リモコン
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リモコンは、リモートコントロール (: remote control) の略である。具体的な意味として次のとおり。1. 遠隔操作(えんかくそうさ)のこと。機器を離れた場所から操作する技術のこと[1](遠隔制御とも)。2. 上記の遠隔操作を行うための小型装置のこと。たいていは家電製品の遠隔操作をするためのそれを指している。家電メーカーもこの装置の事をリモコンと称して販売している。当ウィキペディアではなぜか【遠隔操作】が別に立てられたので、業務用装置のリモートコントロールはそちらで説明することにして当記事では家庭内の俗語が指しているものを中心に説明する。リモートコントロール(遠隔操作)の方式についてもそれなりの量を割いて説明している。なお、無線で模型類を遠隔操作することに関しては【ラジコン】という記事が別に立てられているので、本記事では説明しない。
概要リモコンを実現する装置のひと揃い。(上)リモコンの指令を受信し、その指令に応じた動作をする装置。(下)リモコンの指令を送信する小型装置。
呼び方

日本の家庭内で「リモコン」と略されているのは、リモートコントロール(遠隔操作)のことで、特に家電製品のそれであり、技術に詳しくない人が意識しているのは遠隔操作するための指令を送るための小型装置のことである。(特に知識の無い人は指令を送る小型装置のことばかり気にしているが、技術のことを意識している人は、リモートコントロールのしくみ全体を意識して呼んでおり、伝送方式や受信側の動作原理も強く意識する。)

日本語の俗語では遠隔操作(リモートコントロール)の略語も「リモコン」であるし、それの指令を送る小型装置のことも「リモコン」である。ソニーでは指令を送る小型装置は「リモートコマンダー」(remote commander)という。[2]ソニー製のリモートコマンダーを表す表示

無論、日本に限らず世界の家庭で使われており、英語圏では近年、remote control(s)と呼んでいる。アメリカでは1970年代などゼニスエレクトロニクスの装置が売れていたころは「(スペース)コマンダー」と呼んでいた。

「リモコン」という略語は和製英語であり、英語としては通じない。英語ではremote controlといい、「遠隔操作」と「遠隔操作機器」の両方の意味で用いられる。“remote controller”も「遠隔操作機器」の意味で用いられるが、“remote control”のほうがはるかによく使われる。
原理など

リモートコントロールが成立するには次の装置が必要である。

指令を受け取り、指令に応じた動作をする装置

指令を送る装置

どちらも欠かせない。

方式としては基本的には次のようなものがある。

赤外線方式(赤外線リモコン。IRリモコン) -- 主流。エアコンやAV機器など広く使われている。

無線方式(無線リモコン)

有線方式(有線リモコン) -- 携帯音楽プレーヤーなどで使われている

赤外線方式は指向性があり隣室や隣家の装置の誤作動を引き起こさないというメリットがあり、無線方式は電波が壁を通過してしまい隣室や隣家の装置の誤作動を引き起こすことがあるというデメリットがある。

家庭内の機器でリモートコントロール機能が搭載されることがあるのは次のようなものである。

AV機器

テレビ受像機

HDDレコーダーBDレコーダー

携帯音楽プレーヤー

コンポーネントステレオ

ラジカセ


カメラ

エアコン扇風機

照明器具

ゲーム機PS3PS4PS5、任天堂Wiiなど)

玩具

ロボット掃除機

自動車(のドアのロックやエンジン始動など)

なお2014年以降はAmazon EchoAmazon Alexa)やGoogle NestGoogle アシスタント)などのスマートスピーカーが販売されており、「アレクサ」や「OK、グーグル」などと呼びかけることでIoT対応の機器をリモートコントロールすることも可能になっており、インターネット経由でも作動し、たとえば数千キロメートル離れたところから自宅のIoT対応機器を操作することも可能である。またスマートフォンをIoT対応機器に指令を送る装置としても使える。
歴史
草創期Zenith Space Commander 600テレビの超音波リモコンの受信側の回路(Nordmende社のもの)

最も初期のリモコンは、有線で操作を行うものであった。1955年アメリカ合衆国の音響機器メーカーであるゼニス・エレクトロニクス社のユージン・ポーリーによって世界初の無線リモコンである「フラッシュマティック」リモコンが発明されたが、可視光を使っていたため太陽光で誤動作する欠点を有していたので製品化には難があった。1956年には同じくゼニス社の研究開発部門にいたロバート・アドラーによって超音波方式のテレビ・リモコン「スペース・コマンド」が製品として開発され、これはゼニス社の看板商品ともなった。→ゼニスエレクトロニクス#リモコンも参照。

日本での家庭用のリモコンとしては、まずは昭和30年代にテレビ用に有線式のものが実用化された[3]。1971年には三洋電機が(アメリカのゼニスエレクトロニクス同様に超音波式で、だが随分と年月を経てから)超音波式リモコン(愛称「ズバコン」)付きのテレビを発売し[4]。三洋のリモコンは、テレビ本体の回転式チャンネルと同様のインターフェースを有していた。当時のテレビのチャンネル切り替えは回転式つまみで切り替える方式だったので、リモコンもアップ・ダウンボタン(ダイレクト選局ではなかった)と音量調節用のボタンを備える程度の単純なものであった。

超音波式は身近な音(鍵のガシャという音)などに反応して誤作動を起こしやすかったので、1977年に赤外線式リモコンが開発された[5]。これのインタフェースはボタン式であった。1970年代末頃から普及し始め、現在ではこの方式が広く一般的に使われている。
ビデオ装置のリモコンの登場Gコード用リモコン ビデオ・プラス

1975年にソニーからベータマックスビデオテープレコーダーが発売され、翌1976年に日本ビクターからVHSのものが発売され徐々に普及していったわけだが、このビデオテープレコーダーの録画予約操作は複雑だったが、複雑な予約の操作を本体パネルの垂直面に配置されたボタンで行うことは困難であり、番組表を見ながら手元で操作できるリモコンの必要性が高まった。

とりわけ、録画予約を簡易化することが各社の命題となり、1986年にナショナルマックロードでバーコード予約を採用、1991年にナショナルがマックロードでボイス予約を採用した。他にもリモコンに液晶画面を搭載する試みもなされた。1990年代初め頃からはGコード式のリモコンがは各社に採用され、広く普及した。

1980年代初めには着脱式のリモコンもあった。テレビ等の操作部分を取り外すことでリモコンとして使用でき、本体に取り付ければそれ以前の製品と同じ感覚で使用できるものであった。エアコンのリモコン
多様化・多機能化

現在では、テレビ放送の多様化やAV機器の多様化に伴い、リモコンには複数の機器の数多くの操作を行うことが求められている。このため、各社の種々の機能の操作信号をプリセットしたリモコンや学習リモコンが普及している。

また、赤外線通信機能を持つ携帯電話では、テレビなどのリモコン操作ができるものも存在する。携帯端末などの赤外線通信の規格IrDAに準拠した赤外線ポートを利用して、リモコンの信号をエミュレートできるソフトも存在する。

従来、操作する機器本体にそれ専用のリモコンが付属し、他の機器と通信することはなかったため、リモコンから送信される信号は特に互換性を考慮する必要はなく、また、機器本体の機能自体も異なるため、リモコンの各社の仕様はまちまちであった。プリセット・リモコンも、学習リモコンも、基本的にはメーカーごとに異なる個々の信号を記憶して操作を行うものである。

しかしながら、このようなリモコンでも、適切な機器を選択したり、操作を学習させる手間がかかる。また、DVDを見る際に、テレビとDVDプレーヤーの電源を入れ、DVDを再生するといった複数の機器の操作を連携して行うことは困難である。このため、CEC(英語版)のような機器制御信号と制御プロトコルの規格化も進んでいる。
赤外線リモコンの伝送原理とデータフォーマット赤外線リモコンのコードをオシロスコープで表示したもの
伝送原理

赤外線リモコンは(データフォーマットごとに信号の構成こそ異なるが)、いずれも38?40kHzの搬送波出力のONとOFFを変調し、これを1または0のビットとして伝送する仕組みを用いている[6]。物理的にはピーク値が950nm程度の赤外線を使用し、38 - 40kHz(約25μs)の明滅パルスを搬送波(キャリア)として、それをさらにミリ秒(1/1000秒)という周期で点滅し、この点滅する間隔や長さを変化させることで二進符号化を行っている点で共通している。


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