ユーカリ
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ユーカリ属
ユーカリ(Eucalyptus globulus)
分類APG IV

:植物界 Plantae
階級なし:被子植物 Angiosperms
階級なし:真正双子葉類 eudicots
階級なし:コア真正双子葉類 core eudicots
階級なし:バラ上群 superrosids
階級なし:バラ類 rosids
階級なし:rosid II / Malvidae
:フトモモ目 Myrtales
:フトモモ科 Myrtaceae
:ユーカリ属 Eucalyptus

学名
Eucalyptus L'Her. [1]
タイプ種
Eucalyptus obliqua [1]



本文参照

自生地

ユーカリ(有加利[2])はフトモモ科ユーカリ属(Eucalyptus)の樹木の総称。常緑高木となるものが多い。2020年の時点では900種近くの種類が存在すると推定されている[3]

和名のユーカリは、属名の英語読み「ユーカリプタス」を短縮したもの。学名の語源は eu-(真に・強く・良く)+ kalyptos(…で覆った)、つまり「良い蓋」を意味するギリシア語ラテン語化したもの。のがくと花弁が合着して蓋状となること、あるいは乾燥地でもよく育って大地を緑で被うことに由来して命名されたとされる。漢語では「?樹」と書く。

なお、Corymbia、Angophora 等の近縁の数属もユーカリと共に扱われることがある[3]

多くがオーストラリアに分布するが、世界各地で移植・栽培されている(参照: 利用)。コアラの食物としてもよく知られている(参照: #コアラの食料)。
特徴と分布カメレレの木の根本。

2000年までの段階では400 - 500が知られており、そのほとんどがタスマニア州含めオーストラリア全域に分布するものとされたが、すぐ北のニューギニアマレー群島区系に生育するものもわずかながら存在し、カメレレ(Eucalyptus deglupta)のようにむしろオーストラリアでは一切自然分布が確認されていない種も存在する[4]。成長がとても早く、材木として注目される。70メートルを超える高さになるものから、5メートル程で枝分かれする種類もある。

オーストラリアという隔離された地域において著しい数の種(しゅ)に分化しているが、としては非常にまとまっており、次のような共通した特徴を持つ[4]

樹皮は長い紐状に剥がれ、滑らかな木肌のものが多い[5]

葉は幼木の時は幅が広く、しばしば無柄で対生であるが、成木になると細長い披針形になることが多く、有柄かつ互生に変化する[5]。表面も裏面も青灰色で、精油分を含んでいるため透かすと油点の散在が見られ、揉むと芳香がする。

花の(つぼみ)は萼筒が倒円錐形か形であり、萼片と花弁の合着した蓋(: operculum)が存在するが、この蓋は開花の際に脱落する。雄蕊(おしべ)は多数存在する。

果実は刮ハで多数の小さな種子が含まれる。

ユーカリは、を非常に深くまで伸ばし地下水を吸い上げる力が強いので、成長が早い。インド北部のパンジャーブ地方の砂漠化した地域の緑化に使われて、成功した。旱魃(かんばつ)に苦しんでいた地方が5年程で甦った例がある(参照:杉山龍丸)。また東南アジアでは熱帯林を伐採した跡の緑化樹として用いられている。

オーストラリアでは自然発火による山火事が多いが、ユーカリがその一因である。ユーカリの葉はテルペンを放出するが、気温が高いとその量が多くなるので、夏期にはユーカリ林のテルペン濃度はかなり上昇する。テルペンは引火性であるため、何かの原因で発火した場合、燃え広がり山火事になるのである[6]。樹皮が非常に燃えやすく、火がつくと幹から剥がれ落ちるので、幹の内側は燃えずに守られる[7]。根に栄養をたくわえており、火事の後も成長し続けることができ、新しい芽をつけることもできる[7]

樹幹上にキノ(英語版)と呼ばれる赤褐色の樹脂状物質を出すことが多い[4]

オーストラリアに見られるユーカリ類の林は、雨量気温の観点から次の3つの型に分けることが可能である[4]
湿潤ユーカリ林 …… 南東部および南西端部の年間雨量750-1000ミリメートルの地域に発達し、密生した高木性のユーカリ林を形成する。この型の林では樹高が数10メートルにまで及ぶ種も多く、特にセイタカユーカリ(Eucalyptus regnans)は広葉樹としては世界最高の樹高97メートル、直径7.5メートルのものが記録されている。

乾燥ユーカリ林 …… 年間雨量500-750ミリメートル(南部)あるいは750-1500ミリメートルの地域に成立し、高木のユーカリ類を主体とするまばらな林(疎林)を形成する。

マリ(mallee)…… 南部の年間雨量250-500ミリメートルの範囲に成立し、低木のユーカリ類がやや散生的に生育する叢林(そうりん)を形成する。

発芽方法

オーストラリアの気候は乾燥しており、山火事が頻繁に起こる。ユーカリの種は、山火事を経験した後の降雨により発芽すると言われている。人工的にこの条件を満たすには、フライパンで種をさっと煎ったり、熱湯をかけたり、用土を燻煙処理したりする。ただし特別な処理を行なわなくても発芽する種類がほとんどである。
歴史Eucalyptus obliqua のホロタイプ(正基準標本)。この標本が今日知られている全てのユーカリ属の種の基準となっている。

ユーカリがヨーロッパ人に知られたのは16世紀前半に東ティモールポルトガルの植民地とされた頃と考えられる[3]。東ティモールに分布しているユーカリは少なくともポプラガム(Eucalyptus alba)とウロフィラユーカリ(Eucalyptus urophylla)の2種であるが、フランスのシャルル・ルイ・レリティエ・ド・ブリュテルが史上初めてユーカリ属の種として新種記載したのはオーストラリア南東部の湿潤地域産のメスメート・ストリンギーバルクこと Eucalyptus obliqua で、記載に用いられた標本ジェームズ・クックの3度目の航海(1777年)に同行したデイヴィッド・ネルソンが現タスマニア州ブルニー島アドベンチャー湾で採取したものである[3][注 1]
英名アイアンバークの例、Eucalyptus siderophloia(シドニー王立植物園にて)ストリンギーバークの例、メスメート・ストリンギーバルク(メルボルン郊外ブラックバーン・レイク(英語版)にて)

ユーカリ属はオーストラリアに様々な種が分布するという関係上、その公用語である英語の呼称がついた種がいくつも見られるが、複数の種に特定の共通した呼称が使用されている例も見られる。こうした呼称からはある程度その種の特徴を窺い知ることが可能である。数例を以下に挙げることとする。

ironbark (tree) アイアンバーク …… iron〈〉 + bark〈樹皮〉で、樹皮が簡単には剥離しない(難剥性)ものを指す[8](例: Eucalyptus siderophloia、アカゴムノキ (red) ironbark こと Eucalyptus sideroxylon)。

mallee マリ …… 複数の茎が単一の木質塊茎(英語版)から生えるタイプを指す[9](例: ミドリユーカリ green mallee こと Eucalyptus viridis)


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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