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数学においてリー微分(リーびぶん、英: Lie derivative)は、多様体 M 上のテンソル場全体の成す多元環上に定義される微分(導分とも)の一種である。ソフス・リーにちなんで名づけられた。M 上のリー微分全体の成すベクトル空間は次で定義されるリー括弧積 [ L A , L B ] = L A L B − L B L A {\displaystyle [{\mathcal {L}}_{A},{\mathcal {L}}_{B}]={\mathcal {L}}_{A}{\mathcal {L}}_{B}-{\mathcal {L}}_{B}{\mathcal {L}}_{A}}
について無限次元のリー環を成す。リー微分は M 上の流れ(flow; フロー、active
(英語版) な微分同相写像)の無限小生成作用素としてベクトル場によって表される。もう少し別な言い方をすれば、リー群論の方法の直接の類似物ではあるが、M 上の微分同相写像全体の成す群は付随するリー環構造(もちろんそれはリー微分全体のなすリー環のことだが)を持つということができる。微分はいくつかの等価な方法で定義することができる。簡単のため、本節ではまずスカラー関数とベクトル場に作用するリー微分から定義する。リー微分は後述するように一般のテンソル空間への作用として定義されるものである。 まず初めに、関数の微分法の言葉でリー微分を定義する。多様体 M 上で与えられた可微分関数 f: M → R および M 上のベクトル場 X に対して、点 p ∈ M における f のリー微分を L X f ( p ) = X p ( f ) = ∇ X f ( p ) {\displaystyle {\mathcal {L}}_{X}f(p)=X_{p}(f)=\nabla _{X}f(p)} によって定義する。これは通常の意味での微分の言葉で言えば、関数 f のベクトル場 X に沿った微分を改めて X の定めるリー微分と呼んでいるということにすぎない。もうすこし装飾的な言葉を使えば、多様体 Mの接束と余接束の間の自然な双対性内積として L X f ( p ) = d f ( p ) [ X ( p ) ] = ⟨ d f , X ⟩ ( p ) {\displaystyle {\mathcal {L}}_{X}f(p)=df(p)[X(p)]=\langle df,X\rangle (p)} と言い直すことができる。ここに df: M → T*M は f の全微分、すなわち d f = ∂ f ∂ x a d x a . {\displaystyle df={\frac {\partial f}{\partial x^{a}}}dx^{a}.} で与えられる1次微分形式(右辺は a に関する和であるがアインシュタインの縮約記法を用いた)であり、dxa は余接束 T*M の基底ベクトルである。したがって df(p)[X(p)] は M 上の点 p における f の微分 df とベクトル場 X との自然な双対性を表す内積であると理解できる。実際、X をxa 座標系 において X = X a ∂ ∂ x a {\displaystyle X=X^{a}{\frac {\partial }{\partial x^{a}}}} と表せば、 L X f ( p ) = d f ( p ) [ X ( p ) ] = X a ∂ f ∂ x a ( p ) {\displaystyle {\mathcal {L}}_{X}f(p)=df(p)[X(p)]=X^{a}{\frac {\partial f}{\partial x^{a}}}(p)} を得る。これは初めに示した関数のリー微分の定義と一致している。 別のやり方として、M 上の滑らかなベクトル場 X が M 上の曲線族を定義することを示すことから出発することもできる。すなわち、M 上の任意の点 p に対して、M 上の 曲線 γ(t) が存在して、p = γ(0), d γ d t ( t ) = X ( γ ( t ) ) {\displaystyle {\frac {d\gamma }{dt}}(t)=X(\gamma (t))} が成立する。この 1 階常微分方程式の解の存在は、ピカール・リンデレフの定理によって保証されている(もっと一般に微分幾何におけるフロベニウスの定理によって与えられる)。
関数のリー微分