に開通した全長19kmのフェライナトンネルを含む新線(フェライナ線)を通るカートレインの牽引および1997年クール - アローザ線の電源方式の変更[注釈 2]に伴うGe4/4II形の同線への転用[注釈 3]と、本線系統の旅客および貨物輸送量の増加に伴う慢性的な機関車不足に対応するために1993年から1999年にかけて計12機が導入された電気機関車であり、VVVFインバータ制御により定格出力3200 kW、牽引力200 kNを発揮する強力機で、45パーミルで210 tを50 km/hで牽引可能な性能を持つとともに、輪軸操舵台車による高い曲線通過性能が特徴となっている。
導入の経緯

スイスにおけるVVVFインバータ制御方式の車両は1972年から開始されたスイス国鉄[注釈 4]Be4/4 12001号機による本線試験以降、1970年代後半から1980年代半ばにかけて実用化が進み、スイス国鉄が入換用のAm6/6形ディーゼル機関車とEe6/6II形電気機関車を導入し、1980年代後半には本線用の電気機関車としてスイス国鉄のRe450形SLM[注釈 5]およびABB[注釈 6]による私鉄用標準型機関車Re4/4形シリーズ[注釈 7]であるボーデンゼー-トゲンブルク鉄道[注釈 8]のRe4/4 91-96形、ジールタル・チューリッヒ・ユトリベルク鉄道[注釈 9]のRe4/4 42-47形、フットヴィル連合鉄道[注釈 10]のRe4/4 142-143形が導入されている。

こういった状況の下、レーティッシュ鉄道においても1985-88年にVVVFインバータ制御方式の機材の導入が検討され、架線電圧DC1000 Vのベルニナ線には電車を、AC11 kV 16.7 Hzの本線系統には電気機関車を導入することとなり[3] ABe4/4 51-56形電車と本形式の開発が進められ、その後、本形式の開発には戦車輸送列車等を牽引する電気機関車の導入に関心を持っていたビエール-アプル-モルジュ鉄道[注釈 11]が加わっている[4]。なお、旅客量の多い夏季に本線系統とベルニナ線を直通運転できる交直両用車両も検討されており[注釈 12]、VVVFインバータ制御方式の機材でも実現は可能であったが、特に最急勾配70パーミル[5][6]のベルニナ線においてデッドウエイトとなる交流用機器の重量分の牽引力低下は無視できず、製造コストも高くなるため見送られている[7]

本形式は最大45パーミルの勾配と曲線が連続する本線系統での運行と、最高速度100 km/hでフェライナトンネルを通過するカートレイン双方に使用できる性能を有する機体とすることとされた[8]車軸配置は高速重量列車を牽引するフェライナ線での運用には6軸(Bo'Bo'Bo'[注釈 13]もしくはCo'Co')が、曲線の多い本線系統での運用には4軸(Bo'Bo')が適しているとされていた[4]が、6軸とした場合、当時の主流であった主変圧器を床下の台車間に搭載する方式では機関車全長が長くなってしまい、一方で車体内に搭載した場合でも重量バランスや配線・配管等の取回しを考慮すると機器配置が複雑となって結局全長が長くなり、かつ重心の上昇を招く[10]こととなったため、製造コストやメンテナンスの面でも有利であることから[4]4軸のBo'Bo'とすることとした。4軸案となったことに伴い、粘着牽引力確保のために軸重をそれまでの最大であったGe4/4IIの12.5 tから15.5 tに引上げた[注釈 14]が、それでも6軸案より最大牽引力が低下したためにフェライナ線のカートレインの所要時間は当初検討されていたものより延びている[4]。また、牽引力はレーティッシュ鉄道で使用されるねじ式連結器の強度から設定される最大牽引トン数である45パーミルで230 t、35パーミルで310 tに近い、45パーミルで210トン、35パーミルで290 tの列車を従来より速い55 - 65 km/hで牽引可能なものとすることとして、定格出力が2500 kWに設定されている[12]。強度の高い新たな連結器の採用により設定牽引トン数をより大きくすることも検討されたが、従来の連結器の場合、最急勾配35パーミルのアルブラ線で310 tの列車(客車14 - 15両で列車長約270 - 300m)はほとんどの施設の線路有効長に適合するが、列車長がそれ以上になると地上設備の改修に多額の費用がかかる一方で、フェライナ線の開業によりアルブラ線の輸送量が同線へ分散されることが見込まれたため、連結器の変更によるそれ以上の牽引力の確保は見送られている[12]

台車は本線系統の勾配(最大45パーミル)と曲線(最急半径100 m)の条件において、軸重の重い本形式が重量のある列車を牽引する際に、粘着牽引力を最大限発揮すること[13]と、曲線区間におけるレールと動輪の摩耗を低減すること[14]を目的として操舵台車を採用している。スイスにおける輪軸操舵機構を使用した車両は、古くはSLMが1930-40年代路面電車等向けに開発した3軸式操舵台車[注釈 15]などがあり、1980年前後には輪軸操舵機構付駆動装置を装荷した2軸ボギー台車を使用した狭軌用電気機関車であるフルカ・オーバーアルプ鉄道[注釈 16]Ge4/4形[15]モントルー・オーベルラン・ベルノワ鉄道[注釈 17]/フリブール・グリュエール-フリブール-モラ鉄道[注釈 18]GDe4/4形[16]が開発され、前者はレーティッシュ鉄道が借入れて運行した実績がある[17]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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