ランス・アームストロングのドーピング問題(ランス・アームストロングのドーピングもんだい)では、アメリカ合衆国の元自転車プロロードレース選手ランス・アームストロングの一連のドーピング問題について説明をする。 2001年、グレッグ・レモンは当時ツール・ド・フランスを連覇中であったアームストロングの成功をドーピングの力によるものと示唆し、論争を巻き起こした[1]。「アメリカ人によるツール総合優勝」「生命の危機からの奇跡の復帰」といった共通項を有する先輩が、ツールで活躍を続ける現役選手を批判したことは、世界的に衝撃を与えることになった。 さらに、アームストロングがツール連覇を続けた2004年7月にも、再び「もしもアームストロングがクリーンなら、まれにみる復活劇だ。そしてもしもクリーンではなかったとしたら、史上まれにみる茶番だ」とコメントした[2]。また「ランスにはなんでも秘密にしておける才能があるようだね。どうやってみんなに潔癖さを信じ込ませ続けているのか私には理解不能だ」と『ル・モンド』紙へのコメントで語った[3]。 これに対しアームストロングは反論し、著書においても引用している[4]。 2010年5月、元チームメイトだったフロイド・ランディスの証言によると、2002年のUSポスタル在籍時代に、当時同チーム監督のヨハン・ブリュイネールとアームストロングの手ほどきを受けてドーピングを行ったことがきっかけとなり、その後常習するようになったという。またランディスは、2003年にスペイン・ジローナにあるアームストロングのアパートで血液ドーピングに使用するための採血法をアームストロングに指導され、そのクローゼットにある冷蔵庫にはアームストロングとジョージ・ヒンカピーの血液が保管されていたと主張している[5]。 スポーツ・イラストレイテッドの2011年1月24日号[6]において、フロイド・ランディスとステファン・スチュアートの証言に基づき、アームストロングがヤロスラフ・ポポヴィッチと共謀して、イタリアで長年に亘ってドーピング行為を行っていたとされる5700単語以上からなる文書を入手したことや、アンチドーピングの権威である、ドン・キャトリン博士の調べによると、当人の尿から、テストステロン及びエピテストステロンの異常値が出ていたとする詳細なレポートを入手し公表[7]。この記事に対し、アームストロングは事実無根であると否定[8]。ポポヴィッチも同様に否定した[9]。一方、キャトリンは、同記事についてのコメントを差し控えた[10]。 2011年5月22日、アメリカのCBSテレビのドキュメンタリー番組である60 Minutesが放送され、1999年から2000年まで、当時ランス・アームストロングとUSポスタルでチームメイトだったフランキー・アンドリュー
経緯
グレッグ・レモンとの『論争』
ランディス、ハミルトンらの告発
2012年2月、アメリカ連邦捜査局は、ランディスの訴えによって開始したアームストロングのドーピング疑惑に対する調査を終了すると発表。米国において法的には無罪となることが確定した。調査資料は全米アンチドーピング機関に引き継がれた[13]。 2012年(以下、年が記されていないものについては2012年のことを指す)6月12日、全米アンチドーピング機関(USADA)はアームストロングに対し正式にドーピング違反であるとの判定を下した。ウォールストリートジャーナルはこれについて、「ツール・ド・フランスでの通算7回の総合優勝記録を一部ないしすべてはく奪される可能性がある」と報じた[14]。USADAは、12日にアームストロング宛に15ページに亘る告発状を送付。またワシントン・ポストにも同様の書面が送付され[15]、14日、同紙が内容の概要を公開[16]。USADAによると、アームストロングにはエリスロポエチン(EPO)、輸血(血液ドーピング)、テストステロン、コルチコステロイド及びそのマスキング剤の使用疑惑があり、さらにそれらを他の選手に横流ししていた可能性があるとしている。またUSADAは、当時アームストロングのチーム・マネジャーであったヨハン・ブリュイネールが深く関与している点も告発している[17]。さらに上記に関連して、かつてUCIのバイオロジカルパスポートのパネラーだったマイケル・アシェンデン博士は、UCIがアームストロングのドーピング違反隠蔽に関与していた可能性に含みを持たせる発言を行った[18]。これに対し、1999年から2004年までUSポスタル、2009年及び2010年までアスタナのチームドクターを務めたガルシア・デル・モラルは、USADAのアームストロングに対する告発状を全否定した[19]。 イタリアのガゼッタ・デロ・スポルトによると、イタリアの捜査官が、2006年にアームストロングが、ミケーレ・フェッラーリ
USADAによる告発