リゾート21
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伊豆急行2100系電車
伊豆急行2100系(R-2編成)
「リゾート21」
基本情報
運用者伊豆急行
製造所東急車輛製造
製造数5編成40両
運用開始1985年7月20日
主要諸元
編成8両
軌間1,067 mm
電気方式直流 1,500 V
主電動機TDK806/5-A
歯車比5.31
制御方式抵抗制御
制動装置発電ブレーキ併用電磁直通空気ブレーキ抑速ブレーキ
第29回(1986年ブルーリボン賞受賞車両
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伊豆急行2100系電車(いずきゅうこう2100けいでんしゃ)は、伊豆急行が保有する電車。「リゾート21」の愛称がある。1985年(昭和60年)7月20日に営業運転を開始した。
概要

1970年代以降、利用客が減少傾向にあった伊豆急行線の活性化を目的として開発された。当初計画では100系の機器流用車である1000系第3編成を東急車輛製造に発注していたが、方針を転換し、社内全体での検討により本形式が開発された。

先頭車に展望席を設置し、海側の景色を視認しやすくする目的で座席配列が独特になっているなど、普通列車用ではあるが観光客の利用を見込んだ豪華な設備が売りとなっており、その導入用途から「各駅停車のスーパーカー」という通称を持つ[1]

画期的な内外装が利用客から好評を博し、8両編成5本の計40両が導入された。また、伊豆急行線に乗り入れる特急「踊り子」に、リゾート輸送に特化した専用車両(251系)を導入するきっかけになったとも言われる[2]

第29回(1986年)鉄道友の会ブルーリボン賞受賞。
構造
車体

車両の海側と山側でデザインが異なり、側窓は海側は展望を考慮した大型の連続窓、山側は当時日本の鉄道車両ではほとんど採用例のなかったベクワラットタイプ(中折れひんじ式)となった。塗色も当初メーカーから提案されていた帯を巻くカラーリングは廃案となり、左右非対称のデザインを強調した前面で海側の赤帯と山側の青帯が斜めに入る塗装となっている。

1990年(平成2年)に落成したR-4編成は「リゾート21EX」となり、この編成から横3列座席のグリーン車「ロイヤルボックス」(サロ2180形)を落成当初から連結し、好評だったことから1991年(平成3年)にR-1 - R-3編成にも内装に小変更を加えて「ロイヤルボックス」が増結された。

1993年(平成5年)に落成した最終編成のR-5編成については、車体と塗装を車体側面で斜めに赤帯と青帯が交互に入るものに変更し、リゾートシリーズに+αという意味で「アルファ・リゾート21」の愛称とした。

R-1 - R-4編成では新製時から前面に字幕式の行先表示器が設置されている。R-5編成は落成当初設置されていなかったが、2007年(平成19年)にLED式のものが設置された。表示は特急「リゾート踊り子」の東京行きの場合「特急 東京」と「リゾート踊り子」を交互に表示する。なお、その際に屋根部分は青色に塗装された。側面に行先表示器は設置されていないが、特急運用時は各車両に行先標が掲出され、前面にはR-4までの編成では台形状のヘッドマークが掲出される。R-5編成は列車名も行先表示器に表示するためヘッドマークは掲出されない。

普通車の客用ドアはR-4編成までは引き戸であったが、R-5編成ではプラグドアに変更されドアチャイムも設置された。「ロイヤルボックス」は全車両4枚折り戸である。

「アルファ・リゾート21」(R-5編成)下田方

「アルファ・リゾート21」(R-5編成)東京方

「伊豆フラワートレイン」ラッピング車 R-4編成

R-4編成の特急「リゾート踊り子号」、ヘッドマークが掲出されている。

LED式行先表示器が設置される前の「アルファ・リゾート21」

「アルファ・リゾート21」サロ2191「ロイヤルボックス」

車内

普通車は、海側に窓向きバケット型ロングシート、山側は2人がけボックス席が並んでいるのが基本である。海側車端部にはグループ客の利用を想定した4人がけボックス席がある。ただしR-5編成の一部の車両は全席4人がけボックスシートであり、それ以外の車両も海側のシートにはボックスシートと同タイプの2人掛け座席を窓向きに並べて配置していた。いずれも固定式であり、回転やリクライニング機構は装備されていない。両先頭車には階段状になった展望席があり、運転士の頭越しに前面展望を楽しむことができる[注釈 1]

「ロイヤルボックス」では寝台車のようなハイルーフを採用し、トンネルに入ると特殊塗装とイルミネーションによる演出で天井が星空になる工夫がなされている。座席は海側に1人がけリクライニングシート、山側に2人がけリクライニングシートが設置されている。1人がけシートは回転させる際に45°ずつの固定が可能で、たとえば海側にシートを向けるということも可能である。普通車との間には仕切り扉が設けられており、営業運転中は客室内の通り抜けができないようになっている。このため、途中から「ロイヤルボックス」が増結されたR-1・2・3編成では普通車のトイレが1箇所しかないにもかかわらず「ロイヤルボックス」により編成が分断されるため、当該編成「ロイヤルボックス」では熱海よりに普通車乗客向けのトイレを備えていた。R-5編成では「ロイヤルボックス」の特殊照明が星空から海底に変更された。なお、2003年4月以降は普通列車としての運用時、「ロイヤルボックス」は通常連結されていない(後述)。

この他R-3・4・5編成では車内案内表示器が各車両の車端部(展望席は運転席背後のみ)に設置されている。特急運用時に使用されるが、かつては普通列車運用時にも上段に停車駅案内、下段に観光案内を表示していた。R-5編成では海抜表示も行われていた。またR-5編成は喫煙室を設置していたが、全面禁煙化にともない使用停止となった。

トイレは8両編成の3・5・7号車、7両編成の3・6号車(R-3編成は3号車のみ)に設置され、汚物処理装置はカセット式が採用されている。各編成デッキには天井に小窓が設置されている。

普通車車内(更新前)

普通車車内(Izukyu KINME Train)

展望室(R-3編成)

「アルファ・リゾート21」展望室

「アルファ・リゾート21」普通車の車内(オールボックスシート車)

「ロイヤルボックス」車内

「ロイヤルボックス」車内の星空天井

機器類

R-1・2編成は一部の制御装置や主電動機を100系から流用した。1988年(昭和63年)登場のR-3編成以降は足回りを含め完全な新製車両である。制御方式は全編成とも抵抗制御である。ブレーキシステムは発電ブレーキ併用電磁直通空気ブレーキ (HSC-D) であり、合わせて抑速ブレーキも装備する。主電動機はTDK806/5-A、歯車比は5.31で100系よりも高速向きに設定された。

東海道本線・伊東線乗り入れ用の保安装置としてATS-PをR-4・R-5編成は新製当時から装備しており、R-1 - R-3編成は伊東線へのATS-P導入時に装備した。(200系電車廃車発生品から流用)R-4編成からは集電装置(パンタグラフ)を菱形から下枠交差式に変更し、前面を大きな一枚窓にするなどの仕様変更点がある。

運転台は全編成とも主幹制御器とセルフラップ式ブレーキ弁が個別の2ハンドル式である。主幹制御器はR-4編成までは縦軸タイプであったが、R-5編成では横軸タイプが採用された。速度計はR-3編成まではアナログ式、R-4・R-5編成はデジタル式である。
塗装

R-1編成は2004年(平成16年)には下田開港150周年を記念して黒船を模した塗装に変更され、車内で下田開港当時の資料を展示した「黒船電車」としてリニューアルされた。2006年のR-1編成運転終了を前に、後継車両としてR-4編成が2代目「黒船電車」として運用されている。

R-3編成は2008年(平成20年)10月に全般検査を実施し、窓枠部を車体色と同一塗色に変更・屋根塗装の変更・客室内自動扉の動作検出方式をマットスイッチ式からセンサー式に変更・床材交換などの更新が行われた。長らくR-3編成が唯一のオリジナルカラーの車両として運行していたが、2011年(平成23年)8月18日にR-3編成による「リゾート21オリジナルカラーさよなら運転」を実施、R-1編成・R-2編成のさよなら運転等と同様に伊東駅出発後に記念乗車証が配布された。

リニューアル後の車体カラーは100系のカラーであるハワイアンブルーに変更され、「リゾートドルフィン号」という愛称が付けられた。


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