ヤズィード派
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英語版ウィキソースに本記事に関連した原文があります。Mishefa Re?

英語版ウィキソースに本記事に関連した原文があります。Kiteba Cilwe
ヤジディ教のシンボルマーク。ミスラ信仰で、太陽を神の象徴としている 山岳部のヤジディ教信者、イラクとシリアの国境にて、1920年代 ヤジディ教信者の男性

ヤズィーディー(Yazidi、ヤジーディー、ヤズィード、ヤジディ、クルド語: Ezditi, eziditi)は、中東イラク北部などに住むクルド人の一部において信じられている民族宗教日本語ではヤジディ教、ヤズディ教とも書かれる。ヤズディの方が、本来の発音に近い[1]。ヤジド教、ヤジド派ともいう。
目次

1 概要

2 歴史

3 他宗教との対立、迫害

4 脚注

5 参考文献

6 関連項目

概要

ヤズィーディー教徒の教義は基本的に口承による。創世記にあたる『ミスヘファ・レシ(英語版)』 (Mishefa Re?) や黙示録にあたる『キテバ・ジルウェ(英語版)』 (Kiteba Cilwe) の2つの聖典を持つが、これらは20世紀はじめに作られたものと考えられている[2]ミスラ信仰等のイスラーム化する以前の諸宗教の系譜を引く、クルド人の宗教と言われるが、元来山岳部が信仰の中心ということもあり、未だ明らかにされていない部分も多い。イラクだけでなく、周辺のシリアロシアアルメニア等にも見られる。イラクの中では、ニーナワー県のシンジャール地方に最も多くのヤズィーディーの信者が住む[1]。創始者の聖廟のあるイラク北部のラーリーシュ(英語版)を聖地とし、信者には地球の中心だと考えられており、神殿の地下にあるザムザムの泉で洗礼を受ける[3]
歴史

ヤズィーディーは一神教であり、ゾロアスター教メソポタミアの伝統儀式が入り混じるほか、キリスト教ユダヤ教スーフィーイスラム教などの影響を受けており、七大天使、就中、孔雀天使マラク・ターウースを信じ、太陽に祈りを捧げる[4]。一説にはミトラ教古代ペルシャの宗教の影響もあるとされ、様々な宗教の影響を受けたシンクレティズムと呼ばれるものの一つであり、12世紀スーフィーの指導者アディー・イブン・ムサーフィル(英語版)が作ったイスラム教とゾロアスター教の要素を合わせたコミュニティから、今の形になったという説がある[5]。ヤズィーディーの伝承によれば、スルターン・エズィードと呼ばれる人物により創始され、アディー・イブン・ムサーフィルによって改革されて成立したと考えられている。このエズィードは、ウマイヤ朝二代目カリフヤズィード1世との見解もある(この説はヤズィーディーからは否定されている)[6]

ヤズィーディーは、信者への改宗を禁じるのと同時に、ヤズィーディーから生まれた者しかヤズィーディーになれないという考えがあるため、他宗教の信者がヤズィーディーに入信することも拒む。周辺のイスラム教徒やキリスト教徒と結婚することも禁じられている。布教活動も行われていない[1]新年1月ではなく4月に始まり、元日にあたる日(紅の水曜日と呼ばれる)には参りを行う[1]。信仰や教義は、地域によって違うものが複数伝わっている[1]

歴史的に見ればスーフィズムの影響から始まったように見られるが、輪廻転生を教義に持ち、イスラムの教義体系からは逸脱が目立つ。バラモン教にも見られるようなカースト的な階級制度を持つ(主要なカーストは三つある[7])。ほかにも、天使マラク・ターウースの伝えられる描写は、ムスリムからすると悪魔シャイターンに重なる部分も多い[5]。そのため、ムスリム(イスラム教徒)から邪教扱いを受けることがあるとされる。イスラーム過激派は、キリスト教徒より、「邪教」であるヤズィーディーの信者に激しい憎悪を向けるとされる[1]。過激派組織の1つISILは、ヤズィーディーは多神教であるとし、ジズヤやイスラーム改宗の対象外とするなど、いわゆる啓典の民であるキリスト教徒やイスラム教徒とはその扱いを差別化した。

クルディスタン地域の議会には、少数ながらヤズィーディーの議員枠の割り当てがある[1]


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