リプカ・タタール人
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リプカ・タタール人(リプカ・タタールじん、タタール語: Польша-Литва татарлары、ベラルーシ語: беларуск?я татары、ポーランド語: Tatarzy w Polsce、リトアニア語: lenkijos-lietuvos totoriai)は、14世紀初頭にリトアニア大公国に移住してきたタタールを起源とする民族集団
概要「タタール兵との小競り合い」マクスィミリアン・ギェリムスキ画、1867年

最初に移住してきたのは、シャーマニズム信仰を保持するために非キリスト教徒のリトアニア人たちの下に避難してきた亡命者であった。14世紀末までに、ムスリムに改宗していたタタール人の第2波がヴィータウタス大公の招聘を受けてリトアニアに移ってきた。タタール人は当初、ヴィリニュストラカイフロドナカウナスの周辺に住んでいたが、後にはリトアニア大公国が参加したポーランド・リトアニア共和国の各地に拡散していった。彼らが主に住みついたのは、現在のベラルーシリトアニアポーランドだった。リトアニアに移住して来た当初から、彼らはリプカ人として知られた。彼らはイスラーム信仰を維持していたにもかかわらず、その大部分がキリスト教国家であるポーランド・リトアニア共和国に忠誠を誓い続けた。グルンヴァルトの戦い以後、リプカ・タタール人の軽騎兵連隊は、リトアニアとポーランドの主要な軍事遠征には常に参加していた。

リプカ・タタール人はスンニ派のイスラームを信仰しており、その先祖はチンギス・ハーンの築いたモンゴル帝国の継承国家であるオルダ・ウルスジョチ・ウルスクリミア・ハン国カザン・ハン国を構成していた人々だった。彼らは初め貴族軍として奉仕していたが、後には工芸、馬、園芸を扱う職人としての技量を発揮し、都市民層に加わった。彼らは長いあいだ文化的な同化を拒み、伝統的な生活様式を維持した。彼らはイスラーム信仰を熱心に保っていたが、長い歴史の中で本来の母語だったテュルク語を失い、その多くがポーランド語を話すようになった。リプカ・タタール人の少数集団は現在もベラルーシリトアニアポーランドウクライナなどに住んでおり、アメリカ合衆国カナダにもリプカ人のコミュニティが存在する。

関連する民族は、ヴォルガ・タタール人クリミア・タタール人
「リプカ」の語源ナポレオン軍に参加し、ポーランド・リトアニア共和国軍の赤と白の軍旗を掲げるリプカ・タタール人騎兵

リプカは古クリミア・タタール語でリトアニアを指す語であった。タタール人の作家S・トゥハン=バラノフスキは、東方系の史料記録に登場している「Lib?a/Lip?a」と発音される言葉が、「小さなセイヨウボダイジュ」を意味するポーランド語の「lipka」と混同されたのではないか、と推察している。これは、あまり呼ばれることのない「ウプカ(?ubka)」というポーランド語形が、19世紀末までにクリミア・タタール語でリプカ人を指す語となっていたとこからも裏付けられる。クリミア・タタール人の言う「Lipka Tatar?ar」は「リトアニアのタタール人」を意味し、その後ポーランド・リトアニア共和国に住むタタール人達の自称となっていった。

ムスリムであることには違いないが、リプカ・タタール人の慣習や宗教実践は600年以上の間ベラルーシ、リトアニア、ポーランド、ウクライナに住んでいたために、多くのキリスト教的要素を受け入れてきた。その一方でモンゴル帝国に属する遊牧民だった時代の習慣と迷信をも残しており、重要な宗教上の祭儀にさいして雄牛を犠牲として屠るのもその一つである。

長い間、リプカ・タタール人の中級・下級貴族はルテニア語、そして後にはその派生語の一つベラルーシ語を母語とした。ただし、彼らは1930年代までベラルーシ語アラビア文字で表記していた。


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