ヤマビル
ヤマビル
分類
ヤマビル(ヤマヒル、山蛭、学名:Haemadipsa zeylanica japonica)は、顎ヒル目ヒルド科の陸生ヒルの一種。山野で、ヒトを含む大型哺乳類に付着して吸血するため、衛生害虫として扱われる。 ヤマビルは陸に棲むヒルで、吸血性のヒル類としては日本本土では唯一の陸生ヒルである。日本以外では複数の種がある場合もある。なお、より厳密を求めてニホンヤマビルとの和名も提唱されているが、普通はヤマビルと呼ばれることが多く、この項でも以降はそう記す。 山奥の森林に生息するもので、特に湿潤な場所に多いというのが一つの定見であり、深い森と結びつけて恐怖をもって語られることもある。たとえば小説『高野聖』には、「恐ろしい山蛭」が木の上から落ちてくるシーンが描かれている。もともと山奥に生息してシカやイノシシなどの血を吸っていたが、これらの動物が里山に出てくるようになったことで生息地を広げたとされる[1]。 気づかれないうちに血を吸われ、その傷口が吸血性昆虫のそれより大きいこと、本体にぬめりがあることなどから嫌悪感が強く、「人間が最も不快と感じる動物の一つ」との声もある[2]。しかしそれ以上の被害、たとえば寄生虫や病原体の伝搬などは知られていない。 湿度の高い環境で活発になる[3]。乾燥に弱い[4]。 日本では岩手・秋田県以南の本州から四国、九州に分布する。また周辺島嶼では佐渡島、金華山、淡路島、それに屋久島が知られる。ただし神奈川県の調査報告によると、四国は分布域とされているが、確実な情報がないという。国外では中国の雲南省も生息域として知られる。原名亜種は熱帯域に広く分布するものである。琉球列島でも石垣島、西表島に多く、これはサキシマヤマビル H. zeylanica rjukjuana とされる。また他に東京都(火山列島)硫黄島にイオウジマヤマビル H. zeylanica ivosimae が知られる。ただし、これらの分類については異説もあり、日本の変種を独立種とする説もある。 体長は25-35 mmで伸び縮みが激しく、倍くらいまで伸びる。神奈川県の報告書によると、弾力に富み、且つ丈夫で、引っ張ってもちぎれず、踏んでもつぶれないと表現されるほどである[5]。 体は中央後方で幅広く、前後に細まるが、おおよそ円柱形で多少とも腹背に扁平。おおよそ茶褐色で栗色の縦線模様がある。背面の表面には小さなこぶ状の突起が多い。体は細かい体環に分かれているが、実際の体節はその数個分である。第二節から五節までと八節目の背面に丸く突き出た眼が一対ずつある。後方側面に耳状の突起がある。吸盤は前端と後端にあり、後端のそれがずっと大きい。口の中の顎には細かな歯がある。肛門は後方の吸盤の背面にある[6]。 晴天時には地上の落葉の下などに潜伏してじっとしているが、大型動物が接近すると表に出て、あるいは草に登って体を長く伸ばして直立し、その先端をあちこち振り回すように動かす。動物の接近は吸盤の周囲にある器官で二酸化炭素や熱(体温)などによって感知するものとされる[1]。シャクトリムシのように移動するヤマビル 動物に触れるとすぐにとりつき、前後の吸盤でシャクトリムシのように移動し、皮膚の柔らかいところにとりついて吸血を始める。一般には、シカやイノシシが主な宿主とされている。他にツキノワグマ、ノウサギ、タヌキ、ニホンカモシカ、ニホンザルなども吸血されることが確認されており、ヤマドリやキジが吸血対象となった例も確認されている。 人間であれば、その衣服の中に入り込んで吸血することもある。靴下など、目が粗ければ頭をその隙間から突っ込んで吸血する例もある。キャラバンシューズにとりついたものが靴下に潜り込むまで30秒という測定もある[7]。雨の時には活動はさらに活発になり、樹上に登って枝葉の先からぶら下がり、動物のより高いところにもくっついてくる。ビニール製カッパは張り付きやすいため、足下から首まではい上がるのに1分程度とのこと[8]。 吸血の際は、まず先端側の吸盤にある口の中の顎によって皮膚を食い破り、血液凝固を阻害するヒルジンという成分を注入する。約1時間で満腹になるまで吸血するが、その間に水分を排出し、その成分を濃縮する。吸われている側は吸血されていることに気づきにくい[1]。
概要
分布および分類
特徴
習性収縮した状態
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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