リーシュマニア
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リーシュマニア
マクロファージ中で増殖した Leishmania tropica の無鞭毛型(矢印)
分類

ドメイン:真核生物 Eukaryota
:エクスカバータ Excavata
階級なし:Discoba
階級なし:盤状クリステ類 Discicristata
:ユーグレノゾア Euglenozoa
:キネトプラスト綱 Kinetoplastea
亜綱:メタキネトプラスト亜綱 Metakinetoplastina
:トリパノソーマ目 Trypanosomatida
:トリパノソーマ科 Trypanosomatidae
亜科:リーシュマニア亜科 Leishmaniinae
:リーシュマニア Leishmania

学名
Leishmania
Ross1903[1]
タイプ種
L. donovani
(Laveran et Mesnil1903)
亜属


Leishmania

Viannia

Sauroleishmania

Mundina

リーシュマニア (Leishmania) は、トリパノソーマ科に属する原生生物で、脊椎動物細胞内に寄生してリーシュマニア症を引き起こす。

名はイギリス陸軍軍医のウィリアム・リーシュマン (William Leishman, 1865?1926) に因む。

この原虫サシチョウバエ類によって媒介されるが、特に旧世界では Phlebotomus 属、新世界では Lutzomyia 属のものが知られている。主要な宿主は哺乳動物であり、ヒトのほかにげっ歯類イヌなどにおいて感染の報告が多くなされている。
生活環リーシュマニアの生活環

リーシュマニアは2つの形態学的なステージを持っている:
前鞭毛型 (promastigote)
媒介昆虫内。鞭毛を持つ。
無鞭毛型 (amastigote)
哺乳動物細胞内。鞭毛がない。

サシチョウバエの雌に刺されると、
特に発育終末前鞭毛型 (metacyclic promastigote) と呼ばれるリーシュマニアが体内に侵入する。

刺傷周辺の組織でマクロファージに貪食され、

その中で無鞭毛型に変態する。

無鞭毛型は細胞内で増殖し、種によって異なる組織に病変を生じ、これによって症状の差が現れる。

サシチョウバエは吸血の際に無鞭毛型に感染したマクロファージを取り込み、

これを消化することで感染する。

サシチョウバエの中腸で前鞭毛型に分化し(7)、

増殖した後に発育終末前鞭毛型に分化して口吻へ移動する。

起源

リーシュマニアの起源ははっきりわかっていない[2][3]。ある説によれば、アフリカ起源でアメリカに伝わり、さらに約1500万年前に陸地化していたベーリング海峡を渡って旧世界に渡ったとされる。しかし旧北区起源だとする説もある[4]。原虫の伝播には媒介昆虫や保有宿主の伝播やそれに引き続く適応が伴っているはずである。もっと新しい伝播として、ヨーロッパ各国による新世界の植民地化に伴い、地中海沿岸の L. infantum がラテンアメリカに渡って L. chagasi と呼ばれるようになったケースが判っている。
分類

リーシュマニア属の原虫は50種あまりが知られている。もともとサシチョウバエ体内での寄生部位によって3つの亜属に分類していたが、分子系統解析の結果からさらに1亜属を加えて4亜属に分類している。[5][6]
Leishmania 亜属

Leishmania 亜属(subgenus Leishmania Ross1903)は、サシチョウバエの前腸・中腸(幽門より前)で発達する。旧世界で放散した生物群だと考えられる。

donovani コンプレックス - 主に内臓リーシュマニア症を引き起こす病原体で、以下の2種に整理されている。

ドノバンリーシュマニア L. (L.) donovani (Laveran et Mesnil1903) Ross1903 - 東アフリカ・中東・インドに分布している。L. (L.) archibaldi はシノニム。

幼児リーシュマニア L. (L.) infantum Nicolle, 1909 - 地中海沿岸・中南米に分布している。皮膚型の症状を示す場合もある。L. chagasi はシノニム。


tropica コンプレックス - 旧世界における皮膚リーシュマニア症の病原体。

熱帯リーシュマニア L. (L.) tropica (Wright, 1903)

大形リーシュマニア L. (L.) major Yakimoff, 1915

エチオピアリーシュマニア L. (L.) aethiopica Bray et al., 1973


mexicana コンプレックス - 中米における皮膚リーシュマニア症の病原体。

メキシコリーシュマニア L. (L.) mexicana Biagi, 1953 - L. pifanoi はシノニム。

アマゾンリーシュマニア L. (L.) amazonensis Lainson et Shaw1972 - L. garnhami はシノニム。

L. (L.) aristidesi Lainson et Shaw, 1979

ベネズエラリーシュマニア L. (L.) venezuelensis Bonfante-Garrido, 1980


その他

L. (L.) gerbilli Wang et al., 1964

L. (L.) arabica Peters et al., 1986

L. (L.) killicki Rioux et al., 1986

L. (L.) turanica Strelkova et al., 1990

L. (L.) forattinii Yoshida et al., 1993

L. (L.) waltoni Shaw et al., 2015


Viannia 亜属

Viannia 亜属(subgenus Viannia Lainson et Shaw1987)は、幽門前後で発達する(後腸に寄生する時期がある)ことにより分けられた。新世界で放散した生物群だと考えられる。主に皮膚リーシュマニア症を引き起こす病原体で、粘膜皮膚型とよばれる重篤な症状を示すことが多い。

ブラジルリーシュマニア L. (V.) braziliensis Vianna, 1911

ペルーリーシュマニア L. (V.) peruviana Velez, 1913

ガイアナリーシュマニア L. (V.) guyanensis Floch, 1954

パナマリーシュマニア L. (V.) panamensis Lainson et Shaw1972

L. (V.) lainsoni Silveira et al., 1987

L. (V.) shawi Lainson et al., 1989

L. (V.) naiffi Lainson et Shaw, 1989

L. (V.) lindenbergi Silveira et al., 2002

L. (V.) utingensis Braga et al., 2003

Sauroleishmania 亜属

Sauroleishmania 亜属(subgenus Sauroleishmania Saf'janova, 1982)は爬虫類に寄生し、サシチョウバエ体内では後腸(幽門より後)で発達するもの。爬虫類に寄生することから別属に分けられたが、現在ではリーシュマニア属の亜属として扱うことが多い。

L. (S.) tarentolae Wenyon, 1921

L. (S.) gymnodactyli Khodukin et Sofiev, 1940

L. (S.) adleri Heisch, 1958

L. (S.) hoogstraali McMillan, 1965

L. (S.) guliki Saf'janova, 1982

Mundina 亜属

Mundina 亜属(subgenus Mundina Shaw, Camargo, and Teixeira, 2016)上記3亜属のすぐ外側の系統に属する生物群のうち、詳細な解析でLeishmania属に残されたもの。


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