この項目では、北欧神話の出来事について説明しています。その他の用法については「ラグナロク (曖昧さ回避)」をご覧ください。
ウィリー・ポガニー
ラグナロク(古ノルド語:Ragnarøk(Ragnarok、ラグナレク)は、北欧神話の世界における終末の日のことである[1]。
元来の語義は「神々の(死と滅亡の)運命」であったが、『新エッダ』の作者スノッリが誤ってこの語RagnarokをRagnarokr(Ragnarokkr)と同一視したことが原因で「神々の黄昏」という誤訳が生まれ、広く流布している[2]。
本稿のカタカナ転写は「ラグナロック」など様々であるが、本稿では固有名詞や特定の人の発言の引用以外は一般的な国語辞典での記述である「ラグナロク」に統一する[3]。
『新エッダ』エミール・デープラーが描いた、オーディンとフェンリル、フレイとスルトの戦い。(1905年)Emilエミール・デープラーが描いた、トールとヨルムンガンドの戦い。(1905年)Emil エミール・デープラーが描いたヴァルハラ炎上。(1905年頃)
『新エッダ』第一部『ギュルヴィたぶらかし』第51-53章[4]によれば、ラグナロクが起こる前にまず風の冬、剣の冬、狼の冬と呼ばれるフィンブルヴェト(恐ろしい冬、大いなる冬の意)が始まる。夏は訪れず厳しい冬が3度続き、人々のモラルは崩れ去り、生き物は死に絶える。
太陽と月がフェンリルの子であるスコルとハティに飲み込まれ、星々が天から落ちる。大地と山が震え、木々は根こそぎ倒れ、山は崩れ、あらゆる命が巻き込まれ、あらゆる命が消える。ヘイムダルは、世界の終焉を告げる為に角笛ギャラルホルンを預けているミーミルの泉へ向かう。最高神オーディンはミーミルの元へ駆けつけ、助言を受ける。
この日には全ての封印、足枷と縛めは消し飛び、束縛されていたロキやフェンリル、ガルムなどがアースガルズに攻め込む。巨蛇ヨルムンガンドが大量の海水とともに陸に進む。その高潮の中にナグルファルが浮かぶ。舵をとるのは巨人フリュムである。ムスペルヘイムのスルトが炎の剣を持って進む。前後が炎に包まれた彼にムスペルの子らが馬で続く。ビフレストは彼らの進軍に耐えられず崩壊する。
神々と死せる戦士たち(エインヘリャル)の軍は皆甲冑に身を固め、巨人の軍勢と、ヴィーグリーズの野で激突する。オーディンはフェンリルに立ち向かうもののフェンリルに飲まれて死ぬ。オーディンの息子ヴィーザルが、フェンリルの下顎に足をかけ、手で上顎を押さえてその体を切り裂き、父の仇を討つ。トールはヨルムンガンドと戦い、ミョルニルで殴りつけて倒すが、毒を喰らい相打ちに終わる。テュールはガルムと戦うが相打ち。ロキとヘイムダルも相打ちに倒れる。フレイはスルトと戦い善戦するも武器を持っていなかったため打ち倒される。
スルトの放った炎が世界を焼き尽くし、九つの世界は海中に没する。闘いの後、大地は水中から蘇りバルドル、ヘズは死者の国より復活する。オーディンの子ヴィーザル、ヴァーリ、トールの子モージ、マグニ、さらにヘーニルらも生き残り、新たな時代の神となる。彼らはかつてアースガルズのあったイザヴェルで暮らす。
天にあるギムレーという、太陽より美しく黄金より見事な広間には、天地を滅亡させる炎も届かない。ここに、永遠に、善良で正しい人が住むのである。さらに、ホッドミーミルの森(en)だけが焼け残り、そこで炎から逃れたリーヴとリーヴスラシルという2人の人間が新しい世界で暮らしていくものとされている。ホッドミーミルの森とは世界樹ユグドラシルの別称であるとされる。太陽が狼に飲み込まれる前に産んでいた美しい娘が、母を継いでその軌道を巡り、新しい太陽となる。 『巫女の予言』[5]では、まず、神々の場所がおそらくは朝焼けや夕焼けによって[6]赤く染まり、太陽が暗く天候の悪い夏が続くことが語られる。女巨人エッグセール
『古エッダ』フェロー諸島で2003年に発行された、『巫女の予言』を題材にした郵便切手シリーズより。ラグナロクの始まり。アンカー・エリ・ペーターセン(英語版)による。オーディンの死、トールの戦い、スルトの炎。バルドルとヘズの復活。
『巫女の予言』