ユビキチンリガーゼ
E3ユビキチンリガーゼCbl (青) とE2 (シアン)、基質ペプチド (緑) の複合体。PDB 4a4c
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ユビキチンリガーゼ
識別子
略号Ubiquitin ligase
OPM superfamily471
OPM protein4v6p
Membranome ⇒240
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ユビキチンリガーゼ (ubiquitin ligase) またはE3ユビキチンリガーゼは、ユビキチンが結合したE2ユビキチン結合酵素を呼び寄せ、タンパク質の基質を認識し、E2から基質へのユビキチンの転移を助ける、もしくは直接的に触媒するタンパク質である。ユビキチンは標的タンパク質のリジン残基にイソペプチド結合(英語版)によって付加される[2]。E3リガーゼは標的タンパク質とE2酵素の双方と相互作用し、それによってE2酵素へ基質特異性が付与される。一般的にE3リガーゼは、48番のリジン残基を介して連結されたユビキチンの鎖を基質に付加してポリユビキチン化し、プロテアソームによる破壊の標的にする。しかしながら、他の多くのタイプの連結も可能であり、それによってタンパク質の活性、相互作用、または局在が変化する。E3リガーゼによるユビキチン化は、細胞の移動、DNA修復、シグナル伝達など多様な活動を調節しており、細胞生物学において極めて重要である。また、E3リガーゼは細胞周期の制御においても主要な因子であり、サイクリンやサイクリン依存性キナーゼ阻害因子の分解に関与する[3]。ヒトゲノムには600種類以上のE3リガーゼがコードされていると推定されており、とてつもない基質多様性が可能となっている。 酵素学において、ユビキチン-タンパク質リガーゼ (ubiquitin-protein ligase, EC 6.3.2.19
概説
この酵素の基質は、ATP、ユビキチン、タンパク質のリジン残基の3つであり、反応産物は、AMP、二リン酸、タンパク質のN-ユビキチルリジン残基の3つである。典型的なユビキチン化反応は、標的タンパク質のリジン残基とユビキチンC末端の76番のグリシンとの間にイソペプチド結合を作り出す[4]。
この酵素はリガーゼのファミリーに属し、酸-D-アミノ酸リガーゼ (ペプチドシンターゼ) として炭素-窒素結合を特異的に形成する。このクラスの酵素の系統名はユビキチン:タンパク質-リジン N-リガーゼ (AMP形成) (ubiquitin:protein-lysine N-ligase (AMP-forming)) である。この酵素はユビキチンを介したタンパク質分解に関与し、パーキンソン病、ハンチントン病とも関係している[5][6]。
ユビキチン化システムユビキチン化システムの模式図。
ユビキチンリガーゼはE3とも呼ばれ、E1ユビキチン活性化酵素とE2ユビキチン結合酵素と共に働く。E1には1つの主要な酵素が存在し、全てのユビキチンリガーゼに共有される。E1酵素は、ATPを利用してユビキチンを活性化して結合し、それをE2酵素へ転移する。E2酵素はそれぞれ特異的なE3のパートナーと相互作用し、ユビキチンを標的タンパク質へ転移する。一般的には、特定のタンパク質基質へのユビキチン化反応標的化を担っているのはE3である。E3は複数のタンパク質からなる複合体であることもある。
ユビキチン化反応は、E3ユビキチンリガーゼの作用機序に依存して、3段階または4段階で進行する。保存された最初の段階では、ATPによって活性化されたユビキチンのC末端のグリシンをE1のシステイン残基が攻撃し、Ub-S-E1チオエステル複合体が形成される。ATPの加水分解によるエネルギーがこの反応性チオエステルの形成を駆動し、続く段階は熱力学的に中立である。次に、チオール転移反応 (transthiolation) が起こり、E2のシステイン残基が攻撃を行ってE1に取って代わる。HECTドメイン(英語版)型のE3リガーゼでは、ユビキチン分子はE3に転移し、その後基質へ転移される。一方、より一般的なRINGフィンガードメイン(英語版)型のリガーゼでは、ユビキチンはE2から基質へ直接的に転移される[7]。