ユーロバン
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この項目では、PSA・プジョーシトロエンフィアットグループが共同開発した欧州専売のピープルキャリアについて説明しています。

フォルクスワーゲン社の商用車「トランスポルター」のアメリカ名については「フォルクスワーゲン・タイプ2#T4(1990-2003年)」をご覧ください。

ユーロバン
シトロエン・エバシオン
概要
製造国 フランス
販売期間1994年 ? 2014年
ボディ
ボディタイプ5ドアミニバン
駆動方式前輪駆動
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ユーロバン (eurovans) は、PSA・プジョーシトロエンフィアットグループが共同開発し、シトロエンプジョーフィアットランチアの各ブランドから販売されていた欧州専売のピープルキャリア(MPVミニバン)の総称である。

本項では以下の車種を一括して記述する。

シトロエン・エバシオン(Evasion)

シトロエン・C8

フィアット・ウリッセ(Ulysse)

ランチア・ゼータ(Z)

ランチア・フェドラ(Phedra)

プジョー・806

プジョー・807

初代(1994年 - 2002年)

初代ユーロバンは1994年にデビューした。当時、欧州におけるミニバン市場ではルノー・エスパスがポピュラーとなっていたが、エスパスは元々プジョーが買収したマトラが提案したアイデアであり、プジョーが製品化を却下したため、代わりにルノーに売り込まれたものであった。その経緯が関係しているためか、ユーロバンではエスパスの後追いとすることを避け、ミニバンの祖であるクライスラー・ボイジャー(ダッジ・キャラバン)を研究し、「アメリカ車のようなミニバン」を開発コンセプトとした。

スケルトンとも呼ばれるマルチチューブラーフレーム・樹脂外板のエスパスに対し、ユーロバンは一般的な鋼鈑プレス・溶接組み立てであり、利益率が重視された。また、アメリカ式のミニバンの特徴であるスライドドアを導入した。

短い全長に3列シートを配置するため、着座姿勢はアップライト気味となった。A・Bピラー間の距離も短いため、乗降性を損なわないよう、フロントドアは90°近くまで開くことができる。乗車定員は2・3・2の7人乗りで、二列目、三列目の座席は個別に取り外しができ、移動可能である。この点はエスパス同様で、欧州ミニバンの特徴となっている。

パワートレインはPSAのDセグメント乗用車プジョー・406シトロエン・エグザンティア)と共通で、横置きエンジンによる前輪駆動を採用している。エンジンは当初「PSA XU/XUDエンジン」を搭載していたが、後に「PSA EW/DWエンジン」に変わった。直4 EW10 DOHC 16バルブエンジン搭載車はオプションで4速ATが搭載され、そのほかは5速MTが搭載された。足回りはフロントがストラットとコイルスプリング、リアはトレーリングビームとコイルスプリングの組み合わせである。

なお、Dセグメント乗用車プラットフォームを流用している都合上、車両総重量としてほぼシャシ容量の限界に達しているため、より高荷重が予想される商用車仕様は設定されなかった。商用車には許容荷重の大きな専用シャシを持つ、シトロエン・ジャンピー / ディスパッチ(Jumpy)、フィアット・スクード(Scudo)、プジョー・エキスパート(Expert)が用意される。

ユーロバンの登場後、クライスラーからボイジャーのホイールベースを延長したロングモデルの「グランドボイジャー」が登場し、ルノー・エスパスにも同様の構成を持つ「グランエスパス」が加わったが、ユーロバンにはロングモデルは追加されなかった。

1998年10月にマイナーチェンジを実施した。主な変更点は、

シフトレバーをフロアからダッシュボードへ移設

パーキングブレーキレバーをフロアセンターから運転席とドアの間に移設(左ハンドル)

センターコンソールを廃止し、フロントシートの間を空ける

など、比較的大掛かりなものとなったが、これらの変更は、前席の前後左右のウオークスルーを実現するためには、一つとして外せないものばかりであった。この改良は市場に好評を持って迎えられ、インパネシフトは欧州の実用車ではひとつのスタンダードとなった。

エンジン排気量パワートルク備考
直4 XU10 2C SOHC 8バルブ2.0 L (1998 cc/121 in3)121 PS (119 hp/89 kW)170 N・m (125 ft・lbf)2000年に廃止。ランチア・ゼータには搭載されなかった。
直4 XU10 J2TE SOHC 8バルブ ターボ2.0 L (1998 cc/121 in3)147 PS (145 hp/108 kW)235 N・m (173 ft・lbf)2000年に廃止された。
直4 EW10 DOHC 16バルブ2.0 L (1998 cc/121 in3)132 PS (130 hp/97 kW)180 N・m (133 ft・lbf)このエンジンの搭載車はオプションでATが装備できる。2000年7月から導入された。
直4 XUD9 SOHC 8バルブ ディーゼルターボ1.9 L (1905 cc/116 in3)90 PS (89 hp/66 kW)196 N・m (145 ft・lbf)2000年に廃止。ランチア・ゼータには搭載されなかった。
直4 XUD11 12バルブ SOHC ディーゼルターボ2.1 L (2088 cc/127 in3)109 PS (108 hp/80 kW)250 N・m (184 ft・lbf)2000年に廃止。
直4 DW10 SOHC 8バルブ コモンレール式ディーゼルターボ2.0 L (1997 cc/121 in3)109 PS (108 hp/80 kW)250 N・m (184 ft・lbf)2000年1月に導入された。

車名

シトロエン・エバシオン(Evasion)
イギリスアイルランドでは「シナジー」(Synagie)として販売された。英語圏での「Evasion」が「脱税」「言い逃れ」などのマイナスな意味合いであることから、これを避けたことが理由である。フランス語では「Escape」(エスケープ)の意味に近い。


フィアット・ウリッセ(Ulysse)「ウリッセ」は、ギリシャの詩人ホメーロス叙事詩オデュッセイア』(ホンダ・オデッセイの由来)の主人公であるオデュッセウスのイタリア語読みに由来する。


ランチア・ゼータ(Z)ランチアは伝統的にギリシャ文字の読みを車名に使っており、未使用であった「Ζ」の読みをユーロバンの名にあてた。ミニバンかつファミリーカーであるユーロバンのなかで、ゼータのウッドパネルやアルカンターラをふんだんにあしらった内装は、名門ランチアの名に恥じないものであり、その価格も他のユーロバンに比べ、最大で20%ほど高い設定の「プレミアムモデル」であった。


プジョー・806100の位にモデルのシリーズ名を付し、10の位に0を挟み、1の位は世代を表すプジョーの命名法則に従って「806」と命名された。それまでのプジョーにおける数字の最も大きな車名は、Eセグメントのプレミアムセダンである605であったが、多人数乗車が可能なユーロバンにはさらに大きな数字として800番台が与えられることになった。発表当時、下一桁は「6」の世代に切り替わりつつあったことから「806」となった。


シトロエン・エバシオンのサイドビュー
90°近く開くフロントドアが共通の特徴

プジョー・806

1994年式 フィアット・ウリッセ

ランチア・ゼータ

2代目(2002年 - 2010年)


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