リシン
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この項目では、アミノ酸のリシン(lysine)について説明しています。蛋白質のリシン(ricin)については「リシン (毒物)」を、砂壁状の吹付材については「化粧しっくい」をご覧ください。

リシン

IUPAC名

Lysine
別称2,6-diaminohexanoic acid
識別情報
CAS登録番号70-54-2, 56-87-1 L, 923-27-3 D
PubChem866
ChemSpider843 
5747 L
KEGGC16440 
C00047(L体)
ChEMBLCHEMBL28328 
IUPHAR/BPS724
SMILES

C(CCN)CC(C(=O)O)N

InChI

InChI=1S/C6H14N2O2/c7-4-2-1-3-5(8)6(9)10/h5H,1-4,7-8H2,(H,9,10) Key: KDXKERNSBIXSRK-UHFFFAOYSA-N 

InChI=1/C6H14N2O2/c7-4-2-1-3-5(8)6(9)10/h5H,1-4,7-8H2,(H,9,10)Key: KDXKERNSBIXSRK-UHFFFAOYAY

特性
化学式C6H14N2O2
モル質量146.19 g mol?1
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

リシン(: lysine)はα-アミノ酸のひとつで側鎖に 4-アミノブチル基を持つ。リジンと表記あるいは音読する場合もある。タンパク質構成アミノ酸で、必須アミノ酸である。略号は Lys あるいは K である。側鎖にアミノ基を持つことから、塩基性アミノ酸に分類される。リシンは、クエン酸回路に取り込まれてエネルギーを生み出すケト原性アミノ酸である。
栄養学

必須アミノ酸であるが、植物性蛋白質における含量が低く、動物性蛋白質摂取量の少ない地域での栄養学上の大きな問題となっている。3大穀物である小麦トウモロコシなど穀類のリシン含有量が少ないので、リシンを豊富に含む副食(乳製品そば粉など)を必要とする[1]サプリメントとしてヘルペスの予防にも利用される。

WHOによるリシンの成人向け一日当たり推奨摂取量は2.1グラムである[2]

穀物中には豊富には含まれないが、豆類には豊富である。肉、魚、乳製品にも多く含まれる。多量のリシンを含む植物には以下のようなものがある。

バッファロー・ゴーアド(Buffalo Gourd, ウリ科の植物)の種 - 10,130?33,000 ppm

クレソン(オランダガラシ) - 1,340?26,800 ppm

ダイズの種 - 24,290?26,560 ppm

イナゴマメの種 - 26,320 ppm

インゲンマメの芽 - 2,390?25,700 ppm

モリンガの芽 - 5,370?25,165 ppm

レンズマメの芽 - 27,120?23,735 ppm

シカクマメの種 - 21,360?23,304 ppm

アカザの種 - 3,540?22,550 ppm

レンズマメの種 - 19,570?22,035 ppm

ルピナスの種 - 19,330?21,585 ppm

キャラウェイの種 - 16,200?20,700 ppm

ホウレンソウ - 1,740?20,664 ppm

生化学

リシンは蛋白質分子に対してメチル化アセチル化による翻訳後修飾を行う。コラーゲンはリシンの誘導体であるヒドロキシリシンを含む。細胞から分泌が行われる際に、小胞体またはゴルジ体におけるリシン残基のO-グリコシル化が特定の蛋白質に印を付けるのに使われる。
代謝

リシンには複数の代謝経路が存在するが、哺乳類では主に肝臓ミトコンドリア内で行われるサッカロピンを中間体とした経路で代謝される[3][4]。この経路は植物、動物、細菌で報告されており、リシン-ケトグルタル酸レダクターゼ/サッカロピンデヒドロゲナーゼ(LKR/SDH)およびα-アミノアジピン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ(AASADH)によって触媒される3つの酵素反応によって、リシンがα-アミノアジピン酸に変換される[5]。α-アミノアジピン酸はその後も代謝されていき、最終的にアセチルCoAアセト酢酸になる。サッカロピンを経由するリシンの分解経路

植物においては前述のサッカロピンを経由する代謝経路の他、カダベリンを経由する経路、ピペコリン酸を経由する経路の3つの代謝経路が報告されている[5]。一部のマメ科の植物はリシン脱炭酸酵素の働きによってリシンからカダベリンを生成し、これをキノリジジンアルカロイドを生合成するための前駆体として用いる[6]。ピペコリン酸を経由する経路では、リシンはAGD2-like defense response protein 1(ALD1)によってα-アミノ基転移を受け、Δ1-piperideine-2-carboxylateを経てピペコリン酸になる[7]。この経路は植物内で微生物病原体の攻撃を受けると活性化され、植物の免疫において中心的な役割を果たす[7]

また、一部の細菌においては、リシンはカダベリンを経由する経路で代謝されることが報告されている[8][9]
生合成

リシンの生合成はアスパラギン酸→β-アスパルチルリン酸→アスパラギン酸セミアルデヒド→ジアミノピメリン酸の順に行われる。カビ類においては、α-ジアミノピメリン酸を経由する。リシンの生合成過程
脚注[脚注の使い方]^ 「リシン【lysine】」『漢方薬・生薬・栄養成分がわかる事典』講談社
^ FAO/WHO/UNU (2007年). “ ⇒PROTEIN AND AMINO ACID REQUIREMENTS IN HUMAN NUTRITION” (PDF). WHO Press. 2009年12月3日閲覧。, page 150
^ “Metabolite of the Weekリジン”. ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社 (2022年12月12日). 2023年11月29日閲覧。
^ Joao Leandro, Sander M Houten (2019-02-04). “Saccharopine, a lysine degradation intermediate, is a mitochondrial toxin”. J Cell Biol. 218 (2). doi:10.1083/jcb.201901033.. 
^ a b Paulo Arruda, Pedro Barreto (2020-03-21). “Lysine Catabolism Through the Saccharopine Pathway: Enzymes and Intermediates Involved in Plant Responses to Abiotic and Biotic Stress”. Front Plant Sci. 11 (587). doi:10.3389/fpls.2020.00587.. 
^ Amy L. Jancewicz, Nicole M. Gibbs, Patrick H. Masson (2016-06-21). “Cadaverine’s Functional Role in Plant Development and Environmental Response”. Front Plant Sci. 7 (870). doi:10.3389/fpls.2016.00870.. 
^ a b Michael Hartmann, Jurgen Zeier (2018-07-23). “l-lysine metabolism to N-hydroxypipecolic acid: an integral immune-activating pathway in plants”. the plant journal 96 (1). doi:10.1111/tpj.14037. 
^ J C Fothergill, J R Guest (1977-03). “Catabolism of L-lysine by Pseudomonas aeruginosa”. J Gen Microbiol. 99 (1). doi:10.1099/00221287-99-1-139.. 
^ Sebastian Knorr, Malte Sinn, Dmitry Galetskiy, Rhys M. Williams, Changhao Wang, Nicolai Muller, Olga Mayans, David Schleheck, Jorg S. Hartig (2018-11-29). “Widespread bacterial lysine degradation proceeding via glutarate and L-2-hydroxyglutarate”. JNature Communications 9 (1). doi:10.1038/s41467-018-07563-6.. 


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