ラモトリギン
[Wikipedia|▼Menu]

ラモトリギン

IUPAC命名法による物質名
IUPAC名

6-(2,3-dichlorophenyl)-1,2,4-triazine-3,5-diamine

臨床データ
胎児危険度分類

US: C




法的規制

劇薬処方箋医薬品

投与経路経口投与
薬物動態データ
生物学的利用能98%
代謝肝臓
半減期31-38時間
排泄尿中94% 糞便中2%
識別
CAS番号
84057-84-1
ATCコードN03AX09 (WHO)
PubChemCID: 3878 CID 3878
DrugBankDB00555
KEGGD00354
化学的データ
化学式C9H7Cl2N5
分子量256.091g/mol
テンプレートを表示

ラモトリギン(Lamotrigine)は、抗てんかん薬の一つである[1]。また、双極性障害気分安定薬としても処方される。日本では2008年よりグラクソ・スミスクラインより商品名ラミクタールで販売され、適応は抗てんかん薬として、また双極性障害の気分エピソードの抑制である。

薬機法による劇薬および処方箋医薬品である。副作用として重篤な薬疹による皮膚症状があり[2]、2015年2月には皮膚障害による死亡例を受けて厚生労働省から安全性速報が出された[3](詳細は#副作用を参照)。
医療用途
てんかん

てんかん患者での、部分発作(二次性全般化発作を含む)、強直間代発作、定型欠神発作対する単剤療法

他の抗てんかん薬で十分な効果が認められないてんかん患者に対する他の抗てんかん薬との併用療法

部分発作(二次性全般化発作を含む)、強直間代発作、Lennox-Gastaut症候群における全般発作

英国国立医療技術評価機構(NICE)ガイドラインでは、児童青年および成人のてんかん初回発症について、カルバマゼピンとならび第一選択薬として推奨している[1]
双極性障害

双極性障害における気分エピソードの再発・再燃抑制

海外では、双極性障害に対して一時は第一選択薬であったが、2008年の出版バイアスの調査[4]により、急性のエピソードやラピッド・サイクルに有効性が見られなかった[5]。急性期に対する有効性や安全性は確立されていない[6]

日本での使用上の注意には、双極性障害の急性期の有効性と安全性は確立されていないと記載されている。日本うつ病学会による双極性障害の診療ガイドラインは、スティーブンス・ジョンソン症候群など皮膚症候群に注意し、少量からの漸増の推奨に言及している[7]。うつ病エピソードでは、リチウムクエチアピンオランザピンと同じく「推奨される」に分類され、ラモトリギンには有効と無効の報告があり、無効の報告を解析すると重症では有効であった[8]。維持期では「最も推奨される」リチウムに続いて、いくつかの「推奨される」薬剤の1つである[8]。双極II型障害の維持期では証拠が少なく、薬物療法が考慮されるのは頻回かつ重症のうつ病やI型の家族歴などが考えられケースによる[9]
適用外処方

適応外使用として神経痛に対して処方されることもあるが、英国国立医療技術評価機構 (NICE) は専門医の指導下でなければ行ってはならないと勧告している[10]
作用機序

Na+チャネルを抑制することにより、神経膜を安定させ、グルタミン酸などの興奮性神経伝達物質の遊離を抑え、抗痙攣作用を示すと考えられている。なお、双極性障害に対して効果を示す機序は明らかになっていない。

痙攣動物モデルにおいて抗痙攣作用が示されている。抗痙攣作用はフェニトインジアゼパムに比べ高いとされる。
用法・用量ラミクタール25mg (gsk)ラミクタール100mg (gsk)

グラクソ・スミスクライン株式会社より販売されている。日本では、100mgと25mg、小児用に5mgと2mgが販売されている。

ラモトリギンはグルクロン酸抱合を受け代謝されるため、バルプロ酸ナトリウムなどこの代謝の阻害作用のある医薬品と併用された場合には用量は変わってくる[11]。その他抗てんかん薬との併用により、投薬量、漸増量が異なる。医師の指示の下で服薬する。血中濃度を保つ必要があるため、定期的に服薬する必要がある。

急激な増量を行うと重篤な副作用を起こしやすいとされているため、徐々に増量することが好ましい。
副作用

重篤な副作用として薬疹による皮膚障害があり、皮膚粘膜眼症候群(スティーブンス・ジョンソン症候群)、中毒性表皮壊死症(ライエル症候群)、薬剤性過敏症症候群が起こることがある。
注意喚起

2012年1月には医薬品医療機器総合機構(PMDA)より、用量の多い場合に皮膚障害の副作用が発症しやすくなるため、用量遵守についての注意喚起がなされた[2]。日本での統計では皮膚症状の発生頻度は、服用量を遵守した場合に2.9%、承認された用量より多い場合には10.4%であった[2]
死亡例

バルプロ酸またはフルボキサミン使用例にラモトリギンを追加投与する際、添付文書上は25mg/隔日または25mg/日と定められているが、50mg/日から開始したために、薬剤性過敏症症候群を来し死亡した症例が報告されている[12]

2014年内にラモトリギンを服用していた4人が、重度の皮膚障害を発症した後に死亡したことが判明した。適正量を超えて医療機関から処方された薬を服用したとみられており、皮膚障害が出た後も投薬が続けられていた[13]。「東京女子医大事件」も参照

2015年2月4日には皮膚障害による死亡例を受けて厚生労働省から安全性速報が出され[3]、用量遵守の警告を含むよう添付文書が改定された[3]

2015年4月20日、日本うつ病学会、日本神経精神薬理学会、日本臨床精神神経薬理学会の理事長は連名で声明を行い、医師に対して、ラモトリギンの効果と安全性、特に皮膚症状について患者に説明し同意を得て(インフォームド・コンセント)、用量と投与間隔、併用薬を確認するようお願いしている[11]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:30 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef