レーヴァテイン(古ノルド語: Lavateinn)は、北欧神話に登場する武器。
北欧神話の原典資料においては、世界樹の頂に座している雄鶏ヴィゾーヴニルを殺すことができる剣。レーヴァテインを固有名詞で捉えた場合、フロームンド・グリプスソンのサガに登場するミスティルテイン同様に剣として扱われ、レーヴァテインをレーヴァとテインの2つの単語として捉えた場合、杖として扱われる。「狡猾なロプトル(ロキ)」によって鍛えられ、普段は、ムスペルスヘイムの巨人スルトの妻シンモラが、レーギャルンという箱に9つの鍵をかけて保管している。
現代日本のファンタジー作品などにおいては、ラグナロクの際にスルトが振るった剣および炎を指す名称として用いられることもある。 レーヴァテインはエッダ詩の一つ『フョルスヴィーズルの言葉』の第26スタンザに登場する[注 1]。この物語の主人公スヴィプダグル
伝承
Vindkaldr kvad:ヴィンドカルドル[注 2]は問いかける。
25.
≪Segdu mer tat, Fjolsvidr!
er ek tik fregna mun
ok ek vilja vita:
hvart se vapna nokkut,
tat er knegi Vidofnir fyr
hniga a Heljar sjot?≫
「答えてくれないか、フョルスヴィーズルよ!
私がそなたに問うことに
そして私が知りたいことに。
はたして武器はあるのだろうか、
そのヴィゾーヴニルとやらを撃ち落とし
ヘルの住処[注 3]へと送り込めるような?」
Fjolsvidr kvad:フョルスヴィーズルが答えて言う。
26.
≪Lavateinn hann heitir,
en hann gerdi Loptr ryninn
fyr nagrindr nedan;
i seigjarnkeri
liggr hann hja Sinmoru,
ok halda njardlasar niu.≫
「レーヴァテインと呼ばれるものがあり、
それは狡賢いロプトルによって鍛えられ[注 4]
死の扉の下より引き揚げられた。
レーギャルンの匣[注 5]の中で
シンモラと共に在り、
九つの堅牢な鍵で固く閉ざされている。」
(ソーフス・ブッゲ『Norr?n Fornkvadi』(1867年)「 ⇒Svipdagsmal. II. Fjolsvinnsmal」より引用。強調は引用者による)
スヴィプダグルが砦に入るためには、世界樹ユグドラシル[注 6]の天辺に住む雄鶏ヴィゾーヴニルの肉が必要であり、武器の中でレーヴァテインのみがヴィゾーヴニルを殺すことができる。しかしシンモラからレーヴァテインを貰うためには、そのヴィゾーヴニルの尾羽が必要だという[注 7]。すなわち堂々巡りの謎掛けであり、これについて『北欧神話物語』は、とどのつまり選ばれし者でなければ入ることはできないということを意味している、と解説している[3]。 どんな武器であったか神話中に記載はないが、一般に剣[4][5]とされている。しかし他にも、槍[6]、矢[7]、細枝[8]など様々な解釈が見られる。 さらに、ストレム『古代北欧の宗教と神話』では「魔法の剣」[9]としている。 鍛造の詳細について、ストレム『古代北欧の宗教と神話』では「冥界の門の下でルーンを彫って造った」[9]、クロスリィ=ホランドの再話『北欧神話物語』では「ニヴルヘイムの門の所でルーンを唱えて鍛えた」[10]としている。 「Lavateinn」[11][12] という表記は、ソーフス・ブッゲらの校訂によって見出された表記である[注 8]。元々の写本では「Havateinn」[13]と表記されており、それ以前の校訂版や翻訳はそれに従っている[7][8]。この校訂により、以下に示すように、この単語の意味を把握できるようになった。 日本語ではレーバテイン、レイヴァテイン、ラーヴァテイン、レーヴァティン、レヴァティン、レヴァティーンなど、カナ表記に揺れがある。また、レヴァンテイン、レヴァンティン、レーヴァンテイン、レヴァインテインなどとも表記されることがあるが、「teinn」の前に綴りにないN音を含んでいるため、これらは誤りである。 形態素的には「Lava-teinn」と分解される。「lava」は「la」の複数属格形(「?の」)で、「la」は「破滅、禍い、不吉なこと」[14]「裏切り、害」[9]などを意味し、「teinn」は「枝、杖」[15]などを意味する。
解釈
名称
表記
意味
Size:56 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
担当:undef