ランドローバー・レンジローバー
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初代 2ドアモデル(ホイールは後年のもの)

レンジローバー(Range Rover)は、、インドタタ自動車の子会社である、イギリスランドローバーが生産している高級オールパーパスフルタイム4WD車であり、ランドローバーブランドのフラッグシップモデルである。
初代 (1970 - 1996年)

ランドローバー・レンジローバー
初代
初代 5ドア(1987年モデル)
初代 5ドア(1988年モデル)
概要
販売期間1970年 - 1996年
ボディ
ボディタイプ3ドアSUV
5ドアSUV
駆動方式4WD
パワートレイン
エンジンローバー製 3528cc V8
ローバー製 3.9L V8
ローバー製 4.2L V8
VMモトリ製 2.4L ターボディーゼル
VMモトリ製 2.5Lターボディーゼル
200Tdi型 2.5L 直4 ターボディーゼル
300Tdi型 2.5L 直4 ターボディーゼル
車両寸法
ホイールベース2,540 mm
2,743 mm(バンデンブラ)
全長4,470 mm
4,648 mm (バンデンブラ)
全幅1,780 mm
全高1,780 mm
車両重量1,723 - 2,150 kg
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1970年、当時ブリティッシュ・レイランド(British Leyland Motor Corporation : 略称BL)の1ブランドであったランドローバーから、フルタイム4WDのオールパーパスヴィークルとして発表された。

BLの技術者、チャールズ・スペンサー・キング(Charles Spencer King、通称Spen King:スペン・キングとも)などが中心となり、ランドローバー以上のオフロード性能を持ち、普段は高級乗用車と変わらぬ快適性を持つことを目標に開発された、まったく新しい概念の革新的コンセプトであった。はじめから海外でのノックダウン生産も考慮して設計が進められ、耐久性、メンテナンス性も考慮されていた。

ラグジュアリーカーエステートカー、パフォーマンスカー、クロスカントリーカーの4つの車の役割を1台の車で可能にする」と謳われた。21世紀に入ると高級車ブランドがハイパフォーマンスな高級クロスオーバーSUVを続々と世に送り出し、一定のカテゴリを形成するようになるが、当時このような車はほとんど見られず、わずかにアメリカのジープ・グランドワゴニアと西ドイツメルセデス・ベンツ・Gクラス1979年)が該当するのみであった。

当初は3ドアモデルのみであったが、後に5ドアモデルが追加された(経緯は後述)。現在では初代モデル全てを、レンジローバー クラシック(Range Rover Classic)と呼ぶようになっている。

丈夫な車ではあるが、特有のリアサスペンションAアームのピボットは、年式に関係なく点検と給脂をこまめに行う必要があり、極度に磨耗する前に交換することが望ましい。エアサスペンションにまつわるトラブルは2代目にも共通のもので、車高調整を諦め、金属スプリングに換えるユーザーも多い。部品は本国では、純正品、社外品共に潤沢に供給されており、価格は初代モデルのものが最も安価である。電装品やベアリングは、日本製(日本車用)で代用できる。

日本では自動車評論家の小林彰太郎、4輪駆動車専門雑誌「CCV」編集長石川雄一らが高く評価するとともに、自らも所有した。
シャーシ、ボディ

虚飾を排してシンプルな設計に徹した初期型のボディは、2枚のドアと上下2分割式の頑丈なテールゲートを持つ。強固な2mm厚ボックスセクションの2本のサイドメンバーと5本のクロスメンバーからなる剛性の高いフレームに、ゴムブッシュを介して鋼板製スケルトンボディを載せている。このボディにアルミ製のドア、フェンダー、ルーフが取り付けられ、車体の軽量化、防錆対策に貢献している。

スペアタイヤを車室内に縦配置するとともに、駆動部品を適切に配置しシャシーフレームおよびボディを適切な形に設計することで、悪路での障害物による損傷を防いでいる。アプローチアングル45°、ランプブレークオーバーアングル150°、デパーチャーアングル33°を確保。ホイールベースは100インチ(2540mm)で、大人5人がゆったりと室内でくつろぐことが可能でありながら、初期型は全長4470mm、全幅1778mm、全高1778mm、車重1700kg台前半と意外とコンパクト、軽量である。
エンジン

GMから製造権を買い取ってローバー・3500に使われていた、シリンダーヘッド、シリンダーブロック共にアルミ製の軽量なV型8気筒OHVの3.5Lローバー・V8エンジンを採用し、発表当時としては優れた静粛性と 155km/hのクルージングを可能にしていた。このトルクフルで頑強なエンジンは、当初、ゼニスストロンバーグキャブレター装備であったが、後には電子制御燃料噴射式となり、排気量も3.9Lから、最終型では4.2Lにまで拡大された。また8気筒ながら、当時のランドローバー(Land Rover (Series/Defender))シリーズII Aに使われていた鋳鉄ブロックの4気筒よりも軽いことにより前後の重量配分が50:50となっており、結果としてオンロードでの旋回性能やオフロードでの走破性を良好にしている。またエンジンが短いことが前述のように広い車室の獲得にもつながっている。このエンジンは基本設計が古いこともあり、吸気抵抗や各部のフリクションロスが大きく、燃料消費が多いことが難点であった。これは電子制御化された後の改善もわずかであった。

ブリティッシュ・レイランドの整理後、中心的な役割を担ったオースチン・ローバー(Austin Rover)では、主に揮発油税の高率な欧州大陸向けとして、高速ディーゼルエンジンの開発を行っていたが、失敗続きの末、ついに自力開発を断念[要出典]、ディーゼルエンジンメーカーとして実績のある、イタリア、VMモトリ(VM Motori)社製のエンジンを購入することになった。これは、直列4気筒 2.4Lの直噴ターボディーゼルで、1986年に追加され、1989年には2.5Lに拡大された。これらは熱効率に優れた直噴式であることや、燃料の価格差も寄与し、燃費はガソリンモデルの半分ほどと大きく改善した。

自社製ターボディーゼルエンジンを搭載した200TDiがラインアップに加えられたのは、モデル末期の1992年であった。
サスペンション

耐久性とオフロード性能を第一に追い求めたため前後輪ともコイルスプリングによるリジッドアクスル式サスペンションを採用。柔らかく長いコイルばねにより大きなホイールストロークを確保し、良好な乗り心地と卓越した悪路走破性を実現している。フロントはリーディングアームとパナールロッドによる3リンク式サスペンションで、自由な上下動と抗ロール性を両立しており、後のフロントリジッドアクスル4X4(SUV)に大きな影響を与えた。

またリアは重い荷物を積んだときにも車を水平に保つボーゲ(BOGE)製ダンパーを用いた機械式セルフレベリングユニットを組み込んだセンターAアームと、2本のトレーリングアームにより長大なストロークを確保している。これは現在に至っても優れた地形追従性を持ったサスペンションと知られるが、ダンパーや大きな力が加わるAアームのピボットの寿命が短いなどの難点がある。センターAアームは同社の初代ディスカバリーのほか、初代スズキ・エスクードに採用例があるが、2代目レンジローバーを含め、すべて後継車では採用されていない。

タイヤサイズは205R16で、5.64mという最小回転半径と良好な乗り心地を実現している。北米市場からの要求で、1990年からロールを抑えるスタビライザーが装着された。1992年から4駆として世界で初めて英・ダンロップ製のエアサスペンションを採用する。高速走行時には安定のため車高を下げ、不整地走行では地上高を稼ぐために車高を上げ、積載量の多寡による姿勢変化を抑え、ニーリングで乗降を容易にするなど、変化量の大きい車高調整が目的である。
四輪駆動機構

フルタイム式4WD車としてはジェンセン・FFに次いで史上2台目だが、オフロードを前提とした車ではもちろん初である。

使用しているセンターデフは1988年までのマニュアルロック型と、それ以降のビスカスカップリング式差動制限型とに分かれるが、トランスファーに2速の副変速機を持つことは共通である。そのHi / Loのギヤ比が2.7:1と大きく、悪路での極低速走行(クローリング、クロール)を可能にしている。

ベベルギア式センターデフ - 副変速機のHi / Loのどちらのポジションでも、センターデフのフリー / ロックが任意に選択できる(ローレンジでセンターデフをフリーにした場合は、強大なトルクフローが発生する懸念があり、それによる駆動系の破損を防ぐフェイルセーフはなく、ユーザーの自己責任となる)。

ビスカスカップリング式差動制限付きセンターデフ - ABSの働きを妨げないようにするために採用されたもの。


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