リースリング
ブドウ (Vitis)
色白
種ヨーロッパブドウ
原産地ドイツ、ライン川流域
主な産地ドイツ、フランス、ルクセンブルグ、オーストリア、スロバキア、クロアチア、イタリア、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカ、アメリカ、カナダなど
病害冷涼な気候における未熟
VIVC
リースリング(Riesling)は、ライン川流域原産の白ワイン用ブドウ品種であり、豊富な酸と、花や香水に例えられるような芳香を持つ。辛口、半甘口、甘口、スパークリングといった様々なワインに用いられる。リースリングはたいてい単一品種で醸造され、オーク樽で熟成されることは少ない。2004年においては、リースリングの栽培面積は全世界で48,700ヘクタール(120,000エーカー)とブドウ品種の中で20番目であったが[1]、高級ワインに限っていえば白ワイン用の品種のなかでシャルドネ、ソーヴィニヨン・ブランと並びトップ3の重要性があると目されている。またリースリングは、出来上がるワインの特徴が産地のテロワールに極めて強く影響される品種である。
ドイツの大部分など冷涼な気候においては、リースリングはリンゴや果実の風味と非常に高い酸度をもち、バランスを取るために残糖を残す場合もある。アルザスやオーストリアなど、より暖かい地域においてはブドウが長く熟すことにより柑橘や桃のような香りとなる。オーストラリアではしばしばライムのような特徴的な香りが生まれることがあり、特に南オーストラリア州のクレア・バレーやイーデン・バレーではその傾向が強い。元来の豊富な酸と明確な果実の香りにより、リースリングからなるワインは熟成のポテンシャルがあり、良年の高品質なワインであれば熟成により蜂蜜やスモーキーな香りが加わる。また、熟成されたドイツ産のリースリングには「石油香」「ぺトロール香」などと呼ばれる特有の香りがあるとされる[2]。
2015年において、リースリングはドイツおよびフランス・アルザス地方で最も栽培面積の多い品種であり、それぞれ全体の23.0%(23,596ヘクタール)[3]、21.9%(3,350ヘクタール)[4]を占めていた。ドイツでは、モーゼル・ラインガウ・ナーエ・ファルツといった地域では特に広く栽培されている。オーストリア・スロベニア・チェコ・スロバキア・ルクセンブルグ・イタリア北部、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、南アフリカ、中国、ウクライナ、そしてアメリカのワシントン州・カリフォルニア州・ミシガン州・ニューヨーク州などでも栽培例が多い[2]。 リースリングは歴史の長い品種で、15世紀から(綴りの揺れはあるものの)複数の文献に書き記されている[5]。最古の資料ではRusslingと表記されており、これは1402年にドイツのヴォルムスで書かれたものである[6]。その他の最初期の資料としては1435年3月13日のものが知られているが、これはカッツェンエルンボーゲン[注釈 1]伯爵ジョン4世のワイン蔵の記録に「ブドウ畑のリースリングの樹を剪定するのに22シリング掛かった」[注釈 2]との記述があったものである[7][8]。このときのRieslingenという綴りは、他の多くの文書においても繰り返し使われている。現代と同じRieslingという綴りが最初に見られるのは1552年のことで、ヒエロニムス・ボックがラテン語で描いた草本誌のなかで使われている[9]。 1348年から伝わるアルザス地方キンツハイムの地図の中にはzu dem Russelingeとの表記があるが、これがリースリングを指しているのかどうかは定かではない[5]。1477年になるとアルザスにおいてもRisslingという綴りで文献に残されている[10]。オーストリアのヴァッハウにおいてはRitzlingと呼ばれる小川および小さなブドウ畑が存在するが、当地ではこれはリースリングの名前の由来になったとの主張がある。もっともこの説を支持する証拠となるような文献は無いようであり、正当性が広く信じられているわけではない[11]。 かつてはリースリングはライン川流域に自生していた野生品種に由来するといわれることもあったが、その証拠は十分とはいえなかった。最近になって、フェルディナンド・レグナーによるDNA鑑定の結果、リースリングの片方の親はグーエ・ブラン
歴史
起源
現在の白ワイン用のリースリングは、果皮が赤いリースリングから生まれたという言説もあるが、それが証明されたことはない[12]。ただし、白いリースリングと赤いリースリングの遺伝的な差異は極めて小さいと考えられ、事実ピノ・ノワールとピノ・グリのように色が変化する例は存在する。
熟成1975年のドイツ産リースリング。ラインガウ地方のシュロス・ラインハルツハウゼンのエアバッハー・ジーゲルスベルク・カビネットであり、2007年に32年間の熟成を経て開封された。金色?琥珀色を呈しているが、この色は熟成されたリースリングのみならず、白ワインが熟成された際に典型的である。
リースリングで造られるワインは若いうちに飲まれることも多く、その場合はフルーティーで青リンゴやリンゴ、グレープフルーツ、桃、グーズベリー、蜂蜜、薔薇の花、青草などの香りに富んだワインとなり、豊富な酸のためにキリッとした味わいであることが多い[13]。しかし元々リースリングには豊富な酸と幅広い香りがあるため、さらなる熟成に好適である。国際的なワイン専門家であるマイケル・ブロードベントは、数百年もの熟成を経たドイツ産リースリングを高く評価している[14]。ドイツのトロッケンベーレンアウスレーゼのような甘口のリースリングは、高い糖度により保存性がさらに高まるため、とりわけ長期熟成に向いているが、高品質なリースリングであれば辛口ないしは半辛口であっても、100年を超える熟成に堪えるばかりか、素晴らしいワインであり続ける[15]。
ドイツのブレーメン市役所では様々なドイツワインが保管されているが、その中にはリースリングを含む品種で造られた1653年産のワインが含まれる[16]。
一般的には、リースリングの熟成期間としては辛口ワインで5?15年、半甘口で10?20年、甘口では10?30年以上が好ましい[17]。 リリース直後のリースリングは、著しい石油香(ぺトロール香)を有することがある[18]。これはケロシン、潤滑油、ゴムを連想させる香りと表現されることもある。石油香は熟したリースリングの複雑性のある香りの一部をなすものであり、経験豊富な飲み手はこれを追求することもあるが、不慣れであったり若々しくフルーティーな香りのワインを好む者にとっては不快に思われることもある。
熟成したリースリングにおける「石油香」