ラジエーター
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自動車のラジエター
全金属製の横流れ式

ラジエター(: radiator)とは、液体や気体の放熱をする装置である。冷却水潤滑油の冷却に用いられる場合や、温水や蒸気を熱源とした暖房に用いられる場合がある。「ラジエータ」「ラジエーター」という呼称は日本のみであり、発音やスペルから見ても明確に間違った呼称である(日本のラジエター製造企業である日本ラジエーター等の名称はあくまでも登録企業名である)。
概要

ラジエターは熱交換器の一種であり、冷却対象の流体や熱源の流体を内部に流し、周囲の空気や水に熱伝導を利用して放熱する。したがって管を基本構造とし、限られた空間で表面積を大きく獲るために蛇行させたり、複数の細管に分岐させたり、管の外壁に放熱板を設けたりといった手段が用いられる。
冷却自動車の冷却系の例
ウォーターポンプを持たない対流式で、右側がラジエター。

内燃機関やコンピュータ部品の集積回路水冷液冷)とした場合の冷却液を冷却するために用いられるほか、潤滑油や作動油といったオイルを冷却する用途、過給器付きの内燃機関では圧縮されて発熱した吸入空気を冷却する用途にラジエターが用いられる。オイルを冷却する用途のものはオイルクーラー、過給された吸入空気を冷却するものはインタークーラーとして、区別して呼ばれる場合が多い(ただし、それぞれが水冷式である場合は冷却水をエンジン用と共用している場合もある)。
水冷エンジン用詳細は「ラジエター (水冷エンジン)(英語版)」を参照ブガッティ・タイプ40のハニカムコアラジエターハニカムコア

水冷エンジンにおいては冷却水の過熱を抑えるためにラジエターが用いられる。エンジンのウォータージャケット(英語版)とラジエターは管で繋がれ、エンジンの熱を奪って高温となった冷却水は対流による自然循環(サーモサイフォン(英語版))あるいはウォーターポンプ(遠心式のクーラントポンプ(英語版))による強制循環によってラジエターへ導かれる。ラジエターを通過して温度の下がった冷却水は別の管を通じてエンジンへ戻される。冷却水の温度には最適な範囲があるため、経路にサーモスタット(ワックス式温度調節弁(英語版))によって切り替えられる温度調節弁(英語版)を設け、水温が低い場合は冷却水をラジエターへ流さずにバイパス経路でシリンダーブロックへ戻される。

ラジエターはアルミニウム合金製などのフィン付きの細管を多数並べたコアと呼ばれる構造と細管の入り口と出口をまとめるタンクと呼ばれる構造からなる。タンクには給水用のキャップを持つものが多い。冷却水経路へのエア噛みを防ぐため、ラジエター上部の取入口から冷却水を導入し、ラジエター下部の排出口から冷却水を排出する経路を採るのが一般的である。また、多くの場合、ラジエターの上端にラジエターキャップを設けてエア抜きを容易にしているが、冷却水経路の設計上、ラジエターキャップのみではエアの排出が困難な場合には、冷却水経路にエア抜きを別途設けることもある。冷却液の温度上昇により蒸気圧が大気圧を超えると沸騰するが、内燃機関の冷却水経路は圧力をかけて100℃を超えても沸騰しにくい構造とされている。しかし、圧力が高くなりすぎると破損に繋がるため、ラジエターキャップにはプレッシャーバルブが組み込まれ、圧力が設定値以上になるとラジエターサブタンクに冷却液を逃がすようになっている。冷却水が加熱された状態でラジエターキャップを開くと冷却水が噴き出すのは圧力がかかっているためで、社外品のラジエターキャップの中には噴き出し防止のために圧力解放ボタンを備えたものも存在する。

自動車などに搭載される場合はコアの方向によって、「ダウンフロー(縦流れ)方式」と「クロスフロー(横流れ)方式」に分類される。従来はダウンフロー方式が主流であったが、欧米を中心にクロスフロー方式が普及している[1]。横長で、タンクを含めた外形寸法が同じ場合で比較すると、短辺にタンクが配置されるクロスフローの方がコア面積を大きく取れるため放熱性能上は有利であるが、ダウンフロー方式と比較すると水路断面積が小さくなるため通水抵抗は大きくなる[1]。古くはドーナツ状のタンクの輪の内側に、金属の薄板をハチの巣状に張ったものが普及し、後に水管式(チューブラー式)へと進化していった。水管式は、チューブごとにフィンが独立していたが、さらにフィンの表面積を稼ぐため、隣り合ったチューブの両方に接するよう、ジグザグ状のフィンを設けたコルゲート式へと代わり、この時代が長く続いた。最近ではすべてのチューブをストレートフィンで繋ぐ、プレート式が登場している。
材質

コアやタンクの材質には製のほかに、真鍮アルミニウムが用いられる。近年は自動車用を中心に、アルミニウム製のコアと樹脂製タンクを組み合わせたものが主流となっている。この構造ではコアに多数設けられたツメ状の部分をかしめてタンクの縁を固定し、間には気密水密を保つようにOリングをはさんで留められる。
コンピュータ用詳細は「CPUの冷却装置」を参照

CPUをはじめとする集積回路は、空冷式に用いられるヒートシンクの代わりに取り付けたウォーターブロックに冷却液を循環させて冷却する場合がある。このとき、集積回路から熱を奪った冷却液を冷却するために、ラジエターによって冷却液の熱を空気中に発散させる。

近年では人間を模したロボットにも応用され、内部に血液のように冷却液を循環させて隙間から蒸気を逃がし冷却するものもある。
暖房詳細は「ラジエター (暖房)(英語版)」を参照住宅や施設の居住空間用鋳鉄製スチーム暖房または温水暖房のラジエター

ラジエターは暖房装置としても用いられる場合があり、蒸気や温水の熱を利用して室内を温める。自動車などではエンジンで温められた冷却水を利用し、建物ではボイラーなどで加熱した蒸気や温水を利用する。熱源から供給される表面積を大きくとった形状で、コルゲートタイプとフィンタイプに大別される。ラジエターは熱の大半を輻射および熱伝導によって放熱する。ラジエター周辺の空気は暖められ、対流により室内の空気が循環するので、室内は暖められる。屋外の冷気を効果的に遮断するため、の直下に設置される。煙突の無い燃焼式の暖房にくらべ、室内空気の汚損が全く無い。欧米集合住宅ホテルなどでは一般的な暖房装置であるが、日本ではガス会社などが販売しているものの、あまり普及していない。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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