レジオネラ症
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レジオネラ症
別称Legionellosis,
[1] legion fever

レジオネラ菌の透過型電子顕微鏡写真[2]
概要
診療科呼吸器内科
症状咳、呼吸困難、高熱、筋肉痛、頭痛、吐き気、嘔吐、下痢[3]
発症時期暴露後2-10日[3]
原因レジオネラ菌類[4][5]
危険因子高齢、喫煙歴、慢性閉塞性肺疾患、免疫力の低下[6]
診断法ELISA、痰の培養[7]
予防水道の衛生維持[8]
治療抗生物質の投与[9]
分類および外部参照情報
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レジオネラ症(legionnaires' disease)は、どの種類のレジオネラ菌でも引き起こされる非定型肺炎のひとつである[4]。兆候や症状は咳、息切れ高熱筋肉の痛み、頭痛である[3]。吐き気、嘔吐、下痢にもなりえる[1]。これらの症状は曝露2日から10日後に現れる[3]
解説

レジオネラ感染症は、1976年に初めて報告された新興感染症であり、日本では感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律によって四類感染症に指定されている。これは日本でのレジオネラ発生の増加を踏まえて2003年の改正の際に行われたものであり、従前の感染症法では規定されていなかった、汚染施設の消毒などに対する行政措置が可能になるような改正が盛り込まれた。
疫学

レジオネラ菌は自然の淡水に生息している[5]。温水タンク、温水浴槽、冷却塔、大型エアコンを汚染することがある[5]。通常、菌を含んだ水の微粒子を呼吸し感染する[5]。また、汚染された水を誤嚥することによっても感染することがある[5]。一般的にヒトからヒトへは感染せず菌に曝露しても必ずしも感染するとは限らない[5]。感染のリスク要因は高年齢、喫煙歴、慢性閉塞性肺疾患、低免疫機能があげられる[6]。重度の肺炎または過去に旅行により肺炎にかかったことのある人は感染していないか検査をすることが勧められる[10]。診断方法は尿の抗原検査と喀痰検査がある[7]

予防にはより良い水道システムの維持である[8]。レジオネラ症の治療は抗生物質が用いられる[9]。推奨薬剤はニューキノロンアジスロマイシンドキシサイクリンである[11]。発症すると入院が必要となる場合が多い[10]。感染者の約10%が死に至る[9]

世界的な発症数に関しては明確ではない[1]。肺炎が流行る地域での2%から9%がレジオネラ症が原因と推計される[1]。米国では年間8,000?18,000件の入院件数が推計される[12]。レジオネラ症の集団的発症は稀である[1][13]。常に感染する可能性があるが夏と秋に多い[12]。1976年のフィラデルフィアにて開かれた在郷軍人会にて最初に流行したことから legionnaires' disease(在郷軍人病) と命名された[14][15]。「:en:1976 Philadelphia Legionnaires' disease outbreak」も参照
臨床像
レジオネラ肺炎
2 - 10日の潜伏期間を経て高熱、咳、頭痛、筋肉痛、悪寒などの症状が起こる。進行すると呼吸困難を発し胸の痛み、下痢、意識障害等を併発する。死亡率は15% - 30%と高い。
体温 > 39.4℃

喀痰がない(細胞内寄生のため、
好中球マクロファージに貪食されず、膿性喀痰を生じない)

血清ナトリウム値 < 133mEq/L

LDH > 255IU/L

CRP > 18.7mg/dL

血小板 < 17.1万、の6つのうち4つ以上を満たす場合レジオネラ肺炎の確率が66%であると報告されている[16]

ポンティアック熱
多量のレジオネラを吸い込んだとき生じる。潜伏期間は1 - 2日で、全身の倦怠感、頭痛、咳などの症状を経て、多くは数日で回復する。
感染しやすい環境エアコンのドレン排水管がタンクに接続された和風便器の例

前述のようにレジオネラの病原性は低く、健康人がただ風呂に入っただけでは感染しない。空調冷却水内で増殖した菌が冷却塔(クーリングタワー)から飛散したり、入浴施設の水循環装置や浴槽表面で増殖した菌がシャワーなどで利用されたり、浴槽の気泡装置で泡沫に含まれたり、またはエアコン等の冷媒装置のドレン管の排水を水洗トイレのタンクに接続されている場合に便器洗浄時の水沫等によって塵(エアロゾル)となり、それが気道を介して吸入され、肺に存在するマクロファージ(肺胞マクロファージ)に感染することによって発病する。日本でも毎年数人がレジオネラにより死亡している。
感染源

入浴設備、超音波加湿器、空調機器やダクト等が感染源になったと報告されているが、特に日本では入浴設備からの感染事例が多い。1996年、通産省から家庭用24時間風呂浴水のレジオネラの存在が確認され易いとして、その製造元・発売元に衛生対策の要請がなされ、1997年にはレジオネラ対策24時間風呂が各社から発売されている。しかし、それ以降も各地の温泉や共同入浴施設では、感染による死者が出ており、衛生管理の難しさを物語っている。前述のように、レジオネラは入浴施設で多用される濾過循環装置の濾材では処理できないため、循環式浴槽を持つ共同入浴施設では、以下の二点が指導されている。
塩素消毒を行い、また定期的に湯をおとし清掃すること(レジオネラ繁殖を抑制する)

泡風呂にしないこと、湯面より高い位置にある注ぎ口ではなく浴槽内から循環させること(エアロゾル形成を抑制する)

また、L. longbeachae による疾患も報告されており、こちらは土壌に存在する病原菌が園芸用の堆肥などを通じて感染することが多い。
汚染状況
掛け流し式
従来、循環式よりは汚染の程度は低いと考えられているが、宮城県保健環境センターによる22施設の調査では、約30%の施設で公衆浴場法および旅館業法施行細則の基準を超える汚染が確認され
[17]、浴槽内の菌と浴槽付近のぬめりの菌のPFGEパターンが一致し、周囲のぬめりが浴槽の汚染源になっている可能性を報告している。同時に、掛け流し式温泉においても十分な衛生管理を行い感染事故の防止の必要があるとしている。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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