リンネ式階層分類体系(リンネしきかいそうぶんるいたいけい、英: Linnaean hierachial classification system)は、カール・フォン・リンネ(Carl von Linne、1707年?1778年)により構築された分類体系をもとにした、今日広く用いられている分類体系を指す語である[1][2]。リンネが1753年に著したSpecies Plantarum『植物種誌』[3][4][注釈 1]が今日の植物命名法の基準となり、4236種の動物を記した1758年のSystema Naturae『自然の体系』の第10版(英語版)が今日の動物命名法の基準となっている[1][5]。リンネ式階層分類[6]、リンネ体系 (Linnaean taxonomy) とも[1]。本項では、現在用いられている階層的な分類について触れ、リンネが実際に用いた分類体系を示す。
リンネ式階層分類におけるタクソンの階層位置のことを「階級(英: rank)」といい[6]、ある階級を与えられた分類群の集合のことを「カテゴリー(英: category)」と呼ぶ[7]。 生物ドメイン界(かい)門(もん)綱(こう)目(もく)科(か)属(ぞく)種(しゅ) 自然の多様性を科学として理解するために重要な貢献をしたのが自然物の体系化である[8]。その最初の試みとして挙げられるのがリンネが1735年に著したSystema Naturae『自然の体系』とされる[8]。自然の多様性に関連した体系化はリンネが最初であったわけではないが、リンネの著作をきっかけに体系化の問題が近代的な学問である分類学として扱われるようになったと言える[8][9]。リンネは生物を階層的に分類する仕組みを採用し[10]、自然研究の歴史における「体系的な分類学者 systematist」であるとされる[11]。リンネは体系だった統合精神を有しており[11]、あらゆる自然物の類似性を相対的に評価することを通じて分類・組織化することが体系化であると考えた[8]。またリンネは体系化を植物学における「アリアドネの糸」に喩えた[2]。植物についてのシノプシス化(synopsis
概要
リンネは自然物の理解に原理を定め、定義化を推進した[2]。そのもっとも重要な概念が「種 species」[注釈 2]を基本とした分類階級である[2]。リンネは、自然物を鉱物、植物、動物に区分し、それぞれを鉱物界、植物界、動物界とし[2]、この3界に精通した[15]。このうちリンネが独自に研究を行ったのは植物である[2][16]。
リンネは1753年、著作『植物種誌』において植物界を「綱」・「目」・「属」・「種(および変種)」の4つの階級を用いて組織化した[2]。そして体系分類とは、最小階級であるどの変種も種も、属として、目として、そして綱としての何れの位置も与えられることであるとした[2]。なお、リンネの分類体系ではこのうち「属」を基礎として体系化した[2]。種は属に分類されるものであり、体系の議論では属を単位とした[17]。この認識はリンネ以前から続くもので、リンネ以前の多名法において種名は属名とそれに続く複数の形容語の羅列により構成されるように、従属の意識が強かった[17]。二名法もこれを踏襲し、種名を「属名 + 種形容語」で表している[17]。
現在では、上から界(kingdom)・門 (phylum, division[注釈 3])・綱 (class)・目 (order)・科 (family)・属 (genus)・種 (species) といった7つの基本的な分類階級(植物ではこれを一次ランクと呼ぶ[14])を基本とした階層的な分類がなされる[10][20][6]。