レッドブル・エアレース・ワールドシリーズ
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レッドブル・エアレース・ワールドシリーズ2014年のレース
カテゴリエアレース
国・地域7か国8か所
開始年2003年
終了年2019年
ドライバー14
最終
ドライバーズ
チャンピオン マット・ホール
公式サイトredbullairrace.com
現在のシーズン

レッドブル・エアレース・ワールドチャンピオンシップ(英語: Red Bull Air Race World Championship)は2003年から2019年まで開催していた曲技飛行パイロットによるエアレースシリーズの総称。国際航空連盟公認のレースであった。

最高速度370 km/h、最大負荷10 Gにおよぶ過酷な空中タイムトライアルの連続でイベントが構成され「空のF1」とも形容される。厳しい競技環境に耐え得る強靭な肉体と、飛行機を正確に操る技術力・集中力が要求される競技であり、曲技飛行の国際選手権優勝者や空軍教官を経歴に持つパイロットが多数を占める。
歴史

自身も選手として参戦していたピーター・ベゼネイが提案し、レッドブルの企画で2003年に始まった。

2011年から[1]2013年まで休止され[2]2014年からエンジンプロペラを統一して再開された。日本では2015年(第2戦・2015年5月16日、17日)、2016年(第3戦・2016年6月4日(予選は中止)、5日)、2017年(第3戦・2017年6月3日、4日)、2018年(第3戦・2018年5月26日、27日)、2019年(第4戦・2019年9月7日、8日)に千葉県千葉市美浜区幕張海浜公園で開催された[3]

2019年5月29日、「レッドブルが主催する他の世界選手権と比較して、業界外から十分な興味を引くことができなかった」ことを理由に、同年9月の日本・幕張海浜公園でのレースを最後にシリーズを終了することが発表された[4]

2022年より、同様の競技フォーマットや競技飛行機を使用し、後継となる「エアレース・世界選手権」が開催されることが発表された。 こちらもFAI(国際航空連盟)が公認する世界選手権となる。[5]
シリーズ概要レースのために建てられた臨時の管制塔(2010年)海上コンテナを改造した管制塔(2017年の千葉大会

1開催は「トレーニング」「予選」「ラウンド・オブ・14」「ラウンド・オブ・8」「ファイナル4」の5つによって構成されている。各開催の順位に応じてポイントが与えられ、年間を通してもっとも多くのポイントを得たパイロットがチャンピオンとなる。大会は、

トレーニング:予選日の前日に実施。

予選:各選手2回のフライトを行い、速い方のタイムが記録となる。その記録をもとに「ラウンドオブ14」の組み合わせが決定される。

決勝

ラウンドオブ14:予選の記録をもとに1対1の対戦(ヒート)に分け、各選手1回のフライトを行う。各ヒートの勝者7名と敗者の中で最速のタイムを出した1名(「ファステスト・ルーザー」と呼ばれる)の計8名が「ラウンドオブ8」に進出。下位6名(9 - 14位)が脱落、順位確定。

ラウンドオブ8:1対1の対戦(ヒート)に分け、各選手1回のフライトを行う。各ヒートの勝者4名が「ファイナル4」に進出。下位4名(5 - 8位)が脱落、順位確定。

ファイナル4:各選手1回のフライトを行い、最終順位(1 - 4位)が決定。

というスケジュールで行われる。

ポイントは、

優勝:15ポイント

2位:12ポイント

3位:9ポイント

4位:7ポイント

で以下1ポイントずつ減っていき11位以下が0ポイントとなる。

2014年からは上記の方式を「マスタークラス」とし、若手選手発掘・育成のためルールの簡易化と機体を統一した「チャレンジャーカップ」が創設された。

2008年以前は、

予選上位の8選手によるノックアウト・トーナメント形式で争われる。

予選9位以下の選手ももう一度フライトを行い、最もタイムの良い選手にシリーズ・ポイント1ポイントが与えられる。

という方式だった。
各シリーズ浦安市墓地公園横の護岸に設けられた臨時飛行場浦安市総合公園に隣接して設けられた格納庫臨時滑走路となった芝生の上を飛行するジブコ エッジ540

世界各地を転戦するツアーレースであり、ロヴィニエルジェーベト橋など開催国の著名な観光地をコースに含めることが多い。

レース用の機体は長時間の飛行には向かないため、競技会場付近に空港飛行場が無い場合、近隣の広い空き地に場外離着陸場とハンガーを設営し専用バックヤードとしている。2015年に千葉で開催された際は、浦安市墓地公園の道路に全長800 m、幅20 mの臨時滑走路が整備された[6][7]アスコット競馬場では観客席前の直線コース(約1マイル)から直接離陸しコースに入る。
競技概要千葉市消防局消防航空隊ヘリコプター「おおとり1号、2号」による空中消火デモ(2017年)会場に設置された大型スクリーンに映るアクロバットチームのショー(2014年)

曲技飛行用の単発プロペラ機を操り、5 - 6 km(3 - 4マイル)のコースに設置された高さ25 mのパイロン風船障害物(エアゲート)を規定の順序と方法で通過、ゴールまでのタイムを競う。

曲芸飛行ではなくタイムトライアル競技ではあるが、小型の機体が高速で動くことから目視しにくいため、コース進入の直前にスモークを焚いたり、尾翼とコクピット内にカメラ(ガーミン[8])を設置し会場の大型スクリーンで放映するなど、観客や視聴者への配慮がルールで定められている。

レースの合間には開催国の軍の曲技飛行隊による展示飛行、消防航空隊による救助デモなどが開催される他、レッドブル所有機の飛行や民間チームのエアショーが行われる。

予選前に行われるメディア向けのテストフライトは元参加者のマイク・マンゴールド(2007年優勝者)やポール・ボノム(解説者も兼任)が行っている[9][10]
パイロット

レースへ参戦するには現役の曲芸飛行士が最低条件で、さらにレッドブルが主催するQualification Campへ参加し、Red Bull Air Race委員会が発給する「スーパーライセンス(限定)」を取得すると「Challenger Cup」に参加する「チャレンジャークラス」の選手として登録される。そこから「スーパーライセンス(限定解除)」を取得し成績を残すと「Master Class」に参戦する「マスタークラスの選手」として選ばれる[11]

パイロットには、パラシュートハーネスの他、失神を防止するため耐Gスーツ『G-Race Suits』の着用が義務付けられている[12]。コースが海上の場合は、膨脹式の救命胴衣も着用する。

参加選手は、マット・ホール(元オーストラリア空軍教官)やフランソワ・ルボット(元フランス空軍教官)ら元空軍パイロットと、室屋義秀ハンネス・アルヒマイケル・グーリアンなど民間出身の曲芸飛行士が多い。なお「曲芸飛行士」には軍の曲技飛行隊に所属する軍人も含まれており、所属先の許可が下りれば参戦が可能である。2016年現在はマルティン・ソンカチェコ空軍曲技飛行隊所属)とクリスチャン・ボルトンチリ空軍曲技飛行隊所属)が個人として参戦している。

専業の曲芸飛行士ではなく、パイロットスクールの教官や旅客機のパイロットを兼業する選手もおり、ポール・ボノムはレースが無い日はブリティッシュ・エアウェイズボーイング747機長を務めていた[13]

高Gがかかる過酷な競技であるが他のモータースポーツと比べ参加選手の年齢は高い傾向にあり、マスタークラスは40代の選手が中心である。2016年現在はピート・マクロードガーミン・レーシング)の32歳が最年少参加記録[14]である。

また、レース創設に関わったピーター・ベゼネイは59歳となった2015年シーズンまで現役選手であった[15][16]

アジアからは2009年に日本人の室屋義秀が初めてエントリーし[2]、マスタークラスに参戦している。また2015年には元マレーシア空軍教官のハリム・オスマンがチャレンジャークラスに参戦した[17]。2017年からはチャレンジャークラスに中国(香港)出身のケニー・チャンが参戦している[18]
チームピート・マクロードのチームが利用するハンガー内。(2017年)ハンガー内でエンジンを降ろし整備するフアン・ベラルデのチームのメカニック。(2017年)母国の国旗を模したカラーリングのポール・ボノム機(2008年)

レースにはチーム単位での出場のため、パイロットに加え、整備を担当するエンジニアとチームを統括するコーディネーターを基本とし、チームによってはコースレイアウトや気象条件を分析しアドバイスを出すレース・アナリストやメディアに対応する広報担当などが雇用されている[19]

室屋はアメリカスカップで日本チーム(1992 - 1995)を主導し、曲芸飛行士でもあるロバート・フライをコーディネーターに起用している。

ナイジェル・ラム2014年シーズンの総合チャンピオンとなった一因として、工学部の大学院生のマックス・ラム(ナイジェルの息子)がスクーデリア・フェラーリのテクニカル・ディレクターである、ジェームス・アリソン が開発したプログラムを利用したレース解析が功を奏したためである[20]。カービー・チャンブリスはマイクロソフトリサーチ出身のアシッシュ・カプール[21]をアナリストとして雇用している[20](マイクロソフトはチームスポンサーでもある)。

ポール・ボノムのチームはレース・アナリストはおらず空気力学の専門家でミナス・ジェライス国立大学(英語版)教授のPaulo Iscoldが参加していた。

自動車レースと同じく機体や主翼はスポンサーの企業カラーやブランドロゴで塗装されることが多いが、複数の小口スポンサーで参戦するチームは、青を基調にレッドブルのロゴを配した『レッドブルカラー』に塗装し尾翼に国旗を描いたり、オリジナルのカラーリング(マット・ホール)や母国の国旗をイメージした塗装(ポール・ボノム)とすることが多い。

チームはバックヤードに用意された仮設ハンガーを利用する。仮設ではあるが機体の格納だけでなくエンジン重整備も可能であり、ハンガーで修理できないレベルでは棄権となることが多い。
機体

機体がレギュレーションに違反していないかを検査するため、レース終了後に一旦パルクフェルメに送られ、違反が発覚した場合はペナルティが与えられる[22]


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