ヤマドリ
亜種ヤマドリ(キタヤマドリ)
S. s. scintillans
保全状況評価[1]
NEAR THREATENED
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
ヤマドリ(山鳥[2]、山雉、H、?、?雉[3]、Syrmaticus soemmerringii)は、鳥綱キジ目キジ科ヤマドリ属に分類される鳥類。日本の固有種。名前は有名だが、野外で出会うのは少し困難な鳥でもある[4]。
形態雌(左)と雄(右)
雄は全長約125cm[5]、翼長20.5-23.5cm[6]。雌は全長約55cm[2][6][7](52.5cm[8]) 、翼長19.2-21.9cm[9]。体重は雄0.9-1.7kg (0.943-1.348kg[10]) 、雌0.7-1kg[6] (0.745-1.000kg[10]) 。尾は雄のほうがかなり長く、尾長は雄が41.5-95.2cm、雌が16.4-20.5 cm[9]。尾羽の数は18-20枚[6](16-20枚[10])。雄の羽色は極彩色のキジと異なり、金属光沢のある赤褐色を呈する。およそ頭部の色が濃く、胴体から脚にかけて薄くなる傾向があるが、その程度は亜種により異なる。よく目立つ鱗状の斑紋がある。目立つ冠羽はないが、興奮すると頭頂の羽毛が逆立ち冠状に見えることもある。顔面にキジ同様赤い皮膚の裸出部がある。雄の尾は相対的にキジよりも長く、黒、白、褐色の鮮やかな模様がある。雄は脚に蹴爪を持つ。雌の羽色は褐色でキジの雌に似るが、キジの雌より相対的に尾が短い[9]。 和名の「ヤマドリ」は山地に生息することに由来する[2]。主に標高1500メートル以下の山地の森林や藪地(灌木叢林)などに生息し[10]、渓流の周辺にあるスギやヒノキからなる針葉樹林や下生えがシダ植物で繁茂した環境を好む[7]。冬季には群れを形成する[7][5]。 食性は植物食傾向の強い雑食で[11]、植物の葉、花、果実、種子、昆虫、クモ、甲殻類、陸棲の巻貝、ミミズなどを食べる[7][5][6]。 鳴くことはまれだが、繁殖期
生態
木の根元などに窪みを掘り、木の葉や枯れ草、羽毛を敷いた直径20cm、深さ9cmに達する巣に、4月から6月にかけて6-12個(7-13個[9])の卵を産む[7][6]。卵は長径4.8cm (4.4-5.15cm[9]) 、短径3.5cm (3.3-3.65 cm[9]) で、殻は淡黄褐色[6]。雌のみが抱卵し、抱卵期間は24-25日[5]。
婚姻形態は一夫多妻であると推定されていたが、実際は一夫一妻であることが三重県津市の獣医師によって突き止められた[13]。
丸猶丸ほか (1968) によれば、48個体の飼育環境下での産卵数は5-40個、産卵期間は10-97日と個体差が大きかったとしている[14]。また、繁殖適齢期は3-4歳。雌雛の発生は雄雛よりも多いと報告されている[14]。 日本の固有種であり、本州、四国、九州に生息する[2][5][6][7]。生息する地域によって羽の色が若干異なり、後述の5亜種に分けられている。 羽色は温度や湿度によって決定し(寒冷地の個体は羽色が薄く暖地の個体は羽色が濃くなる)、同地域でも南北で変異が生じるとする報告例もある[6]。一方で尾羽の形態や腰の白色斑は遺伝的要因が影響していると考えられている[6]。なお、これらの亜種の分布域は明瞭でないため、検討が必要とされている[15]。
分布と亜種
ヤマドリ(山鳥) S. s. scintillans (Gould
別名キタヤマドリ(北山鳥)。本州(北緯35度20分以北および島根県北部、兵庫県北部より北)に分布する[15]。細く短い尾羽を持ち、全身の羽色は淡色[6]。腰の羽毛は羽縁が白く、肩羽や翼の羽縁も白い[6]。基亜種アカヤマドリに対して色彩が異なることから、1866年にアメリカのグールドにより別種として記された[4]。ウスアカヤマドリの雄
(Syrmaticus soemmerringii subrufus)
ウスアカヤマドリ(薄赤山鳥[2]) S. s. subrufus (Kuroda, 1919)