ライブスチーム
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2003年にフィンランドポルヴォーで開催されたイベントに展示中の可搬式蒸気機関

ライブスチーム (:Live Steam) とは動態保存蒸気機関車蒸気機関模型等、実際に稼動する蒸気機関の総称である。
概要嘉永6年(1853年)に田中久重らが製作した蒸気機関車雛型嘉永6年(1853年)に田中久重が製作した蒸気機関車雛型の復元模型1909年製造のメルクリン製の模型蒸気機関

日本国内では一般的に実物同様の機構を備えて蒸気を発生させて動く模型蒸気機関車を『ライブスチーム』と呼ぶ傾向があるが、広義には模型だけではなく動態保存されている実物の蒸気機関車蒸気船トラクションエンジン蒸気自動車 、蒸気ポンプ、蒸気クレーン、定置式蒸気機関、蒸気ハンマなどを総称する言葉である。古くから熱機関の教材としても使用され、技術家庭科の授業で教材として作られる事例もある。

メーカーのキット成品の価格を見ると高額であるような印象を受けるが、工業高校工業大学の学生が実習やクラブ活動の一環として製作する事例も多々あり、自分で根気よく作れば1番ゲージであれば材料費で数千円から、5インチゲージでは加工費用も含めて数10万円程度に抑えられる程で、工作機械の購入費や機械加工を請け負う中小零細企業への外注を含む場合には自作よりもメーカーの製品を購入する方が安価に収まる(100万円?200万円ほど)が、制作にかかる時間は長期に渡る為に根気が必要となる。

他の鉄道関係の趣味と比較して愛好家が少ない為、海外に比べて相場が比較的安くなり、格安の中古品が出回ることもある。(自作機も同様)
構造

実物の蒸気機関と原理的には同じ構造である。ボイラーは単純な構造のあぶり釜やボイラーの中央に煙管のあるセンターフリュー式ボイラーや蒸気機関車に使用されるボイラーを小型化したロコボイラーや瞬間湯沸かし器と同様のフラッシュボイラー等がある。

機関は実物では廃れてしまった首振りエンジンが構造が単純なため、Mamod等の製品や自作の愛好家を中心に今尚、多く使用され、他に小型の蒸気機関では吸気口と排気口の距離を離す事が困難なため、ピストンバルブ式よりもスライドバルブ式の方が使用される。しかし、ピストンバルブを備えた蒸気機関車スライドバルブで再現しようとすると、リターンクランクの位置が実物とは異なる位置になる。そのため、前後の吸気口を逆になるようにクロスポートが採用される。給水用に軸動ポンプやインジェクタ(注水器)が使用される。

燃料は人が乗るような比較的大型の機種では石炭LPGが使用され、小型の機種ではメタノールや固形アルコール燃料が使用される。

縮尺模型であっても実物同様の安全管理が求められ、水面計、圧力計、安全弁が備えられるが、水面計と圧力計は小型の場合には省略される場合がある。
歴史嘉永年間に黒船と共に伝来した蒸気車走行中の機関車加減弁、水面計が見える。

実物の蒸気機関車を小型化したもので、実際に石炭石油アルコールなどの燃料を使用した蒸気機関で稼動する。庭園鉄道で使用されることが多い。

その仕掛け上、車両は模型としては大型化せざるを得ず、一般的に軌間 (ゲージ) は32mm、45mm、89mm、127mmなどが使用されるが、小型のものでは軌間9mmや16.5mmを使用する製品も存在する[1]。また1973年には1/240スケールの蒸気機関車がオーストラリアのシドニー在住の愛好家の手によって製作された記録がある。[2][3]

製作には高度の技術力、工作設備を要し、運転する際は屋外に線路を敷設する必要がある場合が多い。しかし電動に比べ万人向けには高いハードルもライブスチームクラブのメンバーになれば個人所有の線路を拝借できるし、公共の土地にも線路を確保できる(もちろんメリットはそれだけではない)。

日本では、実物の蒸気機関車よりも早く模型の蒸気機関車が登場した。江戸時代末期の1853年ロシアエフィム・プチャーチン1854年アメリカマシュー・ペリーが江戸幕府の役人の前で模型蒸気機関車の走行を実演したのがはじまりといわれている[4][5]。その後、嘉永8年[6](1855年)、佐賀藩田中久重、中村奇輔、石黒寛二らによって外国の文献を頼りに軌間130mmの蒸気機関車蒸気船雛型 (模型) が製作された。また、同時代に長州藩の中島治平が長崎で購入したか木戸孝允がパリで購入したと伝えられるナポレオン号が山口県立山口博物館に保存されている。加賀の大野弁吉が製作した記録もある。これらの機関車は2003年国立科学博物館で開催された江戸大博覧会[7]で展示された。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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