リアリティ番組
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ファッションデザイナーをテーマとするリアリティ番組『プロジェクト・ランウェイ』の出演者、スタッフ(司会のハイディ・クルムティム・ガン、製作者のハーヴェイ・ワインスタインほか)。第67回ピーボディ賞授賞式の午餐会会場にて(2008年

リアリティ番組(リアリティばんぐみ、リアリティショー、Reality television)とは、事前の台本がない、現実に起こっている予測不可能で困難な状況に、よく知られたプロの俳優などではない一般人出演者たち(無名の芸能人なども含む)が直面するありさまを、ドキュメンタリードラマのように楽しめると謳ったテレビ番組のジャンル。視聴者が参加する双方向番組の一種で、1990年代末以降、世界各地のテレビを席巻する人気を博している。多くは「演技台本やらせのない出演者の行動をカメラが追う形式のテレビ番組」であるとしているが、演技・台本・やらせのある「リアリティ風番組」であるケースも含まれる。
概要

90年代末の世界各地での大ヒット以降、従来型の視聴参加型のクイズ番組やバラエティ番組もリアリティ番組を名乗るようになったため、現在は非常に意味が拡散した言葉となっている。視聴者参加型のクイズ番組・トーク番組恋愛バラエティ番組をはじめ、視聴者から選ばれた代表を孤島や旅先に隔離してカメラで監視したり、毎週課題を与え最後の一人になるまで勝ち抜きさせたりするものまで、さまざまな種類のものがある。これらの番組の多くは、固定カメラや隠しカメラ、手持ちカメラなどといったドキュメンタリー番組の撮影手法を用いて出演者に密着し、独特の臨場感を視聴者に与え、撮影対象となる出演者のドラマを「本物らしく」見せる事を売りとしている。

番組の焦点は、参加している一般人同士のメロドラマ的人間関係や恋愛・苦闘であり、視聴者はこれを楽しむだけでなく電話投票などで彼らに対し審判を下すこともある。
起源

その起源は、1948年のアレン・フントによる『キャンディード・カメラ』(en:Candid Camera、『どっきりカメラ』の元祖[1])など、一般人の即興的で意外な反応を楽しむテレビ番組にまでさかのぼる。こうした、練られた脚本や俳優の演技よりも面白い一般人のリアクションに焦点を当てた番組は、1960年代から1980年代にかけてヨーロッパ、日本、アメリカなど世界各地で製作されていた。今日的な愛憎や恋愛を題材にしたリアリティ番組は、PBS1973年に放送された、離婚寸前の核家族に密着した『アメリカン・ファミリー』(An American Family)が最初とされる[1][2]。この番組は、理想的な家庭が離婚へと向かう緊張感、ゲイであることを告白する長男、アメリカ人の家族に対する価値観が変わりゆくさまをとらえて大きな反響を呼び起こした。

一般のテレビドキュメンタリートーク番組にもリアリティ番組的な要素が入るようになった。1960年代から1970年代にかけて、チャック・バリス(Chuck Barris)のプロデュースによる『デート・ゲーム』(The Dating Game)、『新婚ゲーム』(The Newlywed Game)、『ザ・ゴングショー』など、ゲームで勝ち抜くために自分のプライバシーや尊厳も犠牲にする視聴者が登場する視聴者参加ゲーム番組が全米で人気を博した。1989年放送開始の警官密着型番組『コップス(COPS)』は、警官の日常や、逮捕され抵抗する犯人といったシーンが人気を集めたが、これらは一般人である警官や犯人のインパクトの強さも話題となった。またカムコーダやシネマ・ヴェリテ(Cinema verite)的な手法を使って、警官たちの日常シーンや逮捕シーンなどの臨場感を高めていた。1991年放送開始のトーク番組、『ジェリー・スプリンガー・ショー』(The Jerry Springer Show)はレッドネックなど貧困家庭の出演者が司会者ジェリー・スプリンガーや視聴者の前で家族の恥部をさらしケンカを始める様が評判を呼び、視聴者に他人の人生を覗き見る衝撃や快感を与えた。
リアリティ番組のフォーマット

完全に一般人に焦点をあわせたリアリティ番組は1990年代に世界各地で放送開始された。アメリカでは、1992年MTVで、視聴者から募った数人の若者が一軒家で共同生活するさまを隠しカメラで数ヶ月にわたり追った『リアル・ワールド』が放送開始された。オーディションで選ばれた視聴者、限られた場所・限られた期間での生活、時々挿入される参加者へのインタビュー(この生活に対する感想、人間関係や他の参加者に対する感想など)、といったフォーマットは後の世界中のリアリティ番組の基礎となり、1990年代末から2000年代にかけてリアリティ番組が山のように生み出されるきっかけとなった。

こうした番組の中にはイギリスやオランダなどヨーロッパで最初に放送され、その後フォーマットがアメリカを経由して世界に販売されたものも多い。
リアリティ番組の類型

さまざまなリアリティ番組をいくつかの類型にまとめる提案や試みには、以下のようなものがある。

2006年の研究における6類型:ロマンス、犯罪、情報、リアリティ=ドラマ、競争ゲーム、才能
[3]

2007年の研究における5類型:情報娯楽番組(infotainment)、ドキュメントメロドラマ(docusoap)、ライフスタイル番組、ゲーム番組, ライフスタイル実験番組[4]

2009年の研究における8類型:ゲームドキュメンタリー("gamedocs")、デート番組、メイクオーバー番組、ドキュメントメロドラマ、才能コンテスト、法廷番組、リアリティ・シットコム、これらの類型に有名芸能人を出すもの[5]

その他、リアリティ番組を2つのタイプに分ける分類もある。ひとつは一般人などの日常生活に密着し、何の飾りもない本物の生活を記録した(と称する)もの、そして参加者をゲームやコンテストや生活改善など、普段の生活と違う全く新しい環境におくものである。2003年の論文で、エリザベス・クラウスとステファニー・リュッケは前者を「ドキュソープ」(ドキュメントメロドラマ、docusoaps)と呼び、物語的現実(narrative reality)から構成されるとする。後者は「リアリティ・ソープ」(reality soaps)と呼び、遂行的現実(performative reality)から構成されるとする[6]。2014年以来、プライムタイム・エミー賞はリアリティ番組に対してこれと同様の分類を行っている。前者は「構成のないリアリティ番組(Unstructured Reality Program, 入念に構成された一貫したテンプレートやルールなどが存在せず、登場人物の行動により突き動かされるストーリー要素を含むもの[7])」部門、後者は「構成のあるリアリティ番組(Structured Reality Program, 繰り返し使われ構築される番組テンプレートやルールに従うことによって生じるストーリー要素を含むもの[7])」部門であり、そのほかに「リアリティ・コンペティション」部門(Reality-Competition Program, リアリティ番組の中でも「視聴者対抗勝ち抜きゲーム」の要素が強いもの、後に単にコンペティション部門へと改名)を置く。
構成されたリアリティ
変身・メイクオーバー・リノベーション

1996年イギリスで放送された『チェンジング・ルーム』(Changing Rooms)はカップルが互いの部屋を改造するもので、視聴者の容姿をおしゃれに変身(メイクオーバー)させるリアリティ番組や、部屋や建物のリノベーションを行うリアリティ番組のさきがけとなった。2003年から放送された『クィア・アイ』は、それぞれの得意分野を持つ5人のゲイ男性が視聴者の外見だけでなく内面に至るまで改造してゆく人気番組であった。

国内ではリアリティ番組と銘打たれていないものの『B.C.ビューティー・コロシアム』や『大改造!!劇的ビフォーアフター』などがある。

ある研究では、リアリティ番組をより多く見ると答えた実験参加者は、あまり見ないと答えた参加者に比べ、整形手術を受けたいと答える割合が高かったという[8]
特殊な環境への隔離

1997年スウェーデンで放送された『エクスペディション・ロビンソン(ロビンソン遠征隊)』(Expedition Robinson)は視聴者から選ばれたメンバーが孤島サバイバルするという内容で、『リアル・ワールド』が完成させたリアリティ番組のフォーマットに「生き残り」(毎回一人ずつ脱落し、最後に一人が勝ち残る)という要素を追加して人気番組となった。また、後に世界各地にこのフォーマットが販売され『サバイバー』として放送された。

1999年オランダで放送された『ビッグ・ブラザー』は完全に外部から隔離され、すべての場所にカメラとマイクが仕掛けられた家に十数人の男女を3ヶ月入れるというもので、彼らの生活はケンカやセックス、互いの脱落させ合いに至るまですべてが収録される極端なものである。これも世界中にフォーマットが販売され、オランダの制作会社エンデモルはこのヒットをきっかけに世界各国でリアリティ番組を制作する大手企業となった。
スター育成


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