レノックス・ガストー症候群
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レノックス・ガストー症候群(レノックス・ガストーしょうこうぐん、Lennox?Gastaut syndrome, LGS)とは、小児期に発症する難治性のてんかんで、特に2歳から6歳の間に好発する。多彩なてんかん発作が頻繁に起きる、脳波検査で2.5 Hz未満の遅い棘徐波(英語版)が検出される[1]、中等度から重度の精神発達遅滞が見られる、という3つの徴候を特徴とする[2]。日本では指定難病144に指定されている。
徴候と症状

主に8歳未満の小児に発症するものの、発症のピークとされる年齢は典型的には3-5歳である[3]。症例の約30%でLGSに先行して乳児てんかんが見られ[4]、54%という高値も報告されている[5]

LGSでは、複数の発作型のてんかんが見られることが典型的である。また、典型的には、他のてんかん症候群よりも幅広い発作が起こり得る。最も頻繁に起きる発作型は強直間代発作であり、夜間に多い(90%)。 2番目に多いのはミオクローヌス性発作であり、これはしばしば過度に疲れた時に起こる[6]

脱力発作、非定型欠神発作、強直間代発作の他、複合部分発作や部分発作もみられる。さらに、約半数の患者でめまい、無関心、無反応を特徴とする非痙攣性てんかん重積状態が見られる。発作により突然の脱力あるいは攣縮や平衡感覚の喪失を起こすことがあるため、患者は頭部や顔面への受傷を防ぐためヘルメットを着用することも多い。

日常的に起こる複数の発作型のてんかんの他、LGSの患児は精神発達遅滞や運動機能障害を合併することが多い。

本症候群では、睡眠中の速律動(全般性・両側対称性の10-20Hzの速波律動)と、全般性遅棘徐波(2-2.5Hzの棘徐波・鋭徐波)という特徴的な脳波波形が見られる。
原因

特定の原因はないが、ウエスト症候群から引き続いて発症する症例が約20%ほどある[7]。患児は、新生児痙攣または部分てんかんおよび全般てんかんの病歴があることが多い。

最も一般的なもの(70-78%)は何らかの基礎疾患に伴う2次的なものである[8]。基礎疾患としては脳症あるいは脳損傷あるいは他の疾患、あるいは発達障害が挙げられる。よくあるのは結節性硬化症、遺伝性代謝異常、脳炎などの炎症性脳疾患、髄膜炎およびトキソプラズマ症、低酸素性虚血性脳症や外傷後脳損傷である。これらの基礎疾患を有する患児は、特発性(原因不明)のLGS患児よりも予後が悪い傾向にある[7]

遺伝子解析やエクソン・シークエンシングの進展により、レノックス・ガストー症候群と診断されたいくつかの症例で、CHD2、GABRB3、ALG13、SCN2Aを含む様々な遺伝子においてde novo変異を有することが明らかになっている[9][10]。2013年にEpi4K研究コンソーシアムは、LGSおよび新生児痙攣を有する患者165人に対する全エクソン・シークエンシングを用いたコホート研究により、少なくとも15%でデノボ変異が見られることを報告している[11]。Lundらの2013年の研究では、LGSやLGS様のてんかんの成人患者において通常はまれなコピー数多型(CNV)の頻度が高いことが分かった[12]

一方で、症例の約1/3は原因不明である[7]

レノックス・ガストー症候群および薬剤抵抗性/難治性てんかんは、急性間欠性ポルフィリン症や遺伝性コプロポルフィリン症および異型ポルフィリン症を含む神経性/内臓性ポルフィリン症と合併することがある。こういった症例では、ポルフィリンを生成する抗てんかん薬を避けるよう注意を払わなければならない。酵素検査やDNA検査が必要な小児では、診断が困難な場合がある。
診断

LGSの診断は確率的である。LGSの病態には他の障害と似た特徴を示すものがあり、その多くは重複している、と考えられるからである。

てんかん発作が頻繁かつ多彩な発作型を呈している場合や、典型的な脳波パターンがあることで明確な診断ができる。後者は全般性遅棘徐波および速律動である。睡眠中、頻繁に発作パターンが見られるが、同じ患者でも測定時期や左右で異なる。

一般的には、精神発達遅滞および認知障害を合併することを確認する。精神発達遅滞および認知障害がてんかん発作の発症に先行するか、てんかん発作を発症してから2年以内に認められた場合、LGSと診断する。

LGSを正しく診断するためには、脳の器質的病変あるいは形成異常との鑑別が重要であり、核磁気共鳴画像法(MRI)やコンピュータ断層撮影(CT)による検査が必要となる場合がある。強直発作がない「疑似レノックス症候群」との鑑別も重要であり、両者を区別するには睡眠中の脳波を測定するのが最良である。
治療

治療抵抗性の症例もあるが、これは治療が無益であるという意味ではない。 選択肢には抗てんかん薬、麻酔薬、プレドニゾンなどのステロイド、免疫グロブリンの他、患者によって奏功するその他の薬剤が挙げられる。
薬物療法

2013年現在、どの薬剤にも、高い有効性を示す確実なエビデンスはない[13]ルフィナミドラモトリギントピラマートおよびフェルバメート(英語版)が有用であり得る[13]。2018年6月25日には、カンナビジオールアメリカ食品医薬品局(FDA)からLGSおよびドラベ症候群(乳児で重症ミオクローヌスてんかんを生じる希少疾患)の治療薬として承認された。
第一選択薬

ルフィナミド[14]

バルプロ酸塩(バルプロ酸バルプロ酸ナトリウムおよびその他の塩)

フェルバメート

ベンゾジアゼピン、特にクロナゼパムニトラゼパム、およびクロバザム

第二選択薬

1999年、Sachdeoをはじめとするニュージャージー医科歯科大学とニューブランズウィック州Robert Wood Johnson Medical Schoolの研究チームは、トピラマートを服用している患者群の33%で発作(特に脱力および強直発作)が少なくとも50%減少したのに対し、プラセボ群では8%であったことを報告した[15]。また、トピラマートの服用は補助療法として有効であることを2003年3月にEdith Alva Moncayoと Antonio Ruiz Ruizが報告した[16]

Motteは1997年にラモトリギンがLGSの治療に有効であると報告したが、プラセボと比較して治療群で最も一般的な副作用は風邪またはウイルス性疾患であった[17]。アメリカ食品医薬品局(FDA)は1998年8月[18]カナダ保健省は1999年[19]成人と子供のLGSにおける補助療法としてにラモトリギンを承認した。

フェルバメートは、他のすべての治療が奏功しなかったLGSに使用した場合[20]、治療抵抗性部分発作および脱力発作の抑制においてプラセボより有意に効果を示すことが分かった[21][22]。しかし、肝毒性があり副作用として再生不良性貧血を引き起こすことが知られている[23]
外科療法

緩和手術により、重症化や全般発作への移行を抑制することができる。


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