ラグランジアン_(場の理論)
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ラグランジアン場の理論 (Lagrangian field theory) は、古典場理論のひとつの定式化であり、ラグランジュ力学を場の理論に拡大したものである。ラグランジュ力学がそれぞれが有限の自由度を持つ離散的な粒子を扱うのに対し、ラグランジアン場の理論は自由度が無限である連続体や場に適用される。

本記事では、ラグランジアン密度を L {\displaystyle {\mathcal {L}}} と記し、ラグランジアンは L と記すこととする。

ラグランジュ力学の定式化を拡張し、場の理論を扱うことができるようになった。場の理論では、独立変数は、時空の中の事象 (x, y, z, t)、あるいはもっと一般的には多様体上の点 s へ置き換えて考える。従属変数 (q) は、時空でのその点での場の値 φ(x, y, z, t) へ置き換わり、運動方程式は、作用原理によって、 δ S δ φ i = 0 {\displaystyle {\frac {\delta {\mathcal {S}}}{\delta \varphi _{i}}}=0}

となる。ここで、「作用」 S [ φ i ] = ∫ L ( φ i ( s ) , { ∂ φ i ( s ) ∂ s α } , { s α } ) d n s {\displaystyle {\mathcal {S}}[\varphi _{i}]=\int {\mathcal {L}}\left(\varphi _{i}(s),\left\{{\frac {\partial \varphi _{i}(s)}{\partial s^{\alpha }}}\right\},\{s^{\alpha }\}\right)\,\mathrm {d} ^{n}s}

は微分可能な従属変数 φi(s)、その導関数および s 自身の汎函数である。添え字はα = 1, 2, 3,…, nであり、中カッコは{・∀α}を表す。s = { sα} は n 個の独立変数がなす集合を表し、これには時間変数も含む。筆書体の L {\displaystyle {\mathcal {L}}} は体積密度を表す場合に用い、体積は場の定義域の積分測度つまり d n s {\displaystyle \mathrm {d} ^{n}s} による。
定義

ラグランジアン場の理論では、一般座標系の函数としてのラグランジアンをラグランジアン密度へ置き換えて考える。これは、系の場とその導関数、あるいは場合により空間と時間座標も含めたものの函数である。

場の理論では、独立変数 t は、時空 (x, y, z, t) の中での事象や、より一般的には多様体上の点 s へ含めて考える。

ラグランジアン密度は、単にラグランジアンということも多い。
スカラー場

ある一つのスカラー場 φ に対し、ラグランジアン密度は L ( ϕ , ∇ ϕ , ∂ ϕ ∂ t , x , t ) {\displaystyle {\mathcal {L}}\left(\phi ,\nabla \phi ,{\frac {\partial \phi }{\partial t}},\mathbf {x} ,t\right)}

の形を取る[nb 1][1]。複数のスカラー場に対しては、 L ( ϕ 1 , ∇ ϕ 1 , ∂ ϕ 1 ∂ t , … , ϕ 2 , ∇ ϕ 2 , ∂ ϕ 2 ∂ t , … , x , t ) {\displaystyle {\mathcal {L}}\left(\phi _{1},\nabla \phi _{1},{\frac {\partial \phi _{1}}{\partial t}},\dots ,\phi _{2},\nabla \phi _{2},{\frac {\partial \phi _{2}}{\partial t}},\dots ,\mathbf {x} ,t\right)}

と表す。



ベクトル場、テンソル場、スピノル場

上記は、ベクトル場テンソル場スピノル場に一般化することができる。物理学において、フェルミ粒子はスピノル場で記述し、ボース粒子はテンソル場で記述する。
作用

ラグランジアンの時間での積分作用と呼び、S で表す。場の理論において、ラグランジアン L は時間での積分を作用 S = ∫ L d t {\displaystyle {\mathcal {S}}=\int L\mathrm {d} t}

とし、ラグランジアン密度 L {\displaystyle {\mathcal {L}}} はすべての時空に渡る積分を作用 S [ ϕ ] = ∫ L ( ϕ , ∇ ϕ , ∂ ϕ ∂ t , x , t ) d 3 x d t {\displaystyle {\mathcal {S}}[\phi ]=\int {\mathcal {L}}\left(\phi ,\nabla \phi ,{\frac {\partial \phi }{\partial t}},\mathbf {x} ,t\right)\,\mathrm {d} ^{3}\mathbf {x} \mathrm {d} t}

とする区別をすることが屡々ある。

ラグランジアン密度の空間的な体積積分はラグランジアンで、3次元では L = ∫ L d 3 x {\displaystyle L=\int {\mathcal {L}}\,d^{3}x}

である。重力がある場合や、一般曲線座標系を用いる場合には、ラグランジアン密度 L {\displaystyle {\mathcal {L}}} は g {\displaystyle {\sqrt {g}}} の因子を含み、スカラー密度(英語版)になる。この手付きにより、作用 S {\displaystyle {\mathcal {S}}} が一般的な座標変換のもとで不変になることが保証される。
数学的定式化

M を n 次元多様体をとし、T を対象多様体とする。 C {\displaystyle {\mathcal {C}}} を M から T への滑らかな函数がなす配位空間とする。

場の理論において、M は時空多様体であり、対象空間は場が任意の点で値として取ることのできる値域を示す集合である。例えば、m 個の実数値のスカラー場 φ 1 , … , φ m {\displaystyle \varphi _{1},\dots ,\varphi _{m}} があるとすると、対象多様体は、 R m {\displaystyle \mathbb {R} ^{m}} である。場が実ベクトル場であれば、対象多様体は R n {\displaystyle \mathbb {R} ^{n}} と同相である。M 上の接バンドルを使うもっと洗練された方法もあるが、ここではこの方法を使うことにする。

汎函数 S : C ⟶ R {\displaystyle {\mathcal {S}}:{\mathcal {C}}\longrightarrow \mathbb {R} }

を考える。これは作用と呼ぶ。作用は局所的であることから、作用としての要件を追加する。 φ   ∈ C {\displaystyle \varphi \ \in {\mathcal {C}}} のとき、 S [ φ ] {\displaystyle {\mathcal {S}}[\varphi ]} は、 φ {\displaystyle \varphi } 、その導関数および位置の関数であるラグランジアン L ( φ , ∂ φ , ∂ ∂ φ , … , x ) {\displaystyle {\mathcal {L}}(\varphi ,\partial \varphi ,\partial \partial \varphi ,\dots ,x)} を M の上で積分したものとする。つまり、 ∀ φ ∈ C , S [ φ ] ≡ ∫ M L ( φ ( x ) , ∂ φ ( x ) , ∂ ∂ φ ( x ) , … , x ) d n x {\displaystyle \forall \varphi \in {\mathcal {C}},\;{\mathcal {S}}[\varphi ]\equiv \int _{M}{\mathcal {L}}{\big (}\varphi (x),\partial \varphi (x),\partial \partial \varphi (x),\dots ,x{\big )}\mathrm {d} ^{n}x}


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