ライフセービング
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この項目では、ボランティアの救命活動について説明しています。

給与を受け取る救命活動については「ライフガード」をご覧ください。

またスポーツとしてのライフセービングについては「ライフセービング (スポーツ)」をご覧ください。

氷上でのレスキュー訓練。カナダにて

ライフセービング(: lifesaving, life saving、救命行為)は、ヨーロッパを発祥とする救助蘇生応急処置、とくに一次救命処置のこと。海に限らず川・湖沼・プールなど水辺の事故に対する救命活動を意味することが多いが、ライフセービングとは本来、氷上山岳地における救助、洪水などの災害時の救命活動、糖尿病心臓発作高山病低体温症凍傷熱中症ショックの治療といった救急医療活動も含まれている。

ここでは日本の現状を汲み、水辺における人命救助・事故防止をボランティアで行う社会活動をライフセービングと称する。
定義
サーフ海上で救命ボートの練習を行うサーフ・ライフセーバー達。

一般的にライフセービングとは溺れかかった者を引き上げ、必要に応じて人工呼吸心臓マッサージなどの応急処置を組織的かつ合理的に行う活動、および事故回避のための様々な活動を指す。

海におけるライフセービングは特にサーフ・ライフセービング (Surf lifesaving) と呼ばれ、主にオーストラリアで発展した。海流、波や津波、潮汐高潮、危険な海洋生物など海洋に適した技術や知識が問われる。サーフ(磯浜)を省いてライフセービングと略すことも多い。サーフ・ライフセービング技術を競うことから派生したスポーツは、単にライフセービングと呼ばれる。詳しくはライフセービング (スポーツ)を参照。

ボランティアとして、ライフセービング活動を行う者をライフセーバー(Life Saver 命を救う者)、狭義ではライフセーバー資格を持つ者のみをライフセーバーと呼ぶ。サーフ・ライフセーバーは海を専門に活動する者である。ライフセーバーは、パトロール地域ごとに組織されるLC、LSC(ライフセービング・クラブ)またはSLC、SLSC(サーフ・ライフセービング・クラブ)というクラブに所属している。(例:九十九里LC

またライフセービング(スポーツ)選手、救命用具の浮き輪もライフセーバーとも呼ばれる。プロライフセーバーと言う時は、救命活動のプロではなく、ライフセービング(スポーツ)におけるプロ選手を指す。
ライフガードライフガードやライフセーバーが監視中であることを示す赤と黄色の旗。

ライフセービングを職業とする者はライフガード(命を守る者)と呼ばれる。フルタイムやパートタイムで地方公務員やスポーツ施設社員として勤務することが多い。日本では「アルバイトでライフセーバー」と言うことがあるが、アルバイトとして雇われるならば「ライフガード」である。

欧・米・豪の海岸などは普段から自治体に雇用されたライフガードがパトロールしており、シーズン中の週末や休日に本職を別に持つボランティアがライフセーバーとしてパトロールに参加するという形態をとっている。(Lifeguardと一語の時は水辺のライフガード、Life Guardの二語に分かれる時はスイスイギリス近衛騎兵ライフ・ガード連隊を意味する。)

アメリカ合衆国では19世紀末からライフガードの雇用が始まっており名称が広く普及している。そのためライフセーバーという呼称が使われることはめったになく、ライフセーバーズ・キャンディ(英語版)(名前の由来は救命浮き輪)を指すことの方が多い。また1989年から2001年にアメリカ、後に世界中で放映され、ギネスブックによると史上最も視聴者の多いとされる[1]テレビ番組『ベイウォッチ』の影響で、アメリカ英語圏外でもライフセーバーをライフガードと呼ぶ場合が増え境界線が曖昧になってきている。ただしスポーツ選手のライフセーバーをライフガードと呼ぶのはアメリカのみで、他国は現在もライフセーバーという呼称を用いる。
救助員・監視員

日本では、ライフセーバーが救助員や監視員と同一視されることが多い。しかし、救助はあくまでもライフセービング活動の一つである。ボランティア・チームの中には、救助資格の取得を目指して訓練中の者が監視や無線連絡を担当したり、車椅子に乗ったライフセーバーが警備長を務める[2]など、一概にライフセーバー = 救助員とは言えない。

泳げない者や高校生を座って見ているアルバイトとして雇うケースもある監視員[3]に対し、ライフセーバーはボランティアといえども救助や安全管理に必要な知識・技術・体力・泳力のあることが資格によって保証されている。監視員とライフセーバーの最大の違いは、ライフセーバーが監視より一歩踏み込んだ事故防止のために様々な行動を取る点(詳しくは奉仕活動としてのライフセービングを参照。)と、夏に限らず年間を通じて救助のための技術を磨き続ける点でもある。
規定色国際信号O旗。ライフセーバーのトレードマークは赤と黄色のパトロール・キャップ(上記画像で首の後ろにかかっている水泳帽)。背中にはDHLのスポンサーロゴ。

日本で販売されている飲料の「ライフガード」は、キャッチフレーズに「サバイバル」という言葉が含まれるためパッケージがカモフラージュ(緑や茶色)になっているが、ライフガードおよびライフセービングの国際規定色は赤と黄色である。

ビーチなどでは、長方形の旗を上下2つの長方形に分割して上半分が赤で、下半分が黄色の二色旗を2本使用する。ライフガード、またはライフセーバーが監視中で安心して遊泳できる区域は、この2本の二色旗の間(“Between the flags”)であると国際的に定められている。日本ではまだ完全に普及しておらず、ライフセーバーが活動する海水浴場の約半数[4]の場所で使用されている。この二色旗は海上で船舶同士が用いる国際信号旗において、「海中への転落者あり、要救助」 (Man overboard) を示す赤と黄色のO旗(オーき)に由来しており、1930年代からオーストラリアのサーフ・ライフセービング界で用いられてきた[5]。この二色はトリアージにおいても、重篤患者(赤)、早期処置の必要な患者(黄色)という救命活動の段階分けに使われている。また国際標準化機構の安全色(ISO 3864)や水辺における安全標識の色(ISO 20712)として定められているものである。日本工業規格の安全色彩(JIS Z 9101)においても赤は危険、黄色は注意をうながす意味となっている[6]

そのため、世界各国の各自治体で活動するライフセーバーのユニフォームは赤と黄色の二色であり、トレードマークの水泳帽(パトロール・キャップ)も四分割して交互に赤と黄色を入れた二色帽である。ライフガードやライフセービング(スポーツ)のユニフォームも、海を表す青や白とともに赤や黄色が採用されることが多い。

事業を世界中で展開しているドイツの運送会社のDHLは、複数の国でライフセービング団体の公式スポンサーやパートナーとなっている。例えばオーストラリアのライフセーバーのユニフォームは全てDHLの寄付で[7]ニュージーランドも4000着のユニフォームや救命器材の寄付[8]を受け取っているほか、アジア太平洋地区ライフセービング選手権大会もDHLオセアニアが協賛した。日本ライフセービング協会も2004年にDHLと5年間のパートナー契約を結び、全日本種目別選手権大会がDHLサーフ・カーニバルと改名された。DHLのロゴコーポレートカラーも赤と黄色であることから、日本および国外のライフセーバーのユニフォームや救命器材をよく見るとDHLのロゴが堂々と貼られていることがある。
ライフセービングの歴史
ヨーロッパ100年の歴史を誇るイギリスのブロンズ・メダリオン(RLSS Bronze Medallion)資格に合格した者が受け取るメダル。裏面に受賞者の名前と年月が彫られている。

17世紀から18世紀にかけて、ナポレオン戦争に始まったトリアージ、サプール・ポンピエ(en:Sapeur-pompier プロとボランティア消防士)など救命活動の歴史が長いフランス、国土の4分の1が海面下にあるオランダプールの建設ラッシュとなったイギリスといった国々では、水に対する危険防止と水難救助のためにライフセービング手法が確立しつつあった。

最初の国際ライフセービング会議は1878年マルセーユで行われた。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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