ラパマイシン
[Wikipedia|▼Menu]

ラパマイシン

IUPAC命名法による物質名
IUPAC名

(3S,6R,7E,9R,10R,12R,14S,15E,17E,19E,21S,23S,
26R,27R,34aS)-9,10,12,13,14,21,22,23,24,25,26,
27,32,33,34,34a-hexadecahydro-9,27-dihydroxy-3-
[(1R)-2-[(1S,3R,4R)-4-hydroxy-3-methoxycyclohexyl]-
1-methylethyl]-10,21-dimethoxy-6,8,12,14,20,26-
hexamethyl-23,27-epoxy-3H-pyrido[2,1-c][1,4]-
oxaazacyclohentriacontine-1,5,11,28,29
(4H,6H,31H)-pentone

臨床データ
販売名ラパリムス錠, Rapamune
ライセンスEMA:リンク、US FDA:リンク
胎児危険度分類

AU: C

US: C




法的規制

JP: 劇薬、処方箋医薬品

US: ?-only

投与経路経口
薬物動態データ
生物学的利用能14% (oral solution), lower with high-fat meals; 18% (tablet), higher with high-fat meals[1]
血漿タンパク結合92%
代謝肝臓
半減期57?63時間[2]
排泄大部分が糞便
識別
CAS番号
53123-88-9 
ATCコードL04AA10 (WHO) S01XA23 (WHO)
PubChemCID: 5284616
DrugBankDB00877 
ChemSpider10482078 
UNIIW36ZG6FT64 
KEGGD00753  
ChEBICHEBI:9168 
ChEMBLCHEMBL413 
PDB ligand IDRAP (PDBe, RCSB PDB)
別名Rapamycin
化学的データ
化学式C51H79NO13
分子量914.172 g/mol
SMILES

O[C@@H]1CC[C@H](C[C@H]1OC)C[C@@H](C)[C@@H]4CC(=O)[C@H](C)/C=C(\C)[C@@H](O)[C@@H](OC)C(=O)[C@H](C)C[C@H](C)\C=C\C=C\C=C(/C)[C@@H](OC)C[C@@H]2CC[C@@H](C)[C@@](O)(O2)C(=O)C(=O)N3CCCC[C@H]3C(=O)O4

InChI

InChI=1S/C51H79NO13/c1-30-16-12-11-13-17-31(2)42(61-8)28-38-21-19-36(7)51(60,65-38)48(57)49(58)52-23-15-14-18-39(52)50(59)64-43(33(4)26-37-20-22-40(53)44(27-37)62-9)29-41(54)32(3)25-35(6)46(56)47(63-10)45(55)34(5)24-30/h11-13,16-17,25,30,32-34,36-40,42-44,46-47,53,56,60H,14-15,18-24,26-29H2,1-10H3/b13-11+,16-12+,31-17+,35-25+/t30-,32-,33-,34-,36-,37+,38+,39+,40-,42+,43+,44-,46-,47+,51-/m1/s1 

Key:QFJCIRLUMZQUOT-HPLJOQBZSA-N 

物理的データ
水への溶解量0.0026 [3] mg/mL (20 °C)
テンプレートを表示

ラパマイシン(Rapamycin)またはシロリムス(Sirolimus、国際一般名〔INN〕/JAN)は、微生物Streptomyces hygroscopicus(英語版)によって生産されるマクロライド化合物の一つである[4][5]移植臓器拒絶予防のため、リンパ脈管筋腫症の治療のために医学分野で使われている。ヒトにおいて免疫抑制機能を持ち、腎臓移植の拒絶の予防において特に有用である。インターロイキン-2(IL-2)の産生を低下させることによってT細胞およびB細胞の活性化を阻害する。冠動脈ステント(英語版)のコーティング剤としても使われている。

ラパマイシンは1972年にSuren Sehgalらによって、イースター島の土壌から発見された放線菌Streptomyces hygroscopicusから初めて単離され[6][7]、イースター島のポリネシア語名の「ラパ・ヌイ」のラパと、「菌類から生じた抗生物質」を意味する接尾語のマイシンとを組み合わせてラパマイシンと名付けられた[5]。当初は抗真菌薬として開発されていた。しかしながら、mTOR阻害能(英語版)によって強力な免疫抑制作用と抗増殖作用を示すことが発見され、この目的では使用されなくなった。1999年9月にアメリカ食品医薬品局によって認可された。商品名はラパリムス錠1 mg(ノーベルファーマ)。日本国外ではラパミューン(Rapamune)としてファイザー(以前はワイス)から販売されている。
適用

リンパ脈管筋腫症

難治性リンパ管疾患

リンパ管腫(リンパ管奇形)

リンパ管腫症

ゴーハム病

リンパ管拡張症


進行性骨化性線維異形成症(治験中)

ペンドレッド症候群(治験中)

薬効薬理
薬力学「mTOR阻害剤」も参照

似た名称のタクロリムスとは異なり、シロリムスはカルシニューリン阻害剤ではないが、免疫系に対して同様の免疫抑制作用を有する。シロリムスはmTORに作用し、T細胞B細胞の活性化を妨げることによって、IL-2およびその他のサイトカイン受容体依存的シグナル伝達機構を阻害する。タクロリムスとシクロスポリンカルシニューリンを阻害することによってIL-2の分泌を阻害する[8]

シロリムスの作用機序はタクロリムスと同じく、細胞質タンパク質FK結合タンパク質12(FKBP12)への結合である。カルシニューリン(PP2B)を阻害するタクロリムス-FKBP12複合体とは異なり、シロリムス-FKBP12複合体は、mTOR複合体1(mTORC1)に直接結合することによって、mTOR (mechanistic Target Of Rapamycin) 経路を阻害する[8]
薬物動態

シロリムスはCYP3A4酵素によって代謝される。また、P糖タンパク質(P-gp)排出ポンプの基質である[4]消失半減期は57から63時間である[2]

シロリムスの腸から血流への吸収は患者によって大きく異なる。ある患者では同量を投与された他の患者の8倍も吸収量が高いこともある。したがって、患者の状態に対して適切な用量を確かめる必要がある[8]。これは次の投与の前に血液サンプルを採取して決定することができ、トラフ濃度が分かる。しかしながら、シロリムスとタクロリムスについてはトラフ濃度と薬物暴露の間にはよい相関(血中濃度-時間曲線下面積)があるため(シロリムス: r2 = 0.83; タクロリムス: r2 = 0.82)、その薬物動態(PK)プロファイルを知るためには1つの濃度だけを取ればよい。シロリムスとタクロリムスのPKプロファイルは同時投与によって変化しない。タクロリムスの用量修正薬物暴露はシロリムスと相関しているため(r2 = 0.8)、患者は双方について似た生物学的利用能を示す[9][要非一次資料]。
免疫抑制作用

ラパマイシンが、免疫抑制作用においてカルシニューリン阻害剤より優れている点は、腎臓に対しての毒性が低いということである。カルシニューリン阻害剤により長期的に免疫を抑制された患者は、腎機能が低下し、時には慢性腎不全を発症する場合もあるが、ラパマイシンではその心配が少ない。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:36 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef