リング_(格闘技)
[Wikipedia|▼Menu]
ボクシングのリング(青コーナー側)

格闘技におけるリング(: ring)とは、ボクシングなどで試合場として使用される、ロープで囲まれた場所のこと。通常、試合で用いられるものは正方形で、1メートルほどの高さの架台にキャンバスマットを張ったものを床面とし、四隅に鉄柱のコーナーポストを設置して3-4本のロープで周囲を取り囲んでいる。

試合中、原則的には対戦する選手メインレフェリー以外は、リング内に立ち入ることが許されない。また、レスリングサンボで使用する試合場もリングと呼ぶことがある。こちらはロープがなく、円形である。
ボクシングのリングプロの試合会場。世界戦等の注目度の高い試合では、こうしたスクリーンのついた規模の大きい会場が使われることがある。

古代のボクシングは主にコロシアムなどで行われ、ロープで囲まれたリングは使用されなかった。時代が下って近代に入ると、ボクシングは見世物や賭けの対象として広場などで行われ、相撲土俵の基となった「人方屋」[1]と同様に、観客が選手を囲むように輪になって観戦したのが、リングの起源でありまた語源ともされている[2]。ジャック・ブロートン(Jack Broughton)が初の7章のルールブック「ブロートン・コード」(Broughton’s Rule)を、1743年発表した。その中に、リング(直径25フィートの円形、硬い土の上)について決められていた。やがて地面に直接4本のを立ててロープを張るようになったが、形は四角くなってもこれをそのままリングと呼び習わした。1865年成立の「クインズベリー・ルール」ではリングの1辺が24フィート(7メートル32センチ)の四角形と規定された。

1912年の英国では円形のリングが使われていた。米国で円形リングが最初に登場したのは1944年5月26日、サンフランシスコの造船所で、ロープにあたる部分はアルミ管で作られ、ベルベットの厚地で覆われており、フレッド・アポストリエキシビションマッチを行った[3]

現代では、主に製の柱4本の間に4本のロープを張り、鉄骨製の土台の上に丈夫な板を並べ、その上にクッションを敷いてキャンバスで覆い、リングとしている。形は正方形でなくてはならない。2005年現在のボクシングルールでは、ロープの内側のサイズが一辺18から24フィート(5.47から7.31メートル)の範囲内で、床面の高さは4フィート(1.22メートル)以内と定められている。サイズについての規定が曖昧であるため、特にアウトボクサーのような片方の選手に不利なサイズのリングが使用され物議を醸すことがある。ロープの太さは1インチ(2.54センチメートル)で4本を用い、最下段がフロアから18インチ(0.46メートル)、最上段が52インチ(1.32メートル)となっている。ロープの本数について以前は3本であったが、選手が落下して死傷するなどの事故を防止するため、4本に変更された。ロープを固定する金具(ターンバックル)が露出していると危険なため、リングの角にはコーナーマットと呼ばれるパッド(棒状や個別の物)を使用。キャンバスについては、厚さ2.5インチ(約6.35センチ)以上のフェルト(圧縮材)もしくは畳、または同じ程度の柔らかい下敷を置くと定められている。また、リング上でロープの外側に当たる縁の部分を特にエプロンと呼称し、幅は2フィート(0.61メートル)と定められている。

通例はランキング上位の選手が位置する角を赤コーナー、その対角にある下位の選手が位置する角を青コーナーとし、残る角は中立のニュートラルコーナーと称する。リングの周りには階段が3つ設置され、赤コーナーには赤い階段。青コーナーには青の階段。そしてニュートラルコーナー2箇所のどちらか一方に白い階段がある。赤青の階段は選手やセコンド用、白い階段はレフェリーと医者用である。
プロレスのリングプロレス会場の風景(ベルリンで開催されたWWE Wrestle Mania Revenge Tour)DDTプロレスリングで試合用に使用しているリングのクッション材

プロレスにおいては1870年代にジム・オーエンズ(Jim Owens)がキャンバス・マットとした。1901年にサンフラシンスコでプロモーターが1辺18フィート(5.48m)四方のキャンバスマットを考案した。他の地域は1930年代に採用した。ボクシングの前座として興行が行われていたことから、ボクシング同様のリングが使用されている。しかしながらプロレスのリングにおいては、ロープの本数は現在でも3本が主流である。プロレスではタッグマッチや場外乱闘があるために、選手が試合中もリングを出入りすることが頻繁にあり、補助無しで出入りしやすい方がむしろ好ましいことと、ジャイアント馬場の「16文キック」に代表されるようなロープを利用した技が多数あり、ロープ本数が増えると間隔が狭くなって使いにくくなる技が存在するためである。例えば、ロープの間を抜けて場外の選手に飛び込み頭突きをする「トペ・スイシーダ」や、身体を水平にしてロープの間をくるりと回転しながらロープ際の選手にキックを放つ「619(シックス・ワン・ナイン)」等がその典型例である。

日本ではリングロープとして、ワイヤーロープにゴムのカバーをかぶせたものを使用しているが、海外では木綿などのロープを使用している場合も多い。

デスマッチの試合形式によってはロープを外したり、ロープの代わりに有刺鉄線を使用したりする場合、ロープに蛍光灯輪ゴムで括り付ける場合もある。事前にリングの大きさやロープの張りを良く確認しておかないと、試合中にアクシデントが起きるおそれが大きい。

日本のプロレスのリングは一辺6.0から6.4メートルのサイズが主流となっており、一辺5.5メートル前後が主流の欧米より若干大きいものが使われている。ただしDRAGON GATEのように、会場のサイズによってリングの大きさを変える団体も存在する。女子団体では、一辺5.5メートルのリングが主に使用されている。道場やスポーツバーなどを兼ねた常設会場に設置されているリングについては、もっと小さい場合もある。

ただし、アイスリボンでは道場兼常設会場ができる以前、市ヶ谷アイスボックスなどでの興行においてはリングの代わりにユニエバーの青いマットが使用されていた。当然ロープはなく、コーナーポストも鉄柱の替わりに脚立が使われた。このほか、埼玉プロレス阿佐ヶ谷ロフトの阿佐ヶ谷プロレス、タイを拠点とする我闘雲舞など、資金面や会場サイズなどの都合でリングを使用しない興行もある。また、WWEやDRAGON GATEでは試合中リングが崩壊するアクシデントに見舞われ、後続の試合を残されたマットのみで行ったこともあった。DDTプロレスリングでは街角や野外でリングはおろかマットも使用しない興行も行われている。

団体によって大きく異なるが、床は木の板(4?5センチメートルの厚み)で、その上にゴムシート(2センチメートルの厚み)、さらにその上にフェルト(2センチメートルの厚み)などを敷き最後にキャンバスを敷いている。新日本プロレスでは、2007年よりスポンジを追加したことが田口隆祐選手により公表されている[4]。一部インディー系団体の場合、キャンバスの下に体操用のマットを敷いてこれらの代用としている場合もある。さらに土台の骨組みをサスペンション構造とし、スプリングを利かせて反発を大きくしている団体もある。これらの組み合わせによって、豪快な投げ技で大怪我をしないようにしている。アメリカのROHでは、まるでトランポリンのようにリングの床面が振動で上下する。逆にヨーロッパやメキシコでは、サスペンション構造になっていないことが多い上に、クッションも薄いとされる。異種格闘技戦など特殊な事情がある時には板の上に直接キャンバスを貼ることがあり、このような硬いマットでは投げ技に対して受身を充分にとらないと非常に危険である。

リングを保有しない団体のために、リングの貸出および設営に関する業務を請け負う、「リング屋」と呼ばれる企業がある。
変形リングアメリカのプロレス団体TNAで使用される六角形リング

通常の四角いリングの他に、六角形のリングが古くからメキシコで使われている。日本国内の興行で使用された例としては、2000年から2002年にかけて、闘龍門2000プロジェクト(T2P)の興行で使用されたものがある。六角形である以外は通常のプロレス用リングと特に変わる点はないが、その形状ゆえに3ウェイ戦に適しているという利点もある。2006年の時点では、メキシコのルチャリブレ団体AAAアメリカインパクト・レスリングがビッグマッチで六角形リングを使用している。また、異種格闘技戦でリングロープを撤去し、リングの周囲に継ぎ足しをして円形とした例も存在する。

全日本女子プロレスでは、「ツインリング」と呼ばれる二つのリングを並べてバトルロイヤルや同時シングルマッチを組み込んだ興行もあった。大日本プロレスでもかつての川崎市体育館など規制が厳しい会場での興行でツインリングデスマッチ(または離して設置するダブルリング)を行う場合がある。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:23 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef